ホンダの新型CL250に乗った! ヒット作になりそうな予感がプンプンだった。

EICMA2022で初公開されたホンダの新型スクランブラー、CL250がいよいよ日本でもリリースされた。クルーザーのレブル250をベースとしながら、普遍的なスクランブラースタイルを見事に構築している。コンセプトは「Express Yourself(あなた自身を表現しよう)」で、感度の高い若者世代に向けて開発されている点はレブル250に共通する。まずはファーストインプレッションをお届けしよう。

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

ホンダ・CL250……621,500円(2023年5月18日発売)

燃料タンクからシートにかけての水平基調としたプロポーション、タフなイメージを与えるセミブロックパターンのタイヤ、そして特徴的なアップマフラーなどで構成されたCL250のスタイリング。デュアルパーパスのCRF250Lと車両価格が同一で、車重は31kg重い172kgを公称する。
レブル250
CL250

ベースとなったレブル250と並べると、基本骨格やエンジンが共通であることが分かるだろう。ホイール径は前後16インチからフロント19インチ/リヤ17インチへ。ホイールトラベル量はフロントが140→150mm、リヤは95→145mmへとそれぞれ伸長しており、シート高は690mmから790mmへ。なお、レブル250は61万500円なので、差額はわずか1万1000円だ。

CRF250Lカムと専用マフラーで化けた心地良いエンジンフィール

2017年4月にホンダからリリースされたレブル250。エンジンは空冷でもなければVツインでもなく、フレームはクレードルタイプでもない。クルーザーのセオリーから外れたそのボバー系ニューモデルは、フタを開けてみれば軽二輪クラスの販売台数ランキングにおいて、5年連続でトップを独走している。

そんなレブル250をベースに開発されたのが、スクランブラースタイルのCL250だ。ネーミング自体は、ドリームCL72スクランブラーの後継として1968年に登場した「ドリームCL250」で使われており、およそ半世紀ぶりに伝統の車名が復活したことになる。

さて、この新生CL250。エンジンはレブル250がベースの249cc水冷DOHC4バルブ単気筒で、これは2011年に登場したCBR250Rに端を発する名機だ。カムシャフトを低中回転域重視のCRF250L用に変更しており、最高出力はレブル250の26psから24psへと微減。一方で最大トルクは22Nmから23Nmと微増しており、このスペックからも市街地での扱いやすさを重視していることが伝わってこよう。

そのエンジンを始動すると、シングルらしいパルス感を伴った排気音が耳に届く。アイドリング時のサウンドは耳障りにならない程度の優しい音量で、これらな長い信号待ちでも疲れないだろう。

非常に操作力が軽いクラッチレバーを握り、ローにシフトして発進する。確かに低中回転域はなかなかに力強く、172kgの車体をスタタタッという蹴り出し感を伴いながら加速させていく。タコメーターがないので具体的な数値は不明だが、特に感心したのはアイドリングの少し上から始まる領域、イメージとして3,000~5,000rpm付近のトルクの豊かさだ。これはCRF250L用のカムシャフトに加え、アップマフラーによってサイレンサーまでの管長を稼げたことによる効果が大きいとのこと。スロットル低開度からグングンと力が湧いてくるだけでなく、単気筒らしいパルス感も伴っており、4輪の流れに乗って郊外を流しているだけでも楽しいのだ。

ここ最近、令和2年排出ガス規制後のレブル250やCRF250Lに試乗しているが、同系のシングルエンジンを積んだモデルの中ではこのCL250が最も味わい深いと断言できる。ライディングモードの切り替えやトラクションコントロールなど、ライダーエイドな電子デバイスは一切採用されていないが、シンプルな分だけエンジンとの対話が濃いというのも魅力の一つだろう。


まったり系のハンドリングと乗り心地の良さに癒やされる

続いてはハンドリングだ。一般的なロードスポーツのホイールトラベル量は120~130mmなのに対し、CL250はスクランブラーらしくフロント150mm、リヤ145mmとやや長めに設定されている。それでいてシート高をホンダ・GB350/Sの800mmより低い790mmに抑えたのは、開発スタッフの努力の賜物だ。

発進してまず驚かされるのは微速域での安定性だ。フロントタイヤが変に切れ込んだりせず、それでいてスタート直後の右左折もスムーズに旋回できる。メインフレームはレブル250と共通だが、レブル250はキャスター角28度に対してフォーク角を30度に寝かせるというスランテッドアングルを採用。これに対してCL250は、フレームを1度起こしてキャスター角を27度とし、スランテッドアングルを廃止。トレール量をレブル250の110mmに限りなく近い108mmとして、ニュートラルなハンドリングを作り出しているのだ。

車体の傾きに対してフロントタイヤが穏やかに内側を向くという、バンク角主体のハンドリングはどこか旧車的でもあり、懐かしさを覚えるベテランがいても不思議ではない。ホイールトラベル量は多めではあるが、加減速で発生する車体のピッチングは少なめで、その余力は路面からの衝撃吸収に使われているといった印象だ。

フロントブレーキはシングルディスクだが、絶対制動力は十分以上でコントロール性も優秀だ。ダブルディスクにすると、それに見合うようにフロントフォークのスプリングレートを上げる必要があり、乗り心地に影響することから却下されたとのことだが、それが正解であったことは路面追従性の良さからも納得できる。

レブル250と同等以上の扱いやすさを持ちながら、さらにダートにも足を踏み入れられるように開発されたCL250。ホイールトラベル量が長いうえにシートの座面が広いので乗り心地がよく、単気筒のパルス感を味わいながらどこまでも走り続けたくなる、そんな味わい深いマシンだ。同時に開発された純正アクセサリーを組み合わせることで、クロススタイルやツアースタイルなど方向性を大きく変えられるのも魅力であり、これはヒット作となりそうだ。


ライディングポジション&足着き性(175cm/67kg)

シート高は790mm。ナローシェイプのレブル250とメインフレームを共有しているため、足着き性は良好だ。座面が30mm高くなる純正アクセサリーのフラットシート(1万2540円)は、太ももの内側が干渉するエッジのシェイプがなだらかなので、標準装着シートよりも足着き性が良いと感じるほど。加えて、相対的にステップバーとの距離が遠のくので膝の曲がりが緩やかになるうえ、フラットな座面による着座位置の自由度の高さ、クッション性の向上などにより、快適性が大幅にアップする。

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