スクーターのようで、実は立派なスポーツバイク。6速MT、ホンダ・ウイナーX

一見スクーターなのになんでスポーツモデルなの? と思うのは、固定概念というもの。
アジア地域ではこういったアンダーボーンモデルが独自の進化を果たし、レースも盛んな
のだ。CBR150系のDOHC水冷150ccエンジンは「マジ」なヤツです。

REPORT●ノア セレン
PHOTO● 山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

ホンダ・ウイナーX……389,000円(消費税込み)

ブットビアンダーボーン、これこそまさにウイナー(勝者)。

MotoGPやスーパーバイク、もしくはそれに繋がっていく多くのレースは、基本的には膝の間にタンクがあるタイプの車体形状をしていて、そのせいか我々日本市場にいるライダーからすると「スポーツバイクと言えばそういった形状」という考えがあるだろう。あのカタチこそがスポーツを追求した時の当然のカタチ、と。
そしてアジア地域ではカブ系に端を発する、いわゆるアンダーボーンタイプのスポーツ車がいるのも、まあそれは知ってはいること。しかしその実力は認めつつなんとなく「実用車でそのまま強引にスポーツしているのでは?」と、先進マーケットの常識とは別のところにある世界、という認識もあるかもしれない。
ところが。「あれはスポーツバイク的には亜種かな」なんていう感覚を恥じた。アジアンアンダーボーンスポーツはここまで来ていたのか! しかもいわゆる普通のスポーツバイクに寄せてきていない、ということにハッとした。アンダーボーンはアンダーボーンならではの進化を果たしていたのだ。ウイナーXの実力、パワー、独自性、超絶バランスを体験し、自分の無知を反省することになった。

これはコンペモデル!?

DOHCエンジンは9000rpmで16.2馬力を発揮。車重は(PCXより11kg軽い)122kgで、タイヤ含め全体的にとても細いラインを持っている。排気音もとてもスタッカートの効いたもので、アイドリング時から「一味違う」感が溢れている。操作は完全にスポーツバイクのソレで、左レバーはクラッチ、ミッションは普通に6速、右ペダルはリアブレーキ。タンクをニーグリップしていないことに違和感は覚えつつも走り出すと、通常位置にタンクがないことなんてすぐに「どうでもいい!」と思えるほど活発な加速を見せる。
ボア×ストロークがほぼスクエアなおかげかとてもトルクフルで、低回転域でもパルス感を伴ってキビキビと車体を進めてくれる。車両重量は122kgというが、それよりも軽く感じて本当に意のままに加速できてしまう。
そして本領発揮は6000rpmから先だ。DOHCの高回転域が炸裂、非常に元気なパワーバンドへと突入していくのだ。軽量な車体が各ギアで何のストレスやフリクションもなくスィーッ! スィーッ!! スィーッ!!! っと速度をのせる。そのダイレクト感や軽さ、速度が乗ってきても鈍らない加速はもはやコンペモデル的ですらあるほど、とにかくライダーとのシンクロ率が高くまたスポーツマインドにダイレクトヒットしてくる。
回転上昇や速度のノリだけでなく、回転の落ちる早さもまた極スポーツである。ブレーキングから、回転数を合わせつつ「バン・バーン!」とシフトダウンするのも、本当に面白いようにキマる。6000rpm以下の領域ももちろん使いやすいが、パワーバンド領域を使っている時の楽しさと言ったらなく、ついつい活発に乗りたくなる性格。調子に乗って飛ばしちゃうため、ミラーに白いCB1300が映っていないか常に確認しておいた方がいいほどだ。

