これは貴重なミーティング。|レアな2ストシングルスポーツ、ヤマハSDR。100台近く集まりました。

1987年、ヤマハが突然市場に送り込んだ2スト・シングルスポーツがSDRだ。メッキのトラスフレームに195cc・単気筒エンジンを搭載し、1人乗りと割り切った生粋のライトウェイトスポーツモデルだったが、レーサーレプリカブームだったためあまり注目されず短命に終わった。そんな背景を持つマシンのオーナーズミーティングをレポート!

REPORT/PHOTO●横田和彦(YOKOTA Kazuhiko)

ヤマハSDR:発売当時は賛同を得られず、2年で生産終了となった不遇のバイク

1980年頃の日本はバイクブームで盛り上がっていた。当時はバイクのレースも大人気。パワーやスピードがバイクの判断基準のひとつとなっていたため、各メーカーは毎年のように技術の粋を結集した新型のレーサーレプリカを発売。それらは高い人気を博し、街はカラフルなフルカウルに身を包んだマシンであふれた。

そんな盛り上がりの中、1987年に突然ヤマハが発表した2ストマシンがあった。SDRである(SDR200と呼ばれることもあるが、正式名称はSDRのみで排気量表記はつかない)。当時のヤマハはRZ250/350に始まり、RZV500R、TZR250といったトップクラスの戦闘力を持つモデルを次々に発表していたため「2ストのヤマハ」とも呼ばれていた。
ところがSDRはそんな時代の風潮から抜け出した、異色ともいえるコンセプトで登場したのである。

美しいメッキのトラスフレームに2スト・195ccの単気筒エンジンを搭載。まるで原付のようにスリムでコンパクトな車体は1人乗りと割り切り、タコメーターまで廃するなど軽量化を徹底的に追求。その結果、乾燥重量105kgを実現した。ちなみに同時期に発売されていたTZR250の乾燥重量が126kg、RZ250Rが136kgだったことを考えるとどれだけ軽いかが理解できると思う。最高出力は34ps/9,000rpm。軽く吹け上がるエンジンはトルク型の特性を持ち、市街地をヒラヒラと軽快に駆け抜けた。
かなり攻めたコンセプトのバイクだったが、当時のユーザーの反応はいまひとつ。やはりパワーやスピードに注目が集まっていた時代だけに、SDRは微妙なバイクと受け取られてしまったのだ。
当時YSP(ヤマハのバイクを専門で扱う系列店)に勤めていた人も「なんで今、メーカーはこんなバイクを出すんだろう?」と疑問に思ったというし、あまり売れなかったと証言。購入するのはちょっと変わった趣向を持つ人だったという。
そのため販売台数は伸びず、生産はわずか2年で終了。モデルチェンジもなく時代のうねりに飲まれていった。

90年代に入って沸き起こったネイキッドブームのときにデビューしていたら、また違った評価になったかも知れない。

今、そのコンセプトが見直されている!? 意外なほどの生存台数にビックリ

ところがだ。
先日、SDR生誕35周年を記念したオーナーズミーティングがヤマハ・コミュニケーションプラザで開催されたのだが、そのとき全国から100台近くのSDRが集結したのだ。仕事柄、色々なオーナーズミーティングに行っているが、80年代に生産されたバイクの単一車種でこれだけの台数が集まることはほとんどない。しかも発売当時は不人気車だったのだから、なおさら不思議だ。一体ナゼ……?

それはSDRの車体構成に秘密がありそうだ。2スト単気筒は構造がシンプルなため個人で手を入れやすい。またコンパクトな車体は置いておくスペースも取らないし、エンジンを単体にすると1人で運べるので部屋に持ち込んでオーバーホールなんてこともできる。さらに専門のWEBショップがあるので部品が入手しやすいというメリットも。
ホビー感覚で気軽にいじれることが、生存台数が多い理由のひとつだと考えられる。

また現代のバイクにはない異色のコンセプトや、バブリーな時代だからこそ実現できた贅沢なまでの造り込みが高い注目度を集めているとも考えられる。
一時は一桁万円台で売買されていた時期もあったが、現在は定価(37万9,000円)をはるかに上回る価格で取り引きされることも珍しくないバイクになった。その現象に一番驚いているのはオーナーたちかも知れない。

SDR生誕35周年となるミーティングは粛々と行われた

メッキフレームやエンジンカバーが輝く!

