目次
バイクの安全確保を目指した「二輪ADAS(Advanced Driver Assistance Systems)」
前方検知情報と、ブレーキ制御、エンジン制御、サスペンション制御を統合制御
「二輪ADAS(Advanced Driver Assistance Systems/先進運転支援システム)」とは、一般公道でのバイクの安全性を確保することで、交通事故の抑制を目指したライダーアシスト機能。
二輪ADASのポイントは、前方の検知情報からライダーに警告するだけでなく、バイク本体が走行状態を把握・制御することで、安全性を確保。具体的には、前方検知情報と、ブレーキ制御、エンジン制御、サスペンション制御を統合制御させるという画期的なしくみだ。
高性能なビッグバイクなど、昨今のモデルにはADASが標準、またはオプション装着されるようになってきた。しかしそれらの多くは、趣味性の高いビッグバイクの快適性に重きを置いたものとなっているのが現状だ。
社会からはバイクが関係する死亡事故の撲滅が求められており、これに寄与する機能の重要性が高まっている。そのため、日立Astemoは、「安全性を最優先にしたADASを世に送り出すべきだ」という考えに至った。
FCW(前方衝突警報)、EBA(緊急ブレーキアシスト)、AEB(自動緊急ブレーキ)等の最新機能も導入
日立Astemoでは、死亡事故の約70%が直進中の前方障害物との衝突によるものであること。また、その約60%が回避行動を取っていないことに注目。検知した前方の情報によって車両を減速させ、衝突被害を軽減させるシステムを開発するに至った。
前方検知には、既存製品の多くがレーダーを用いる中、同社は自社のステレオカメラによる、四輪車向けADASで培ったカメラ技術を使用。二輪車向けADASは、ステレオカメラだけではなく、単眼カメラも適用出来るものを検討している。その理由は……
ステレオカメラのほうが、物体形状や距離を認識しやすいのは当然ながら、単眼カメラでもAI技術の進歩により、画像認識性能が大幅に向上するため。今後同社は、2種類のカメラに適合するシステムを提供し、性能やコスト、搭載性のニーズに応えてゆく考えだ。
システムは、危機を検知するとまずFCW(Forward Collision Warning=前方衝突警報)を作動し、ライダーに衝突の危機を知らせ、減速や回避を通知。
その後、システムはライダーの対応を監視。ライダーのブレーキ操作があっても減速が足りず、衝突が予期される場合には、EBA(Emergency Brake Assist=緊急ブレーキアシスト)がブレーキ液圧を昇圧させ、制動効力を高めてくれる。
また、ブレーキ操作がない場合は、AEB(Automatic Emergency Braking=自動緊急ブレーキ)がブレーキを作動し、ライダーに体感で気付かせた後、さらにブレーキ液圧を昇圧させ制動効力をアップ。
なお二輪車の場合、ライダー自身が減速に備えていない状態のまま、急減速されると転倒の恐れがあるため、ライダーや車両の安定性に最大限配慮した報知や減速動作が必要となる。
EICMAに出展するスケルトンバイク「Stage1」は、コミューター向けのシステム構成で、前方カメラからの情報をエンジン制御とブレーキ制御にフィードバック。また、FUNバイク向けシステム構成の「Stage2」では、電子制御サスペンションにも制御が加えられる構造としている。
上記の二輪ADASは、現在開発中のシステム。市販モデルに導入される日も、そう遠くはなさそうだ。