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スズキ アドレス125……273,900円(2022年10月18日発売)
徹頭徹尾スタンダード路線、街中を安全確実に移動可能だ
同時期に日本で発売されたスポーティスクーター、アヴェニス125のベースとなったのが、このアドレス125だ。先のインターモトで発表されたバーグマンストリート125EXともプラットフォームを共有しており、アドレス125とアヴェニス125のホイール径はフロント12インチ、リヤ10インチで、バーグマンストリート125EXは前後12インチを採用する。
この新型アドレス125、生産国のインドでは3年前から「アクセス125」という名前で販売されており、現地ではスタンダードなスクーターとして受け入れられているという。ちなみに先代(2BJ-DT11A)も、中国で生産されていた「UU125i」をアドレス125に車名を変更して正規販売したもので、生い立ちとしては非常に似ているのだ。
エンジンは、先代の124cc空冷SOHC2バルブ単気筒、通称SEPエンジンをベースに熟成を図ったもので、新排ガス規制をクリアしながら燃費を改善することに成功。最高出力は0.7psダウンしたものの、最大トルク10Nmはキープしている。CVTは、スロットルを大きく開けたときには力強く、巡航時にはできるだけ低い回転数になるようにセッティングされており、これも燃費の改善に貢献しているという。
すでに先代から「通勤快速」ではなく「通勤快適」をコンセプトとしているアドレス125。発進加速は水冷エンジン勢ほど力強くはないものの、交差点の右左折から郊外での快走まで、どんなシーンでもスロットルの開け方次第で十分なパワーが得られ、気が付けばその穏やかな特性に慣れてしまっている。フロントフェンダーやレッグシールドにスチール鋼鈑を用いているからか、同じエンジンを搭載するアヴェニス125よりもノイズというか共振音が大きいように感じられたが、気になったのはその程度。日常的に乗るスクーターだからこそ、一時的な刺激よりも扱いやすさや燃費を優先したのだろう。
ハンドリングは、この穏やかで扱いやすいエンジン特性にマッチしたもので、低重心かつゆったりとした舵角の付き方により、原付二種スクーターが初めてというビギナーでもすぐに乗りこなせそうなほど操縦性がイージーだ。前後サスの作動性は車両価格なりではあるものの、フレームがしっかりしているのでギャップ通過時の安定性は高く、乗り心地も決して悪くはない。前後連動システムを採用するブレーキは、左レバーだけでも十分な減速ができるほどコントローラブルで、初心者にとってはこれも安心材料と言えるだろう。
同時期に登場したヤマハJOG125との走りの違いは?
さて、このアドレス125を買おうかどうか迷っている人にとって、強力な対抗機種と言えるのが、車両価格が1万8700円安いヤマハ・ジョグ125だろう。
ジョグ125は前後とも10インチホイールを採用しており、車格は一回りコンパクト。このジャンルとしては軽量な部類に入るアドレス125よりもさらに10kg軽く、加えて735mmという低シート高も大きなアドバンテージだ。ハンドリングは原付一種なみに軽快であり、1205mmというホイールベースの短さも手伝って、浅いバンク角でもクイックに向きを変える。最高出力はアドレス125の8.7pに対して8.3psとわずかに下回るが、パワーウェイトレシオでは上回っているため、純粋なパワー感ではジョグ125の勝ちだ。
一方、アドレス125は日常的に乗るうえで便利な装備が充実している。USBソケットが標準装備されているほか、コンビニフックは前後に2か所設けられている。さらに、液晶ディスプレイは積算計、距離計、電圧計、時計が切り替え表示できるほか、燃費の良い運転をするとブルーからグリーンに発光色が変わるエコドライブイルミネーションも搭載。ヘッドライトは明るくて見やすい長寿命のLEDであり、フロントブレーキはディスク。ワンクリックでエンジンが始動するスズキイージースタートシステムまで採用するなど、差額1万8700円で埋められないほどの開きがあるといってもいいだろう。
とはいえ、狭い場所での取り回しにおいて、125ccスクーター最強は軽量コンパクトなジョグ125であることに異論はない。特に最寄り駅の駐輪場までの足として使うのであれば、どちらを選んだ方がいいかは自ずと分かるだろう。アドレス125は、ジョグ125よりも燃料タンク容量が1.0l多く、WMTCモード値も上回っており、通勤通学の距離が長い人ほどこのメリットを享受できるはず。そして、同等の性能でスポーティな外観のスクーターが欲しければ、プラス1万1000円でアヴェニス125を選べばいいだろう。