2022年5月28日、オーナーズミーティング当日は真夏を思わせる青空となった。
集合時間が近付くと、会場となったヤマハ・コミュニケーションプラザに続々と2スト単気筒サウンドを響かせてSDRが入場してくる。普段はネットでコミュニケーションをとっているためリアルに会うのは久しぶりという人も多い。中には“初めまして”の人も。
当日のドタ参もOKという気軽なミーティングということもあって参加台数は増えていき、途中出入りはあったものの最終的に100台近くになったのである。

バイクを停めるとすぐにあちこちに輪ができ会話が弾む。同じバイクに乗る者同士なので話題には事欠かない。

会場にはさまざまなSDRが集まる。
美しく磨き上げられた車体や

センスよくまとめられたカスタム車

カ○サキ車っぽく見えるのとか(笑)。

個性的なカフェスタイルに仕上げられたカスタムまで。

そして、そんなモデルが来るとアッという間に囲まれる。

5年前に行われた30周年記念ミーティングでは、コミュニケーションプラザ内のホールを借りて、当時の開発者を迎えて話を聞くといった催しがあったのだが、今年はコロナ禍ということもあり屋外で交流するのがメインとなった。

それでも参加者たちは閉場ギリギリまで会話を楽しんでいた。

40周年記念ミーティングは盛大に行なえますように!

気になるSDRをピックアップ!

ロフト・アダムさん

名古屋在住でメカニックをしているイギリス人のロフト・アダムさんは、SDRを8年ほど前から所有。「サーキットを走るバイクが欲しかった」そうで、SDRのスリムさや軽さに惚れたという。車体のペイントからエンジンのオーバーホールまで全部自分で行っている。SDRの2ストエンジンはトルクフルで走りやすく、チャンバーの音が気持ち良いと話してくれた。

(左上)メーターはセンターにタコメーターをセット、フォークトップにプリロード調整機能を追加。(右上)イギリス国旗がオシャレ!(左下)チャンバーからのサウンドもお気に入り。(右下)エンジンのオーバーホールも自分で行なうそう。

利楽猿さん

SDR歴13年。「昔、憧れていた」というのが購入動機だ。エンジン不動車を購入し、自分でオーバーホールして直したという。普段のメンテナンスからカスタムまで基本は自分で行なう。電気系に強いのでCDIを自作したり、3Dプリンターを活用したパーツ作りなども行っている。「同じコンセプトのバイクがない、唯一無二の存在。ほかでは体験できない乗り味が良いんですよね」と語ってくれた。SDRをはじめさまざまな情報を数多くアップしているブログ(ここんところ++ https://rilassaru.blog.jp)にもご注目ください。

(左上)こちらもセンターにタコメーターをセットし、アナログ式スピードメーターを右上に配置。(右上)大径ディスク径を採用しキャリパーをオフセット。(左下)3Dプリンター製のスペアプラグホルダー。(右下)ノーマルチャンバーの中身を抜いて軽量なアルミサイレンサーに交換している。

津市のウパ長男さん

5年前に開催された30周年ミーティングをネットで見て、欲しくなり購入。「学生の頃に友人が乗っていたのを見ていたんです。当時は免許がなく乗せてもらえませんでしたが、軽くて速いバイクだという印象がありました」。調子が良い個体をショップで購入したが、メンテナンスやカスタムは自分で行っているという。「2スト単気筒はいじりやすくて良いですね。今回のミーティングのために3ヶ月かけてエンジンのオーバーホールをしました」と笑顔。

(左上)センターにブラックラインが入るカラーリングも自家製。(右上)ディスクローターは純正サイズのままフローティング化。キャリパーを4ポットに変えている。(左下)リヤサスはYSS。インナーフェンダーもキレイに収められている。(右下)チャンバーステーがトラスフレームのよう!

ちなみに最遠方からの参加者と思われるのはこの方!

ナンバーに注目!!
あももさんは、なんと香川からの参加です!
おつかれさまでした!

ヤマハSD・SPECIFICATION

車名:SDR
型式:2TV
全長×全幅×全高:1,945mm×680mm ×1,005mm
軸間距離:1,335mm
最低地上高:160mm
シート高:770mm
乾燥重量:105kg
最小回転半径:2.6m
エンジン型式:水冷・2サイクル・単気筒
総排気量:195cc
内径×行程:66.0mm × 57.0mm
圧縮比:5.9:1
最高出力:34PS/ 9,000rpm
最大トルク:2.8kgf・m/ 8,000rpm
燃料タンク容量:9.5L
フレーム形式:鋼管ダブルクレードル
キャスター/トレール:25°30’/91mm
ブレーキ形式(前/後):油圧式ディスクブレーキ/油圧式ディスクブレーキ
タイヤサイズ(前/後):90/80-17 46S/110/80-17 56S
乗車定員:1名

著者プロフィール

横田 和彦 近影

横田 和彦

学生時代が80年代のバイクブーム全盛期だったことから16歳で原付免許を取得。そこからバイク人生が始まり…