バイク運転時、自転車用ヘルメット、工事現場用ヘルメットの着用は何違反?|PSCマークやSGマーク等の意味を知る

写真右のバイクはホンダ・スーパーカブ50
バイク乗車時、「頭部を守るヘルメットなんだから、工事現場用のドカヘル(安全帽)でもいいんじゃない?」「近距離だからと自転車用でも大丈夫かな」という考えは、自分の身を守るためにも絶対にNG。バイクに乗る時は「国内で使用できるバイク用ヘルメット」を被らなければ道路交通法違反となる。一般公道で使用できるヘルメットには「PSCマーク」や「SGマーク」等のステッカーが貼付。バイク用ヘルメットに貼付された「安全規格」に関するステッカーの種類や意味をリサーチしてみた。
REPORT●北秀昭(KITA Hideaki)
取材協力:アライヘルメット http://www.arai.co.jp/ SHOEI https://www.shoei.com/

もしも自転車用や工事用のヘルメットでバイクを運転したら……

違反対象:乗車用ヘルメット着用義務違反 違反点数:1点 反則金:なし

工事用の安全帽は1000円前後とバイク用に比べてリーズナブル。しかしバイク用よりも素材が薄く、バイク用としては使用不可。

工事用の安全帽(別名・ドカヘルとも呼ばれる)や自転車用ヘルメットをバイク乗車時に着用する行為は、運転者・同乗者ともにNG。規定の強度や安全性をクリアし、下記のシールが貼付されたバイク専用のヘルメットを被らなければ、道路交通法違反に問われる。

もしも違反した場合、乗車用ヘルメット着用義務違反、違反点数1点となり、反則金はなし。

ヘルメットを被らない。バイク用ヘルメット以外で事故を起こす。また上記で事故に遭った場合。身体的にも金銭的にも、被害を被るのは、基本的に運転者や同乗者のみとなる。

反則金なしと規定されているのは、他の車両や歩行者が被害を被る確率は極めて低い等の理由が大きいと予測される。

ヘルメットの着用義務に関する道路交通法

●道路交通法 第七十一条の四
1. 大型自動二輪車又は普通自動二輪車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶらないで大型自動二輪車若しくは普通自動二輪車を運転し、又は乗車用ヘルメットをかぶらない者を乗車させて大型自動二輪車若しくは普通自動二輪車を運転してはならない。
2. 原動機付自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶらないで原動機付自転車を運転してはならない。
(3〜5.省略)
6. 第1項及び第2項の乗車用ヘルメットの基準は、内閣府令で定める。
●内閣府令(道路交通法施行規則第九条の五)乗車用ヘルメットの基準
1. 左右、上下の視野が十分とれること。
2. 風圧によりひさしが垂れて視野を妨げることのない構造であること。
3. 著しく聴力を損ねない構造であること。
4. 衝撃吸収性があり、かつ、帽体が耐貫通性を有すること。
5. 衝撃により容易に脱げないように固定できるあごひもを有すること。
6. 重量が二キログラム以下であること。
7. 体を傷つけるおそれがある構造でないこと。

購入時の注意点! 「PSCマーク」がないと、バイク乗車用ヘルメットとして国内販売不可

バイク乗車用ヘルメットは、上記の「内閣府令(道路交通法施行規則第九条の五)乗車用ヘルメットの基準」を満たしているだけではダメ。

ライダーを守るバイク乗車用ヘルメットは、『消費生活用製品安全法』によって特定製品に指定されており、製造者や事業者が検査を行い、強度等の基準をクリアさせる必要がある。

この基準に合格したバイク乗車用ヘルメットには、「PSCマーク」が貼付される。なお、国内のバイク乗車用ヘルメットには、この「PSCマーク」を貼付することが義務づけられており、「PSCマーク」のないヘルメットは国産品・輸入品にかかわらず、国内ではバイク乗車用ヘルメットとして販売不可。

国内でバイク乗車用ヘルメットを購入する場合は、この「PSCマーク」を確かめることがとっても重要。「PSCマーク」のないヘルメットは、バイク乗車用ヘルメットとは認められておらず、“装飾用ヘルメット”と見なされる。もしも「PSCマーク」のない装飾用ヘルメットを被って一般道を走行した場合、「乗車用ヘルメット着用義務違反」の対象となるので注意が必要だ。

