目次
ラストバイクは二本サスのネイキッドに乗りたい!
世は久しぶりのバイクブームだという。コロナ禍という状況や、芸能人による旧車ムーブメントの発信などがファクターとなっているようだが、長らくバイク業界に若い人が不在だったことを考えれば、実に喜ばしいことだと思う。
コンビニなどのパーキングで、“マッハ”や“ケッチ”に乗った若者を見かけることが実に多くなった。旧式のイグニッションスイッチを回し、点灯おぼつかないテールランプのバイクに颯爽と跨がる様に、カビの生えていた僕のバイク魂にも火が付いてしまった。
今から10数年前、ハーレーダビッドソンのV-RODマッスルを最後に、長らくバイクから遠ざかっていた。ベスパやCT125・ハンターカブとかゲタ車には乗っていたが、本格的なバイクは視力低下を理由に避けていたのである。哀しいことだが、誰にでも老いは平等にやってくるし、中でも視力の低下は如実だ。老眼だけでなく、光の感知が低下し、動体視力がどんどん落ちていく。バイクはスピードの乗り物だから、動体視力は特に重要だ。コーナーリングでは視力によって、反応速度がまるで異なってくる。
ネイキッド好きだが、ネオレトロやカフェ系ではなく……
世の中には高齢者になってもバイクに乗っている人はゴマンといるが、個人的にはやはりバイクは気持ち良くてナンボだと思っている。乗せられるのではなく乗る。これができるのも、せいぜい還暦までだろうと思っている。残された数年間を、気持ち良く安全にバイクに乗りたい。そんな想いから、今生最後のバイクライフを始めることにした。
とは言え、バイクの世界から10年以上も離れていた身。まず、どんなバイクに乗るかが問題だ。V-RODマッスルで得た教訓は、「自分にはアメリカンバイクは合わない」ということだ。アメリカンはアメリカンの楽しさがあると思うが、僕が求めているものはそこになかった。
次に、イマドキのショートテールのデザインが性に合わない。これまで20数台のバイク歴の中で、スピードトリプルのようなストリートファイターも何台かあり、そういったバイクは尻が短いデザインだった。しかし、50歳も半ばすぎになるとどこか気恥ずかしさもあるし、何よりも自分の体格に合わない気がしてしまう。タイトなライディングポジションも、老骨の身には堪える。
様々な観点から検討すると、やはりオーセンティックなネイキッドがいいという結論に達した。しかしネイキッドと言っても、昨今のリッタークラスではそれほど選択肢がない。ホンダの新世代CBと呼ばれるCB1000RやヤマハXSRシリーズのデザインは今ドキすぎるし、カワサキZ900RSやスズキカタナといった往年の雰囲気もいいけれど……。何年か前の東京モーターショーでZ900RSが登場した時も、「なぜモノサス!?」と、思わず会場でカワサキの開発陣にぶつけてしまったくらいだし、現行型のスズキ・カタナが出た時もそうだ。もちろん、モノサスの方が路面追従性などに優れていることは分かるが、やはり2本サスのデザインは私にとってはマストある。特にネイキッド系は、テールがしっかりと長く、ツインサスが後輪の脇にあるから、デザインのバランスが取れているのではないだろうか。
高齢になってくると、安全装備も非常に気になる。いまの愛車のCT125・ハンターカブにもABSが付いているが、これに救われたことが何度かあった。大きなバイクはそれだけリスクも高まるので、安全面の充実はやはり見逃せない。最近のバイクは10数年前と違い、様々な先進技術が投入されている。トラクションコントロールもそのひとつだ。かつてはキャブレターが当たり前だったバイクの燃料供給も、いまや電子制御のインジェクションがスタンダード。さらに、クルマよろしくスロットルバイワイヤまで装備する。僕のバイク界での浦島太郎ぶりは、こうした技術の認識で如実に顕れる。
かつてヤマハRZ250Rに乗っていたこともあって、当時のデザインを彷彿させる新型「XSR900」にもかなり惹かれたが、オヤジはタイトな姿勢を長時間維持できない。あの程度の前傾ポジションでも、腰が痛くなるのは目に見えている。散々悩んだ挙げ句、愛車は「CB1300スーパーフォア」にすることにした。
結論、私にとって2本サスはマストでした!
このバイクにしたのは、僕らの世代がCBに対して特別な思い入れがあることも要因になっている。我々が10代の頃の大ヒット漫画に「バリバリ伝説」があり、主人公・巨摩郡の愛車はCB750FBだった。このことから、作中に登場するCB750FやGSX750Sカタナは当時の高校生には特別なモデルだった。
さらに、昭和40年代生まれにとってのCBは、「ワイルド7」や「ナナハンライダー」といった漫画の中で主人公が乗るスペシャルなバイクであり、VTやNS250R、RG250Γといった画期的なニューカマーが続々と登場しても、王者はやはりCBだったのである。
“CBはあがりのバイク”という印象があったが、まさに人生最後のバイクなので、一度はCBというモデルに跨がってみることにした。それにCB1300シリーズのインプレを手当たり次第見てみると、非常に素直だという感想が多い。10年もバイクから離れていた身にはありがたいし、体力のなさもカバーしてくれそうだった。加えて、2021年モデルからトルクコントロールやクルーズコントロールも装備されたことも、プラス要素になった。
ただし残念ながら、2021年モデルはまだ中古車市場に出回っていないため、高額ながらローンを組んで新車購入をすることに。リセールバリューはそれほど悪くないので、大切に乗れば数年経っても悪くない価格で売れるのでは…とタカをくくっている。ちなみに、周知の通り、バイクの生産はコロナ禍や半導体不足の影響で大幅に遅れており、11月に発注したCB1300SFもいつ納車されるか分からない。ただ、寒い間は乗る気も起きないので、のんびりと待つことにした。その間に、バイク用品でも選んでおこうと思ったのだが、これがまた10年の間にすっかり様変わりしており、大変なことになっていた。その顛末は、また次回に。