アンダーボーン、全然OK

そんなに元気なエンジンなのに、なぜアンダーボーン! と思ってしまうのは、やはりアンダーボーンはカブっぽい、実用車的なイメージがあるからだろう。しかしスポーツバイクとして進化してきたアンダーボーンスポーツには実用車とは別次元のバランスがちゃんとあるから安心してOKだ。ニーグリップ問題は、アンダーボーンとはいえ意外と盛り上がっているセンタートンネル部にスネを押し当てることで簡単に代用できた。グリップするだけでなく、コーナリング中はホールドしたり、ターンインの時はソコを押したりだとか、意外や下半身で車体に入力することができ、それら操作はとても有効だった。
そして車体のバランスなのだが、まずは細いタイヤが前提というのがあるだろう。普通のスポーツバイクはついつい「より充実の足周りで」「ゆくゆくはラジアルタイヤを」といった道を辿ってしまうことも多いが、このカテゴリーは細いバイアスタイヤ、フォークはアンダーブラケットのみの保持、といった実用車からの流れを変えずに、そのままスポーツバイクとしてバランスさせようとしてきた。そしてこれが素晴らしく機能する
アンダーブラケットのみでフォークが保持されているのは心許ないと感じることもあるだろうが、そことバランスさせているのがシングルポッドのキャリパーや90幅という細いタイヤ。フロントをギュッと沈めて旋回力を引き出す、といった乗り方ではなく、ブレーキはリアの割合も多く使い、フロントには多くの荷重を集めることなくコーナーをなぞっていくというスタイルだ。これは彼の地で頻繁に行われている公道レースにも関係しているだろう。路面の荒い公道でフロント依存の高いバイクでは怖いはずだ。そんな設定が、日本の公道を走るにも活きる。サスを良く動かして、などと考えることなく、前後ブレーキをバランスよく使って車体全体を路面に食い込ませてブレーキ、からの、ヒラリと向き変え、そしてこの工程には一切のストレスやフリクション、タイムラグがなく、その一体感は本当にコンペ的……あぁたまらない!!
あえてライバルを挙げるとすれば、スズキのGSX-R125やそれのアップハン版GSX-S125だろう。軽量でハイパワー、そして本気のスポーツ。ただこちらはアンダーボーンゆえ、アジア地区の激戦を戦い抜いてきた独自のバランス/スポーツ性があるのが魅力と言える。

ユーティリティもスポーツ並み

形がアンダーボーン的だからどうしてもユーティリティも充実かと思いそうなものだが、そこもスポーツに割り切っている部分で、スクーターのような利便性は少なめだ。とはいえ、そもそもカブ系バイクにはメットインなどはなかったわけで、これが自然なカタチとも言えるだろう。
シート下にラゲッジスペースはなく4.5Lの燃料タンクのみ。ただシートヒンジ付近にヘルメットをかけるためのフックが二つ用意されているため、ヘルメットのロックはタンデム時でも安心だ。シートそのものは硬めの印象でこれもまたスポーティ。タンデム部の面積は少なめだがタンデムグリップはしっかりとしていて、取り回しの時にも重宝した。
フロント周りにもポケットやボックスの類はなく、スクーターのような利便性は望めない。ただUSBポートは備えるため、後付のスマホホルダーなどを装着した場合には充電などで活用はできそう。
総じて、使い勝手の部分においても「スポーツバイク」もしくは「カブ程度」という認識が良いだろう。これだけの機動力があり、走らせるのが楽しい乗り物において、スクーターのような便利さを期待すること自体が野暮というもの。ストリートユースにはリュックを背負うか、ボックスをつけるなど工夫したい。

ギョッとされたいアナタに

ホンダのNCシリーズのバリエーションでかつて「インテグラ」というモデルがあった。スクーターとスポーツバイクのハイブリッド的位置づけという意味で、このウイナーXはあのインテグラにも似た印象を受けた。ポジションは楽で、アンダーボーンという見た目から、なんとなく感覚的には親しみやすさや気軽さが確かにある。それでいて実は普通の、いや、普通以上のスポーツバイクでもある。そんなギャップが楽しい。
これで街を走ったら、そもそも珍しいということもあるが、その機敏さ、速さ、切れ味に回りのライダーはギョッとすることだろう。バイク本体の楽しさに加え「え? 何それ面白そう!」という周りからの視線も楽しめるバイクである。

足つき性チェック(ライダー身長185cm/体重72kg)

国内にはこういったモデルが展開されてこなかったため「なにコレ」感のあるルックスだ。見た目はまさに、カブから進化したアンダーボーンスポーツ。スイングアームがあって、チェーン駆動で、大径17インチホイールで、という意味ではまさにカブだが、ルックスはアジア独自の進化を果たしている。ポジションはハンドルが低くて近い印象で、手の内でスポーティに振り回せる構成。ステップに足を乗せるとスネでトンネル部を挟んだり押したりできるため、ニーグリップに近い感覚で車体への入力ができる。足つきはステップの後ろ側にふくらはぎを降ろせるため直線的に地面に届く。

