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新型のロングストロークエンジンを搭載するモデルチェンジが行われたホンダ・グロム。5速ミッションの採用と相まって、より走りが楽しいモデルになった。この新型エンジン用チューニングパーツはまだ少ないが、スペシャルパーツ武川から待望のボアアップキットが登場した。その名もS-ステージαボアアップキットで、ノーマル比+20ccの145cc仕様となっている。
ボアアップキットは専用シリンダー・ピストン・ピストンリング・スポーツカムシャフト・各種ガスケット・インジェクションコントローラーで構成されている。これらが含まれ販売価格は13万3760円(税込)となっているので、DIYで組み付けられる人には魅力的な価格といえそうだ。ただし、プロに組み付けてもらうのが確実で、間違えて組んでしまうと痛い出費になることもある。
ボアアップキットの特徴
シリンダーを固定するスタッドボルトの間隔が狭いため、十分な強度を確保しつつボアを広げるには限界がある。上写真の右に写っているのが専用シリンダーで、これ以上広げると強度が確保できなくなりそうだ。この専用シリンダーにはシリンダー温度を取り出せるセンサー用の穴も空いている。追加メーターの取り付けによりエンジンの温度をモニターできるから安心材料になるだろう。
ピストンは鋳造による製品で、スカート長やバルブリセスがしっかり計算されている。このシリンダーとピストンによりボア径は純正の50mmから54mmに拡大される。もちろんピストンリングも付属している。
キットに付属するのはN-10と呼ばれるスポーツカムシャフト。ボアアップしても街乗りが楽しめる仕様とされているが、さらに高性能を狙えるN-20もオプションで用意されている。N-10カムシャフトにはデコンプ機能がないものの、5500円でオートデコンプを取り付けることもできる。購入時に希望するとエンジン始動が楽になるはずだ。
ボアアップすると純正のECUでは正しくエンジンが回転してくれない。そこで必要になるのがインジェクションコントローラーで、キットにはFIコンが付属する。各種マップが書き込まれているのでキットだけでなく吸排気系を変更しても対応してくれる。
DIYで組み付ける際に最も注意したいのがコントローラーの差し込み。純正ECUを外してFIコンのカプラーと接続すれば良いだけなのだが、純正EUCを抜いた時にカプラー内の端子が出てしまう場合がある。上写真で上下に並べているのがカプラー内で、上に写っている状態だと端子が出ていることがわかる。
端子が出たままコントローラーのカプラーを接続すると端子などが破損して使えなくなってしまう。もし壊した状態で通電させるとメインハーネスの引き直しという大惨事につながるので、絶対にカプラー内を確認してから装着しよう。また端子が壊れた場合、SP武川での修理代は2万円ほどかかることになる。もし端子が出てしまっている場合は、上写真の丸で囲った部分4カ所をラジオペンチなどで少しずつ引き出そう。一度に無理な力を加えず徐々に作業することが肝心だ。
ボアアップキット装着車を試乗!
ボアアップキットにプラスして吸排気系を変更したデモ車にモトチャンプのライター、HIDE川島が試乗している。特筆すべきは上り勾配などで3速や4速に固定したままでもグイグイとトルクが盛り上がりオートマのように走れてしまうこと。ノーマルとは比較にならないほどトルク・出力とも上がっていることが感じられる。もちろんフルスロットルを与えると猛然とダッシュしてくれる。排気量が拡大されたことで高速道路も走れるようになるが、これだけの性能であれば高速走行時に不足ない加速を示してくれるだろう。
ご覧のようにボアアップキットに吸排気パーツを装着した場合や、マフラーだけの場合、さらにはノーマル状態での性能比較を行なっている。性能曲線を見れば一目瞭然、ボアアップキットによる効果は絶大だ。ただし、やはりマフラーくらいは変更してキットの良さをさらに引き出したいところ。またオプションのN-20カムの高回転での伸びは圧倒的だが、中間トルクなどが細るため街乗りメインなら標準のN-10カムがいいだろう。
では街中ではどうだろう。片側2車線の幹線道路を周囲の流れに合わせて走ると、例えば4速や5速固定でスイスイ走れてしまう。トルクが向上していることが感じられる場面で、追い越しなどが必要な場合でもスロットル操作だけで事足りてしまうほど。ピークパワーだけでなく日常的な使い方でも効果が得られるのだ。こうした特性は長距離ツーリングなどでの疲労が少なくて済むので、走り続けることが苦痛でなくなるはず。しかもいざスロットルをワイドオープンにすれば、圧倒的な加速力を披露してくれる。費用対効果は抜群といえそうだ。