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マーベリックS1-1000RS……352,000円(一般販売予定価格)
原付一種のヤマハ・Eビーノを上回る加速力を確認
クラウドファンディングサイトにて目標額の200%を超える応援資金を集めたことでマスコミに取り上げられ、一気に知名度を上げたマーベリック・S1シリーズ。水平基調のアルミ製ダブルクレードルフレームに、20インチのファットタイヤを組み合わせたスタイルは実に個性的であり、感度の高い若者を中心に人気を集めているというのも納得だ。
今回試乗したのは、原付二種登録のS1-1000の基本構成はそのままに、インホイールモーターをハイスピードタイプに換装した“RS”というモデルだ。スペックは60V 1.0kW(原付二種は定格出力を1.0kW以下に規定)のままだが、最高速は従来の55km/hから65km/hにアップしたという。また、リチウムイオンバッテリーも60V 15Ah(900Wh)から60V 20Ah(1200Wh)に増やしたものを開発中で、これをもう一つ用意すれば140km(30km/h巡航時)もの航続距離が期待できるとのこと。
車重は35kgを公称し、これは子供乗せタイプの電動アシスト自転車と同等程度。むしろチャイルドシートを装着していない分、マスが集中しているので取り回しは圧倒的に楽だと感じるほどだ。走行モードは1~5の5種類で、1はアシスト無効、2は電動アシスト、3~5が電動バイクモードとなっており、数字が増えるほどにパワフルになる設定だ。
まずはモード1のアシスト無効で走ってみる。純粋に脚力のみで進むことになるのだが、7段変速のギヤを最も軽い状態にしても坂道発進はつらく、フロントのチェーンリングの歯数と合わせてギヤ比全体の見直しが必要だと感じた。おそらくシート(サドル)をペダリングしやすい高さに調整できれば少しは印象は変わっただろうが……。
続いてモード2の電動アシストをチェックする。全体的にアシストのレスポンスが遅れ気味であり、具体的にはクランクを1/4~1/2回転させてやっと電動アシストが働いてくれる。一方、アシスト領域の24km/h以下でペダリングを止めても、その瞬間からほんの少しアシスト力が残るので、思っていたよりも減速しないことに何度か慌ててしまった。電動アシスト自転車は、制御の緻密さにおいて国内メーカーとそれ以外とでは大きな開きがあり、マーベリックは後者に属する。モード2を多用する人は慣れるまで注意した方がいいだろう。
さて、本命であるモード3~5について。峠道をメインに試乗したため、最も力強いモード5を主にチェックした。スロットルを少しずつ開けると、やや唐突に反応しつつスルスルとスムーズに加速体勢へ移行する。上り坂での登坂力はなかなかのもので、体感加速としてはヤマハのEビーノを明らかに上回る。それもそのはず、Eビーノは原付一種登録で定格出力は0.58kW、車重は68kgなので、パワーウエイトレシオはS1-1000RSの方が圧倒的に上だ。一方、微速域での速度コントロールはEビーノの方が優れており、電動アシスト自転車のPASシリーズと合わせて、ヤマハの制御系は非常に高いレベルにあることを再認識する結果に。
先行開発のプロトモデルながら実力の片鱗は垣間見られた
ハンドリングについては、製品版と異なる硬いサスペンションが装着されており、ほとんど作動しない状態での試乗となってしまった。それでも、フレーム剛性の高さや大らかな旋回力を感じ取ることができ、これなら60km/h付近まで十分に許容してくれるだろう。
ブレーキはマウンテンバイクなどに採用されている油圧式ディスクで、前後連動タイプとなっている。峠道の下りでペースを上げるとさすがに絶対制動力の不足を感じたが、街乗りがメインであれば許容範囲だろう。とはいえ、自転車よりも車重があるので、ベーパーロック現象の発生には十分注意した方がいいと思われる。
純正アクセサリーとしてリヤキャリアやバックレストなどを用意するほか、フレームがパイプ形状のため、社外品のサーフボードキャリアやゴルフバッグキャリアなどが比較的容易に取り付けられるのも、マーベリック・S1シリーズの特徴と言える。このS1-1000RSについては間もなくクラファンページが公開され、デリバリーは2023年1月からの予定となっている。都市内移動であれば必要にして十分な動力性能とバッテリー容量であり、人とは違う電動バイクが欲しい人にチェックしてほしい1台だ。