バイク乗車用ヘルメットには様々な規格や要件あり

街乗りなど低中速走行の使用を想定。メーカーや販売店が定めた「125cc以下用」

125cc以下用ヘルメットで大型バイクに乗っても、基本的に道路交通法違反には問われない。しかし側頭部の露出が大きいため、スピードの出る125cc超のバイクで着用するのは控えたい。

市販のバイク用ヘルメットには、製造メーカーや販売店が定めた「125cc以下用」と「排気量無制限」の2種類が存在。

ハーフ形(半キャップ形)やスリークォーターズ形(耳までカバーされたタイプ)などには、「125cc以下用」のステッカーが貼付されている。

国内販売されている「125cc以下用」のヘルメットは、街乗りなど低中速域での使用を想定。また軽量で手軽に被れ、夏場は涼しいのが特徴。

ただし「排気量無制限」のヘルメットのように、高速域での衝撃を想定していない。また「排気量無制限」のヘルメットに比べて気軽に被れる半面、側頭部の露出が大きい等の理由により、スピードの出やすい125cc超のバイクで着用するのは避けるべき。

「PSCマーク」の“製造物賠償責任”を明示した「SGマーク」

「SGマーク」は製品安全協会が規定したもの。

「SGマーク」には「PSCの基準を満たし、PL法に基づく損害賠償保険が付保されている製品」という意味があり、「PSCマーク」とセットでヘルメットの横側に貼付されていることが多い。

ヘルメットの横側に並んで貼付された「PSCマーク」と「SGマーク」は、「PSCマーク=公的に安全性が認められた証」、また「SGマーク=PSCマーク付きの製造物に関する賠償責任を明示」という関連性を持っているのが特徴。「PSCマーク」と「SGマーク」が貼付されたヘルメットは、一般公道でも安心して使用できるタイプとして認識されている。

様々な製品の標準化に適用される「JIS規格(日本工業規格)」

バイク用乗車ヘルメットの場合、「JIS規格」のマークはヘルメットの内側に貼付されているのが定番。

バイク用乗車ヘルメットだけでなく、国内の様々な製品の標準化に用いられている「JIS規格(日本工業規格)」。JIS規格は日本の工業標準化の促進を目的とする、「工業標準化法」に基づいて制定されている国家規格としても有名だ。

バイク用乗車ヘルメットには、「衝撃吸収性試験」「耐貫通性試験」「あごひも試験」「ロールオフ(回転離脱性)試験」などを実施して安全性を検証。

2017年4月には、上記「PSCマーク」のPSC安全基準が改正。現行のJIS規格の基準と同等になり、すべてのヘルメットが「JIS規格」レベルの安全性を要求されるようになった。

世界で最も信頼の高い、最上級の国際規格「SNELL(スネル)規格」

「SNELL(スネル)規格」はヘルメットの安全性確保のために活動を行っている、アメリカの「スネル財団」という民間の試験機関によって定められている任意の規格。国内では「JIS規格」と並び、広く知られているのが特徴だ。

「SNELL(スネル)規格」は、国が定める強制規格(取得しなければ販売できない規格)ではないが、世界で最も信頼できる、バイク乗車用ヘルメットにおける最上級の国際規格として有名。5年ごとに規格が見直され、その度に厳しくなるという、他にはない制度を設けている。

衝撃吸収性試験では、他規格よりも高い位置からヘルメットを落下。また「JIS規格」と同様、同一ポイントに対して2回衝撃を加えるなど、比較的高いエネルギーに対して厳しい試験を実施。

MFJ公認レース出場時に必要な「MFJマーク」

「財団法人日本モーターサイクルスポーツ協会(MFJ)」公認のレースに参加する場合。MFJの規定に適合していることを示す、「MFJマーク(公認または特選)」のステッカーが貼付されたヘルメットの着用が必要。

「MFJ公認または特選」の安全基準は「JIS」に準拠。またロードレースに関しては、さらに「3kgの鋼製ストライカを300cmの高さから落下させ、ストライカ先端が人頭模型に接触してはならない」という項目が追加されている。

まとめ

バイク用乗車ヘルメットには様々な規格や要件があり、目的や用途によって必要となる機能や性能に違いあり。もっとも重要なのは、ライダー自身が安全のために正しい知識を持って、自分に合った製品を選ぶこと。

正しいヘルメット選びは、自分自身を守ることに直結。購入時はバイクの排気量・種類・用途に合わせ、パーフェクトなヘルメットをセレクトすることが重要だ。


 

 

キーワードで検索する

著者プロフィール

北 秀昭 近影

北 秀昭