ZX-4R発売の朗報、カワサキ直列4気筒400ccの歴史を振り返る。

かつては国産バイク人気の中心でもあった400ccクラス。性能を競い合った1980年代から400ccといえば4気筒モデルが当たり前だった。現在では絶滅していた400cc4気筒モデルがZX-4Rによって復活する。そんなわけで、カワサキ400cc4気筒の歴史を振り返ってみた。

NINJA ZX-25Rの登場により期待が高まっていた400ccクラスの4気筒モデルが、ZX-4Rとしてついに発売されることとなった。カワサキの4気筒400ccモデルとしては2008年の排気ガス規制により販売を終了したZRX400とゼファーχ以来15年ぶり、カウル付きのスポーツモデルに限れば2000年に生産終了したZXR400以来、実に23年ぶりの復活となった。

日本で最初の4気筒400ccモデルはヨンフォアことCB400Four。高コストのため4年で生産終了となった。

日本で最初の400cc4気筒モデルはホンダCB400Four。世界初の直列4気筒搭載モデルであるCB750Fourの中型モデルとしてCB350Fourが1972年に発売され、その後継車種として排気量を408ccへと拡大したCB400Fourが1974年に発売となった。発売翌年に運転免許制度が改正され、自動二輪免許に400cc以下のみ運転ができる中型限定が設定されたため、国内モデルは398ccへ変更された。

カワサキ初の400cc4気筒モデルはZ400FX。中型免許で乗れる高性能モデルとして人気を博した。

CB400Fourも1977年には生産終了となり、中型限定免許で乗れる4気筒モデルは一時途絶えてしまったが、1979年、カワサキからZ400FXが登場する。これはヨーロッパ向けに販売されていたZ500の排気量を日本国内の免許制度に合わせて497ccから399ccへ変更したもので、空冷のDOHC2バルブエンジンは43psを発生。1982年には高性能モデルであるZ400GPが登場。エンジン出力は5psアップされ、リヤサスペンションはモノショック式のユニトラックが採用された。

Z400FXの発売後は他メーカーからも400cc直列4気筒モデルが相次ぎ、1980年にはヤマハが初の400ccc4気筒モデルとしてXJ400Dを発売、1981年にはスズキからもGSX400Fが登場。さらにホンダもCBX400Fを発売してミドルクラスの4気筒ブームとなった。

バイクブームの到来で性能競争が激化。Z400GPは発売からわずか1年でGPz400にモデルチェンジされた。

1980年代のバイクブーム以降、400cc以下のいわゆる「中型」クラスは年々進化を続け、性能を競い合っていた。カワサキはZ400GPを発売からわずか1年で終了してGPz400を1983年に発売。新設計のショートストロークエンジンは51psを発生。わずか8ヶ月でマイナーチェンジが行われGPz400Fが登場。エンジン出力は54psへとアップされた。この当時はどのメーカーも毎年のようにマイナーチェンジや新型車を発表しており、ホンダも発売からわずか2年でCBX400Fをモデルチェンジさせ、CBR400Fが1983年に発売となっている(CBX400Fはその後1984年に再発売されている)。

1980年代はWGP(現在のMotoGP)をはじめとする2輪のロードレースもブームとなり、1983年にスズキから最初のレーサーレプリカであるRG250Γが発売となると、市販車にもフルカウルのレーサーレプリカが登場するようになる。カワサキからも1985年にフルカウルのGPZ400Rが発売となった。アルミ製ダブルクレードルフレームに水冷化されたDOHC4バルブエンジンを搭載。前後16インチホイールを採用していた。ただ、この時のカワサキはあくまでレーサーレプリカではなく、公道での乗りやすさを考慮したスポーツモデルだとしていた。ちなみに、ヤマハは1984年にFZ400R、スズキは1983年のGSX400FWを経て1984年にGSX-Rを発売。ホンダは1986年にCBR400Rを発売しているが、レーサーレプリカの主力はV型エンジンのVFシリーズへ移行していくこととなる。

Z400FXから続く4気筒400ccモデルの系譜はZZR400に引き継がれた。ミドルクラス初の本格ツアラー。

1987年にはGPX400Rが登場。スチール製ながら軽量で高強度なFASTフレームや空力の良いカウルデザインを採用するものの、セールス的には今ひとつの結果となった。1988年にはZX-4を発売。2ストローク250ccのKR-1とともに、レーサーイメージを色濃くしたモデルで、カワサキ初の400cc専用設計エンジンとなる。水冷DOHC4バルブエンジンは59psを発生するが、これは当時の自主規制によるもの。同年の鈴鹿4時間耐久レースのSPクラスに、モーターサイクルドクターSUDAがこの車両で参戦して優勝している。1990年にフルモデルチェンジされてZXR400が登場。当時TT-F3クラスに参戦していたZXR-4をイメージしたレプリカモデル。改良を繰り返しながら2000年まで生産されていた。同じく1990年にはツアラーモデルのZZR400も発売されている。水冷DOHC4バルブエンジンを搭載。2007年まで販売が続けられたロングセラーモデルであった。

ネイキットブームを巻き起こしたゼファーはZ400FXのエンジンを搭載。1996年には4バルブ仕様のゼファーχが登場。

レーサーレプリカブームの中、1989年にゼファー400が登場した。カウルを持たないオーソドックスなスタイルが支持され、ネイキッドバイクのブームに繋がった。空冷DOHC2バルブの4気筒エンジンはZ400FX用エンジンを改良したもので、最高出力は46psと他車に比べれば控えめだった。高性能なエンジンを搭載するライバルが増えていった頃の1996年、53psを発生する4バルブエンジンを搭載したゼファーχが登場。こちらは2008年まで生産が続けられた。水冷エンジンを搭載するZRXは1994年に発売。こちらはゼファーとは異なり走りに重点を置いたネイキッドとして誕生。エンジンはZZR400と共通の水冷DOHC4バルブで、出力は当時の自主規制最大の53ps。Z1000Rをイメージしたデザインは人気を博し、2008年まで生産された。

水冷エンジンを搭載する高性能ネイキッドとして誕生したZRX400。ゼファーχとともに2008年まで生産されていた。

 多くの400cc4気筒モデルを生み出してきたカワサキであったが、2008年の排ガス規制により最後まで残っていたゼファーχとZRXの販売を終了。以降の400ccモデルは2気筒のみとなっていたが、15年にわたる沈黙を破って登場したのがNinja ZX4-Rというわけだ。カワサキファンのみならず、期待せずにはいられないだろう。

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