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ホンダ クロスカブ110……363,000円(くまモンバージョン:374,000円)
ホイール径が大きいような、軽二輪クラスを彷彿させるハンドリング
2022年4月14日に発売された新しいスーパーカブ110とクロスカブ110。プレスリリースの販売計画台数(国内・年間)を見てみると、スーパーカブ110の7,000台に対し、クロスカブ110はくまモンバージョンを含めて9,000台となっている。ちなみに今春話題をさらった原付二種モデル、ダックス125は8,000台なので、クロスカブ110に対するホンダの期待値の高さがこの数字からも伝わってくるだろう。
さて、幸いなことに、筆者は新型のスーパーカブ110とクロスカブ110を同日に試乗することができた。2台のライポジの違いは明らかで、46mm高いシート高と90mm広い全幅(≒ハンドル幅)により、乗車時の印象はクロスカブの方が一回り大きく感じられる。なお、車重についてはスーパーカブの方が6kg軽いが、取り回しで伝わる重量感は同等レベルであり、ハンドルグリップが高い位置にあるクロスカブの方がむしろ押し引きがしやすいとすら思えた。
この2台の足回りに関する主な違いは、クロスカブ110の方がサスストロークが長く(具体的な数値は未発表。ちなみに初代はスーパーカブ110プロと同様のストローク量を確保と記載されていた)、ホイールベースが25mm長く、フロントタイヤが1サイズ太いというもの。逆に言うとたったこの程度の違いなのだが、まるで別ジャンルのバイクかと思うほどにハンドリングのキャラクターが異なるのだ。
具体的には、クロスカブは17インチのフロントホイールが18インチぐらいになったかのような、大らかな舵角の付き方となっており、軽い入力でスイッとクイックに向きを変えるスーパーカブとは対照的だ。しかも、サスストロークが長いことで車体のピッチングが分かりやすく、グリップ力の高い標準装着タイヤ(IRC・GP-5)と相まって、コーナーの進入から2次旋回に至るまで、まるで軽二輪クラスのような安定性と安心感がある。
ワイヤースポークホイールの先代同士では、ここまでハンドリングの違いを感じなかったと記憶しており、キャストホイールの剛性その他がクロスカブ110のキャラクターやコンセプトにピタリとハマったようだ。なお、ディスク化されたフロントブレーキも大正解。キャリパーはスーパーカブのシングルピストンに対して2ピストンが採用されており、パッドがディスクに触れてからのタッチがカッチリとしている。さらに、フロントのみとはいえABSがあるという安心感も大きい。
ショート設定の2次減速比は上り基調のワインディングで差が明瞭に
エンジンについてはスーパーカブ110と同様に、ボア×ストロークを従来のφ50.0×55.6mmからφ47.0×63.1mmに変更した新設計の空冷SOHC2バルブ単気筒を搭載している。最高出力や最大トルク、4段ミッションの各変速比は2台とも同一だが、2次減速比のみ、具体的にはドリブンスプロケットが35Tから37Tに変更されている。
外付けのデジタルタコメーターでエンジン回転数を調べたところ、レブリミットは8,000rpmに設定されていた。1速でそこまで引っ張ると、スピードメーターの針はどちらも40km/h弱を指す。計算上ではスーパーカブが32.3km/h、クロスカブは30.6km/hに達することになり、後者の方が約5.6%ショートな設定となっている。たったこれだけしか違わないので、同時に乗り比べても街中では2次減速比の差を体感することはほとんどない。ところが……。
上り基調のワインディングロードでは、クロスカブの方が明らかに元気がいい。特にタイトなコーナーが続く峠道では、スーパーカブなら2速に落とすかどうか迷う場面で、クロスカブは3速のままスルスルと上っていける。たった2Tとはいえ、このモデルらしい走りを追求するために変更したのだろう。その真面目さに頭が下がる思いだ。
さて、新型クロスカブ110の目玉と言えば、液晶パネルが追加されたメーターパネルだ。先代は速度計、燃料計、積算計のみだったが、新型はギヤポジションインジケーターをはじめ、平均燃費計、時計、距離計が追加された。ちなみに上位モデルのCT125・ハンターカブはギヤポジション、平均燃費計、時計がないことから、チューブレスタイヤまで含めると、クロスカブの方が装備面で勝っている部分が多いということになろう。
2020年にCT125・ハンターカブが登場したことでクロスカブ110の人気は下火になるかと思われたが、価格その他の理由で売れ行きは変わらないという。今回の排ガス規制対応をきっかけとしたモデルチェンジ(ホンダとしてはMMC=マイナーモデルチェンジだという)において、実のところ本命はこのクロスカブ110だと思えてならない。