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コンパクトになって記載情報も簡素化
クルマはもちろん、車検が義務付けされている251cc以上のバイクにも採用された新しい電子車検証。2023年1月4日以降に納車された新車や、車検を受けたバイクに採用されているが、パッと見て気づくのは、前述の通り、従来のA4サイズからA6サイズ相当とコンパクト化し、記載内容も簡素化されていることだ。
新車検証に掲載されるのは、ナンバーや車体番号、基本的な車体の寸法や重量など、車両そのものの情報のみだ。それ以外の情報は、車検証の裏面に貼られたICタグに内蔵されたICチップの中に電子化されて入っている。
ICチップ内の情報を知りたいときは、スマートフォンに専用アプリを入れるか、PCを使う場合は市販のICカードリーダーを使って、端末に情報を読み込む。
試しに、スマホにアプリを入れ、情報を読み込んでみると、確かに、有効期限がいつまでなのかとか、所有者の住所などといった詳細情報などが分かる。
ちなみに、スマホに読み込む場合は、車検証のICタグ部分にスマホを近づけてかざし、車検証の表面右下にあるセキュリティコードを入力するだけなので、比較的簡単だ。
ただし、車検証を金属製の机などに置いてしまうと、読み込まないケースもある。そういった場合は、下に厚めの雑誌や紙などを敷くか、木製テーブルなど金属が使われていないものの上に車検証を置いてから、読み込むといい。
目的は車検証の発行作業を簡素化すること
では、この電子車検証のメリットとは、なんだろうか? 国土交通省の発表を要約すると、電子化の目的は、主に、民間車検場などを営む整備事業者が、新車の登録や車検時などに、わざわざ陸運支局などに行かなくても、自分の事務所で有効期限の更新などをできるようにすること。つまり、「車検証を発行する作業の簡素化を図る」ことが狙いだ。
また、整備事業者の手間はもちろんだが、陸運支局にとっても、電子化することで作業効率を上げられるし、春など申請が多い時期の混雑を軽減できるメリットもあるだろう。
一方、ユーザー側に恩恵はあるのだろうか。前述の通り、コンパクトになった分、バイクのシート下収納スペースには入れやすくなったように感じるが、例えば、車検の有効期限を知りたいと思った場合、わざわざスマホかPCを使って読み込む必要がある。
もちろん、詳細情報を一旦読み込んでしまえば、アプリ内に、「自動車検査証記録事項」という詳細情報が書かれた書類をPDFとして保存できる。そのため、何度もICチップ内の情報を読み込まなくても、次からはアプリを開いてPDFを開けばいいのだが、かといってさほど便利になった感じもしない。どちらかといえば、ユーザーよりも、整備事業者や陸運支局などが楽になるといったイメージだ。
ちなみに、小規模店舗などで認証工場の資格を持たない(民間車検場ではない)バイクショップの場合は、結局のところ、陸運支局へバイクを持ち込んで車検などを受けることになる。そうした業者にとって、有効期限更新などの申請作業をデジタルでやれること以外、あまり便利になったとはいえないだろう。また、ユーザー車検を行う場合も同様だから、今回の電子車検証は、車検証の発行作業について、すべての事業者やユーザーにメリットがあるとは言い難い。
ICタグを折り曲げると破損する
さらに、ユーザーにとっては、主に保管方法などで、気をつけないといけないことが増えたといえる。まず、小さくなり、情報がデータ化されたからといって、走る際は自賠責保険証と共に携帯する必要があることは従来と同じだ。
車検証は、バイクの場合、シート下収納スペースに入れておくライダーも多いと思うが、特にスポーツバイクなど、収納スペースが小さいモデルの場合は、いかに小さくなったとはいえ、車検証を折り曲げないと入らないことも多い。実際に、筆者のCBR650Rでも、リヤシート下の収納スペースに入れようとすると、新車検証のA6相当サイズでも折り曲げないと入らない。
