ホンダCT125ハンターカブ 1000kmガチ試乗3/3 ロングツアラーとしての資質を多方面から検証

車載工具を除けば、★×4と5ばかり。レトロなスタイルや悪路走破性、日常域の使い勝手などに注目が集まりがちだが、CT125はロングランが楽しめるツアラーとして、秀逸な資質を備えているのだ。

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)

ホンダCT125ハンターカブ……440.000円

純正タイヤがIRCのGP-5で、サイズは前後とも80/90-17であることは、クロスカブ110と同じ。ただし2022年型クロスカブ110は、ホイールのキャスト化に伴ってチューブレスタイヤを採用。

■ライディングポジション ★★★★★

既存のスーパーカブシリーズを基準にすると、ハンドルがワイド&アップタイプになり、シート座面を高く設定したCT125のライディングポジションは、単純にかつてのCT110を再現しただけではなく、ツアラーとしての理想を追求したように思える。アイポイントが高いので視界は良好だし、ライダー込みの重心が高いから操作に対する反応は程よい塩梅で俊敏。一泊二日で1000kmを走った後も、身体のどこかに痛みは感じなかった。ただし身長が182cmの僕は、尻をもう少し後ろに引けるように、シートの着座面を10cmほど後方に伸ばしたくなった。

フレンドリーなイメージが浸透しているスーパーカブだが、シート高がシリーズの中でダントツに高い800mmのCT125は、身長が160cm以下のライダーだと足つき性に不満を感じる模様。アフターマーケット市場では、多種多様なローダウンシートやローダウンサスペンションキットが販売されているので、それらを上手く利用すれば、どんなライダーでも安心感が得られるはず。

■タンデムライディング ★★★★☆

CT125用のメーカー公認のカスタムパーツとして、ホンダはSP武川のピリオンシートを設定している。今回はそれを準備している時間がなかったので、編集部員が所有するスーパーカブ/クロスカブシリーズ用純正アクセサリーパーツを使用して、タンデムライディングを行ってみることにした。運転手の僕が印象的だったのは、重心が高すぎる感が出てくることと、エンジンが意外に余裕だったこと。以下はタンデムライダーを務めた富樫カメラマンの言葉。「この企画では珍しい125ccだから、エンジンがうなりまくって申し訳ない……っていう気持ちになるのかと思ってたけど、そうでもなかったな。交差点やヘアピンカーブの立ち上がりでも、普通に加速している印象だった。乗り心地もなかなかよかったよ。リアキャリアの左右がグラブバーとして使えるし、タンデムステップは落ち着きがいい場所にあるから、加減速で身体があんまり揺すられない。でもアップマフラーを避けるために、右側ステップがかなり外側に出ているから、小柄なライダーは違和感を覚えるだろうね」

■取り回し ★★★★☆

車重は他のスーパーカブシリーズより重いものの、ワイド&アップタイプのハンドルのおかげで取り回しは楽々。とはいえ、あまり広くない公共/商業施設の2輪駐車場に入れるときは、ワイド&アップタイプのハンドルと右側に張り出したアップマフラー、やや長めの軸間距離/全長が、意外にネックになることがある。

■ハンドル/メーターまわり ★★★★☆

もっと高く、もっと絞りを少なく、という意見を言う人がいるようだが、僕としては、ノーマルハンドルはかなりの好感職。ホルダーのネジ部とトップブリッジの間に備わるラバーからは、振動に対する配慮が伺える。バックミラーの視認性は非常に良好。液晶メーターはシンプルさを重視したようだが、時計とギアポジションインケーターが存在しないこと、SET/SELボタンを強く押すとユニット全体が微妙にたわむことに、個人的には物足りなさを感じた。

■左右スイッチ/レバー ★★★★☆

左右スイッチボックスは、250cc以上のホンダ車でよく見かけるデザイン。ただし、一部の機種で右側に備わるハザードボタンはナシ。基本構成が同じクロスカブ110では、キルスイッチとホーンボタンがブラックになる。

グリップラバーはオフロードタイプ。バーエンドには振動対策用のウェイトが設置されている。なおハンドルの途中にステーを介してフロントウインカーをマウントとする手法は、1970年代中盤のCT90が原点のようだ。