ディテール解説


150cc水冷DOHCエンジンそのものは16.2馬力と、PCX160などと大差ない数値ながら、アクセルレスポンスの鋭さやこの軽量車体とのマッチングなどにより非常に速く感じる。低回転域ではパルス感のあるトルクフルな特性、6000rpm以上はDOHCらしい弾けるパワーバンド。どこをとっても楽しい。なお撮影日の走行では遠慮なく高回転域も多用したにもかかわらず、メーター上の燃費計では42km/Lを示していた。

フロントブレーキはピンスライド式の1ポッドキャリパーで、スポーツバイクとしては心許ないかと思いそうだが、フォークがアンダーブラケットのみで支えられていることを思うとこれが良きバランスにも思えた。タイヤは90/80-17と細く、これが またスパスパと思い通りの切れ味を生んでいると感じる。タイヤブランドはチェンシンのCS-WINGというモデルだった。ABSも装備。

短めのマフラーからはかなりハスキーな排気音を発し存在感をアピール。住宅街を抜けるときは回転数低めがいいかもしれない。角鉄スイングアームにセットされるリアタイヤは120幅、リアにもディスクが備わり、フロントと併用すれば強烈な減速も可能だ。なおセンタースタンドも標準装備する。

フロントフォークのしなやかな構成により、逆にリア周りはしっかりと作ってある印象。スイングアームもしっかりしているし、リアサスもクラスを越えた、ちゃんとスポーツバイク然としたものが装着されている。作動性も極めて良好だ。

ステップ関係もライダー側にはラバーも張られ一定の快適性も追及されているものの、完全にスポーツバイクのソレ。バンク角は特別深くは感じず、公道レベルでもワインディングを元気に走ればステップを擦ることはあるだろう。タンデムステップもしっかりしたものだ。

硬めのシートはスポーツ心をくすぐるが、クルージング時に深く腰掛ければ尻を包み込んでくれる快適さもあった。またタンデム部との境目には白いステッチが入るなど高級感も高い。タンデム部の面積は大きくはないものの、タンデムグリップはしっかりしていて取り回しにも重宝する。シート下にはカブ系よろしく燃料タンクを配置。容量は4.5Lと少なめにも思えるが、リッター40kmを超えることを思えば150~200kmの航続距離を期待できそうだ。なおヒンジ横にはヘルメット用のフックが2つ備わっているためタンデムライドでもヘルメットの置き場所は安心。

左右の手元のスイッチは至ってシンプル。左側の、下にウインカースイッチ、上にホーンボタンという近年のホンダの構成にはあまり賛同できないが、シンプルなのは歓迎したい。欲を言えばキルスイッチがあると自主的なアイドリングストップができたのに、とは思った。

フロントカウル内側にはポケットやボックスの類はない。キーはスマートキーを採用しているが、これは好みの問題だろう。筆者としてはバイクにおけるスマートキーは不要と考えているクチで、ここはメカニカルキーで何も問題はないと感じる。左側にはUSBアウトレットを用意するがボックスがないため、スマホなどと接続するなら後付けのホルダーなどを用意する必要があるだろう。

LEDのヘッドライトを備える顔は逆スラント形状でヤマハのYZF-R25のようなイメージもある。フロントフェンダーと合わせて、面構成が多く近未来感あふれるデザイン。カブ(?)もここまで進化するのか!

斜め上に切れ上がったテールもまたスポーティ。テールライトだけでなくウインカーもLEDを採用し、しかもこういった無塗装の構成パーツのクオリティも非常に高く、正規の国内ラインナップだったとしても納得するレベルだ。  


反転液晶で、シンプルで見やすいメーター。わかっているのに、車体の構成的に「なんでスクーターなのにギアポジがあるの?」という違和感がぬぐえない。6速ミッションを備えるのだからギアポジインジケーターがあるのは自然だ。常時表示の時計があり実用性も確保しつつ、一目でわかるタコメーターなどスポーツ心にもしっかり対応。短いスクリーンやホンダのエンブレムなど高級感も高い。

主要諸元

モデル年:2022年
排気量:150cc
タンク容量:4.5L
車体サイズ (全長/全幅/全高):2,019mm 727mm 1,104mm
シート高:795mm
タイヤサイズ:F 90 / 80 - 17 R 120 / 70 - 17
馬力:11.5kW (15.6PS)/  9000 rpm
重量:122kg
製造国:ベトナム
保証内容:バイク館保証24か月

キーワードで検索する

著者プロフィール

ノア セレン 近影

ノア セレン

実家のある北関東にUターンしたにもかかわらず、身軽に常磐道を行き来するバイクジャーナリスト。バイクな…