他のGSX-Rシリーズとエンジンやフレームに共通点はなくとも。スズキGSX-R125はかなり良かった!|1000kmガチ試乗2/3

長旅ができないわけではないけれど、GSX-R125が真価を発揮するのは、ワインディングロードをメインに据えたロングすぎないツーリング。このバイクはスーパースポーツなのだから、それはまあ当然のことだろう。

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)

スズキGSX-R125……453,200円

2023年型の車体色は、ヨシムラの耐久レーサーを思わせるストロンガーレッド×タイタンブラック、スズキワークスカラーのトリンプブルーメタリック、シックな雰囲気を感じるタイタンブラックの3種。

一泊二日・約700kmの旅で感じたこと

GSX-R125のツーリング能力を探る一泊二日の旅で、僕が目的地に設定したのは長野県の野沢温泉。東京都西部の自宅からの最短距離と所要時間は、ネットで調べると244km・6時間21分だが、実際の道中では要所で撮影を行ったりお気に入りのワインディングロードに寄り道したりしたため、総走行距離は約700km、自宅⇔宿の所要時間は初日:16時間/2日目:9時間に及んだ。

このツーリングで最も印象的だったのは、峠道でのスポーツライディングがずっと楽しく、飛ばせない状況になってもあまりストレスを感じなかったこと。いや、そういった表現は過去の当企画で何度か使ったような気がするので、以下にもうちょっと突っ込んだ説明をしよう。

乗り手が自信を持って操作できる安定感

第1回目で述べたように、GSX-R125の車体は軽くて小さくて細く、ハンドリングはヒラヒラ軽快で、それでいて軽量車で時として感じる落ち着きの悪さや、外乱に弱そうな気配は一切なかった。その背景には、前後重量配分や重心の絶妙な設定がありそうだし(念のために記しておくと、1300mmの軸間距離はライバル勢より格段に短く、25.5度/93mmのキャスター/トレールは現代の125ccスポーツでは平均的な数値)、細身の前後タイヤが接地感の変化をわかりやすく伝えてくれることや、ライダーと車両が接する部分のフィット感が良好なことも、僕としては安心感に寄与する要素ではないかと思う。

いずれにしてもGSX-R125は、単にヒラヒラ軽快なだけではなく、乗り手が自信を持って操作できる安定感を備えていて、だからこそ飽きることなく、スポーツライディングが楽しめるのだ。また、コーナー進入時に感じる前輪荷重の自然な高まり、脱出時にリアから伝わる瑞々しいトラクションなども特筆すべき要素で、そういったフィーリングは歴代GSX-Rシリーズに通じるところがあった。改めて言うのも何だが、エンジンやフレームに共通点がなくても、このバイクはちゃんとGSX-Rなのだ(ただし、高回転指向の単気筒は消音が難しいのか、ここぞという場面での排気音の盛り上がりはいまひとつだった)。

意外な環境適応能力

続いて、飛ばせない状況でもあまりストレスを感じない理由を説明すると、僕としてもその印象は意外だったのである。エンジンのパワーバンドが明確なスーパースポーツは、自分本位でアクセルのオンオフができない状況だと、イライラ&モヤモヤするのが通例なのだから。

でもGSX-R125の場合は、例えば遅い4輪の後ろを走らざるを得ない状況になったら、ちょっとモッサリしている低中回転域を使って、それはそれでという意識で走れなくはなかったし、スーパースポーツには不向きと言われている見通しが悪くて荒れた路面の舗装林道では、回転数が落ちてもアクセルを開ければすぐに7500rpm以上のパワーバンドに戻せるので、状況に対する不満は感じなかった。決して侮っていたわけではないけれど、このバイクななかなかの環境適応能力を備えていたのだ。

気になる点はあるけれど……

そんなわけで、乗れば乗るほど楽しくなったGSX-R125だが、すべてがパーフェクトだったわけではない。まずライディングポジションはやっぱりロングラン向きではないようで、2日目の途中からは、首と手首、尻にジンワリ系の痛みが発生した。また、初日の時点でやや硬めの印象を抱いていたリアショックは、距離が進むにつれて路面の凹凸を通過した際の衝撃が厳しくなり、腰に負担を感じるようになったので、とりあえずプリロードを弱くしようとしたら、残念ながら調整機構はナシだった。

もっとも初日の宿に到着した時点では、自宅を出て16時間が経過していたにも関わらず、心身はそんなに疲労していなかったのである。だから一般的なツーリングなら、2日目でもツラさは感じなかったかもしれないし、スーパースポーツというキャラクターを考えれば、ロングランで身体がある程度痛くなるのは止むを得ないとも思う。ただし僕がこのバイクのオーナーになったら、リアショックは最低でもプリロード、できれば伸び側ダンパーの調整機構を備えたアフターマーケット製に変更したいし、リアショックの見直しで理想の特性が実現できなかったら、次なる手段としてシートの肉厚化を考えるだろう。

まあでも、GSX-R125にそういった不満を述べるのは、的外れなのかもしれない。何と言ってもこのモデルは、運動性重視のスーパースポーツで、スズキは快適性を意識したライトウェイトシングルとして、GSX-R125のネイキッドバージョンとなるGSX-S125(ハンドルはバータイプで、シート前部のウレタンはGSX-R125より厚そう)、さらにはジクサーSF250(ハンドルがセパレート式でも乗車姿勢はアップライトで、シートは十分な肉厚を確保)を販売しているのだから。もちろんロングラン指向のライダーは、その2台を選んだほうがいいと思う。

ではGSX-R125がどんな用途に適しているのかと言うと、ワインディングロードがメインのショート……に限らず、ロングすぎないツーリングだ。そういう使い方なら、身体の痛みを感じることなく、スポーツライディングの醍醐味が心行くまで満喫できるに違いない。ん?、その表現だとスーパースポーツ全般を評価しているみたいだが、今回の試乗で僕は、125ccクラスならではの美点、そして同じ排気量のライバル勢とは一線を画するGSX-R125の乗り味に、しみじみ感心することになったのである。

かなり長めのリアフェンダーは、ヨーロッパとアセアン地域の趣向を意識した結果。とはいえ、この構造に違和感を抱くオーナーが多いのか、アフターマーケット市場では数多くのリアフェンダーレスキットが販売されている。

主要諸元

車名:GSX-R125
型式:8BJ-DL32D
全長×全幅×全高:2000mm×700mm×1070mm
軸間距離:1300mm
最低地上高:160mm
シート高:785mm
キャスター/トレール:25.5°/93mm
エンジン形式:水冷4ストローク単気筒
弁形式:DOHC4バルブ
総排気量:124cc
内径×行程:62.0mm×41.2mm
圧縮比:11.0
最高出力:11kW(15PS)/10500rpm
最大トルク:11N・m(1.1kgf・m)/5500rpm
始動方式:セルフスターター
点火方式:フルトランジスタ
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング
ギヤ・レシオ
 1速:2.923
 2速:1.933
 3速:1.476
 4速:1.217
 5速:1.045
 6速:0.925
1・2次減速比:3.285・3.214
フレーム形式:ダイヤモンド
懸架方式前:テレスコピック正立式φ31mm
懸架方式後:リンク式モノショック
タイヤサイズ前:90/80-17
タイヤサイズ後:130/70-17
ブレーキ形式前:油圧式シングルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:137kg
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:11L
乗車定員:2名
燃料消費率国交省届出値:45.8.0km/L(2名乗車時)
燃料消費率WMTCモード値・クラス2:43.5km/L(1名乗車時)

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著者プロフィール

中村友彦 近影

中村友彦

1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車…