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撮影日は真冬、東京日本橋でホンダモンキー125登場!
タカハシはまたも日本橋にやってきた。東海道ガス欠チャレンジも、これで連載3回目。毎回「今日こそは早朝出発だ!」と言いふらしているくせに大遅刻し、昼メシ時に出発するのが習わしになっている。
だが今回は、その程度のヤワな遅刻で済ませるつもりはない。なにしろ冬に取材してあった原稿を、夏も盛りの今となって、ようやく書き始めているありさまなのだ!
遅刻だサボりだとあれこれ批判されてもまったく気にしないあたり、我ながらじつに大胆不敵、豪放磊落、天衣無縫な快男児ぶりと自賛しているのだが、そのわりに、なぜか地べたに額をこすりつけて関係各位にペコペコお詫びして回りたくなるこの胸の切なさはなんだろう……。
今回のタカハシのガス欠チャレンジの相棒は、新型ホンダ モンキー125。誰もが知る往年の小さな名機モンキーが2018年に125ccへスケールアップされ、満座の喝采をあびて舞い戻ってきたのも記憶に新しい。このモンキー125は、その改良版。リバイバル当初4速だったミッションを5速にアップグレードした2021年型だ。
市街地最強のレトロスタイル・マシン
タカハシが日本橋を出発したのは、今回もやっぱり昼過ぎだった。サクッと国道1号を走り抜けるつもりだったのに、何度も迷子になりつつ西へ向かう。無味乾燥なビル街を1時間半もうろつかされ、やっとの思いで多摩川をこえて神奈川県に入った。
走りの革命は5速ミッションから
せっかくバイクに乗ってるのに、クルマだらけの市街地をちんたら走って何がおもしろいんだ……とかなんとか悪態のひとつもついてみたいと思っていたのに、いざ走りだしてみると、モンキー125には簡単にそうとも言えない味わいがあった。
5速ミッションの採用は、新型モンキー125の走りを劇的に変えた。
そもそも小排気量の125ccじゃ、誰がどう頑張っても、スロットル一発でアスファルトを削るビッグパワーなんて実現できるはずがない。もしライダーがそのささやかなエンジンパワーを楽しめるとすれば、せいぜい出足のインパクトくらい。だが、ワイドな4速ミッションで全速度域をカバーしようとすると、どうしてもローギアが迫力不足になりがちだ。5速ミッションの新型モンキー125は、そのローギアがめちゃくちゃ気持ちイイ! もしライダーがその気になれば、スタートダッシュでフロントをど~~んと振り上げられるほど鋭い「出足感」のあるマシンなのだ。
手持ちの時計でざっと測ると、モンキー125のゼロ発進は、法定速度の60km/hに到達するまでに6.5秒をやや切る程度。数字的にはとくに激速とはいえないが、出足感の良さが際立ち、体感的な加速は数値より遥かにキモチいいものになっている。
レジャーバイクの枠をはみだす「セミスポーツ・バイク」
混雑しやすい首都圏の国道1号も、郊外に出れば60km/h付近でクルージングするシチュエーションが増えてくる。そういうときのモンキー125は、しっとり落ち着いたハンドリングで安心感たっぷり。ひとまわり大きなバイクに乗っているような安定感だ。
一見してブリブリ可愛いレジャーバイクのくせに、禁断の5速ミッションを手に入れた2021年型モンキー125の走りは、もはやその枠には収まらない。甲羅を経たベテランライダーが「セミ・スポーツバイク」感覚で乗っても満足できる性能だ。加速して良し、流して良し、見た目も良しと、モンキー125は、市街地ライドで向かうところ敵なしの風格すらにじませている。
極寒の夜走りは平塚へ続く
冬の夕暮れはたちまち夜に変わる。風が冷たすぎて我慢できない。沿道の作業着等専門店で、急きょ防寒装備を追加することにした。購入したのはピカピカ光る反射材付き防水グローブカバー2900円。防水機能はともかく、これで少しは暖かくなるといいんだが。
すっかり陽が落ちた国道を西へ進む。気づくとフューエルメーターの残りは4目盛りになっていた。
せっかくグローブカバーを買ったのに、手先足先が冷え切ってじんじん痛い。
そんなとき関西人の口をついて出るのは、もはや「寒い寒い寒いしぬしぬしぬ、寒いっちゅうとんねん、マジしんでまうやろがワレこら!!」だけだ。何度叫んでも暖かくなるはずもなし、叫ぶだけムダだとわかっていても、そのセリフだけはフルボリュームでガンガン出る。信号待ちで隣に並んで停まった原付おじさんが、何かにおびえたように目を丸くしてこっちを凝視しているのに気づいたときだけは、かろうじて口をつぐんだが。
寒さのあまり、50年前のポンコツOHVエンジンよりも激しくガタガタ振動しつつ、涙のかわりに目からプッシュロッドをズボズボ飛び出させつつ、かろうじて平塚市内のビジホにたどりつく。部屋に入るとすぐに熱いシャワーを浴び、そのままベッドにもぐりこんで寝てしまった。