■燃料タンク/シート/ステップまわり ★★★★☆

かなり肉厚なシートは、ロングランでの快適性に大いに貢献。開閉はシリーズ唯一のアナログキー式で、内部に備わる燃料タンク容量はシリーズ最大の5.3ℓ。構造的にニーグリップが不可能なスーパーカブシリーズだが、CT125の場合は脛の内側を使って、マフラーカバーとエアダクトの張り出しをホールドできなくはない。ただしオフロードでは、スタンディング姿勢になるとマフラーカバーとエアボックスカバーが出っ張りすぎのような気がしたし、中腰で走るとリアキャリア前部のアシストグリップがジャマに感じた(凹凸の通過時に尻を強打)。

ハンドルグリップ位置とシート座面高はまったく異なるけれど、ステップ位置はスーパーカブシリーズの定番という印象。ただし、工具不要で脱着できるラバーを撤去すると、オフロード向けのギザギザ仕様になるステップバーとバンクセンサーは、CT125ならではの装備だ。

■積載性 ★★★★★

CT/ハンターカブシリーズの伝統に従って、リアキャリアは巨大(公称寸法は約477×約409mm)。どんな荷物も余裕で詰めそうだが、フックは意外に少ない片側2点ずつ。ボックスを装着して利便性を満喫する人が多い一方で、軽快感を求めて小型化を図る人もいるようだ。

■ブレーキ ★★★★★

フロントφ220mmディスク+片押し式2ピストンキャリパー、リヤφ190mmディスク+片押し式1ピストンキャリパーのブレーキは、ムチャクチャ扱いやすかった。僕がそれを実感したのはオフロードで、フロントはABSの作動を認識しながらもしっかり握りこめるし、リアは利き始めからロックまでの経緯がわかりやすいうえに、ロックしてからのコントロール性も良好。

■サスペンション ★★★★☆

アンダーブラケットのみでフォークを支持する他のスーパーカブシリーズとは異なり、CT125は一般的なモーターサイクルと同様に、上下ブラケットでフォークを支持。インナーチューブ径は27mm。リアサスはオーソドックスなツインショック。フロントまわりの剛性の高さやオン&オフの両方を過不足なく走れるという点で、前後サスペンションは基本的には好感触なのだが、走り込むうちにもう少しダンパーを利かせて、しっとりした走りを実現したくなった。

■車載工具

車載工具はシート下に収納されているL型六角棒レンチ1本のみ。リアキャリア左下のツールボックス内には、ヘルメットホルダー用ワイヤと書類しか入っていなかった……。期待していたわけではないけれど、この点数はやっぱり残念。

■燃費 ★★★★★

今回の平均燃費は54.8km/ℓ。燃料タンク容量は他のスーパーカブ+1.2~1.6ℓの5.3ℓだから、エコランを意識すれば無給油で300kmを走れるものの、僕の使い方だとそこまでの距離は難しそう。と言っても、エンジンをかなりブン回しても250kmは確実に走れるので、航続距離に不満を述べる人はあんまりいないだろう。なお燃料警告灯は、残量が約1.1ℓになった時点で点滅が始まる。

主要諸元

車名:CT125ハンターカブ
型式:2BJ-JA55
全長×全幅×全高:1960mm×805mm×1085mm
軸間距離:1255mm
最低地上高:165mm
シート高:80mm
キャスター/トレール:27°/80mm
エンジン形式:空冷4ストローク単気筒
弁形式:OHC2バルブ
総排気量:124cc
内径×行程:52.4mm×57.9mm
圧縮比:9.3
最高出力:6.5kW(8.8PS)/7000rpm
最大トルク:11N・m(1.1kgf・m)/4500rpm
始動方式:セルフスターター・キック併用式
点火方式:フルトランジスタ点火
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式4段リターン
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング
ギヤ・レシオ
 1速:2.500
 2速:1.550
 3速:1.150
 4速:0.9231・2次減速比:3.350・2.785
フレーム形式:バックボーン
懸架方式前:テレスコピック正立式φ27mm
懸架方式後:スイングアーム・ツインショック
タイヤサイズ前後:80/90-17
ブレーキ形式前:油圧式シングルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:120kg
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:5.3L
乗車定員:2名
燃料消費率国交省届出値:61.0km/L(2名乗車時)
燃料消費率WMTCモード値・クラス1:67.2km/L(1名乗車時)

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著者プロフィール

中村友彦 近影

中村友彦

1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車…