そして、その際に、電子車検証のICタグが貼ってある部分を折り曲げてしまうと、破損してしまう恐れがある。もし、ICタグが破損すると、詳細情報を読み込めなくなるため、再交付をしなければならなくなるので注意が必要だ。
高温になる場所に保管するのも危険
さらに、ICタグやICチップは高温に弱い。例えば、4輪車の場合、国土交通省によれば、「ダッシュボードの中などに保管は可能」だけれど、ダッシュボードの上など、夏場にかなり高温となる箇所へ「長時間放置することは避けて欲しい」という。
そう考えると、バイクの場合も、例えば、夏場にツーリングへ行き、出先で車両から長時間離れる時などに、シート下の収納スペースへ入れっぱなしにするのはやや不安だ。駐車する場所にもよるが、もし炎天下の場所に置く場合は、出して携帯した方がいいかもしれない。
何年も同じ車検証を使いまわすデメリット
ちなみに、新しい電子車検証は、次に車検を通す際も、車検証自体はそのまま使い、ICチップ内の情報だけをデータ上で更新するという。従来の車検証であれば、新車購入時に発行されても、車検の度に新規のものに変わっていたが、電子車検証では、紙やICタグ自体は何年も、へたすると十年以上同じものを使うことになるのだ。
そう考えると、電子車検証をシート下収納スペース内へ入れて走ったり、保管するのはちょっと危険な気がする。特に、筆者の愛車のように収納スペースが小さいバイクでは、前述の通り、折り曲げないと入らない。
その際、きちんとICタグ部分を避けて折り曲げたとしても、やはり紙は紙。長年使っていれば、折り目部分が劣化したり、場合によっては破けてしまう可能性もある。また、ツーリング先で大雨にあったり、入れたことを忘れて洗車してしまうと、シート下収納スペース内に浸水してしまい、車検証がふやけて劣化を早めたり、破損することも考えられる。
もちろん、ファスナー付きのビニール製バックなど、防水性がある入れ物に入れておけば問題ないかもしれない。だが、きちんとファスナーが閉まっていないとか、長年同じバッグを使っていると、それ自体が劣化し、水が内部に入りやすくなるケースも考えられる。もし、そうなると、紙の部分だけでなく、ICタグ内部にあるICチップも濡れて、データが消失する恐れもある。
そこで、心配性の筆者は、電子車検証をシート下収納スペースに入れず、バイクに乗る際は、バッグやナップサックなどに入れることにした。シート下収納スペースに入れて、間違って濡れてしまい、面倒な再交付を行うよりもマシだと思ったからだ。この点は、個人の判断だが、保管や携帯する方法には十分気をつける方がいいことは間違いない。
電子化なのに「紙のまま」なのは問題あり?
あくまで私見だが、何年も同じ紙を使いまわしするというのは、今回導入された電子車検証の大きな問題点ではないだろうか。近年は、運転免許証やマイナンバーカードなど、ICチップが内蔵されたカードタイプの証明書なども多い。
電子化し、長年同じものを使うのであれば、車検証もカード化する方がよかったのではないかと思う。車検証の情報をすぐに知りたいのであれば、自動車検査証記録事項を紙でプリントアウトするなどで対応できる。ただし、もしカード化すると、新規作成や破損などで再交付する際、手数料などの費用はかなり上がることも考えられるので、一概には言えないが。
ともあれ、新しい電子車検証は、ユーザーにとって、あまりメリットを感じられず、注意点も増えたことだけは確かだ。新車購入や車検で、従来の車検証から変わった人は、十分に気をつけたい。
ちなみに、紛失や破損で再交付する場合の手数料は350円。費用自体はさほど高くないが、バイクショップなどに依頼すると代行手数料を取られるだろうし、自分で陸運支局へ出向く場合は時間や手間も掛かる。日頃、仕事などで忙しい人には、ちょっと面倒になるといえよう。