スズキGSX-R125で1000km走って見えてきたこと。スーパースポーツ性の本気度をチェック!|1000kmガチ試乗1/3

ワインディングを走っている最中にふと思い出したのは、かつてのスズキが販売したNZ250やRG125Γだった。世間ではGSX250RやジクサーSF250の弟分?と誤解している人がいるようだけれど、GSX-R125は昨今では貴重な、本気の小排気量スーパースポーツなのだ。

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)

スズキGSX-R125……453,200円(消費税込み)

現代の流行であるレイヤー=階層構造をあえて採用しなかった外装類のコンセプトは、スリーク&アグレッシブボディワーク・デベロップド・ウインドトンネル。125ccクラスでは珍しく、最終的な仕様は風洞実験を行って決定。

小排気量スーパースポーツの理想を徹底追求

2016年秋に発表され、2018年から日本での販売が始まったGSX-R125は、以前から当企画で取り上げたいモデルだった。その理由は現行車では唯一無二の魅力が、まだまだ世間で広まっていないような気がしたから……かなあ。

これまでの試乗で僕が感じたGSX-R125の最大の美点は、小排気量スーパースポーツの理想を追求した結果としての軽さと小ささ。などと書くと、125ccなら軽くて小さいのは当然じゃないかとツッコミが入りそうだが、現在の日本で販売されている他の125ccマニュアルミッション+前後17インチ車、ホンダCB125R、KTM RC125・125デューク、ハスクバーナ・スヴァルトピレン125などに、250cc以上の兄貴分が存在するのとは異なり、GSX-R125の兄弟車は主にアセアン地域用として開発された150ccだけなのだ。以下に記す車重/軸間距離を見れば、このモデルの素性が理解できるだろう(CB125Rの意外な軽さはておき)。

●GSX-R125:137kg/1300mm

●CB125R:130kg/1345mm

●RC125:147kg(燃料は除く)/1343mm

●125デューク:143kg(燃料は除く)/1375mm

●スヴァルトピレン125:146kg(燃料は除く)/1357mm

ちなみに、今年に入ってヤマハが日本への導入を決定したYZF-R125も、GSX-R125と同様に兄貴分は150ccのみだが、車格はやや大きく、ヨーロッパ仕様の車重/軸間距離は144kg/1325mm。また、1クラス上の所有感を意識してか、ライバル勢が倒立フォークと幅広のタイヤ(フロントは110mmで、リアは140・150mm)を装備するのに対して、GSX-R125/150は車格とパワーに見合った……と思える、φ31mm正立フォークとフロント:90/80-17・リヤ:130/70-17のタイヤを採用している。いずれにしてもこのモデルは、ライバル勢とは異なる姿勢で、125/150ccクラスでしか実現できない運動性能を真摯に追及しているのだ。

近年のスズキがこだわっている縦型2灯式ヘッドライトとテールランプ、ナンバープレート灯はLED。ウィンカーは昔ながらのフィラメント球。

パワーバンドが明確だから楽しい

ダウンドラフト吸気やメッキシリンダーなど、現代の技術を随所に導入したDOHC4バルブ水冷単気筒エンジンは、アセアン向けのFU150をベースにして開発。

一方のエンジンに関しては、15psの最高出力はライバル勢と同じでも、パワーバンドが明確で、7500~11500rpmをキープして走ればかなりの速さと充実感が味わえることが、このモデルならではの魅力だと思う。逆に言うなら、低中回転域のレスポンスと吹け上がりはちょっとモッサリしているのだけれど、回転数によってエンジンキャラクターが変化する特性は、かつてのNZ250やRG125Γを思わせるところがあって、昭和の時代を知るオッサンとしては、“それでこそ小排気量スーパースポーツ‼”と思わなくもない。

もっとも、近年の125ccスポーツのパワーが15psで横並びになっているのは、ヨーロッパのA1免許を前提にしているからで、GSX-R125の場合はマフラー交換で+3ps前後の出力向上が実現できるらしい。だからノーマルは、能ある鷹がツメを隠した状態……と言えなくもないのだが、アフターマーケットのフルエキゾーストが5~8万円前後で購入できることを考えると、僕個人としては十分な伸びシロを備えた魅力的なエンジン、と解釈したいのである。

ところで、過去にGSX-R125でサーキットを走った際に、ちょっとビックリしたのは最高速だった。近年の仕事で接する機会が多い125ccクラスの車両、国内外のスクーターやホンダ製水平単気筒の場合は、100~110km/h前後が普通なのに、GSX-R125はその領域をあっさり通り越し、メーター読みでは135km/hをマーク。素性が違うのだから当然と言えば当然なのだが(125ccスクーターの最高出力は11~12ps近辺が一般的で、ホンダの125cc水平単気筒は9~10ps)、高速道路が余裕でOK?と思える速さを実感した僕は、15psって侮れないんだな……と感じたのだ。

通勤快速としても使えるフレンドリーさ

さて、ここまでの文章では運動性を強調してしまったが、今回の試乗で久しぶりにGSX-R125と対面し、まずは日常の足としての感触を探った僕は、このバイクに通勤快速として使えるフレンドリーさが備わっていることを認識。と言っても、セパレートハンドルはかなり低めにセットされているので、スーパースポーツに不慣れなライダーは上半身の前傾に厳しさを感じそうだが、軽さと小ささに加えて、幅の狭さ(バックミラーの左右への張り出しは大きいものの、全幅はホンダ・スーパーカブと同等の700mm)、そして十分なハンドル切れ角(燃料タンクカバー前側左右に凹みを設けることで、アップタイプのセパレートハンドルを採用するジクサーSF250と同じ左右35度を確保)のおかげで、混雑した市街地をスイスイ走れる。

さらに言うなら、前述したライバル勢より30~50mmほど低い785mmのシート高も、GSX-R125のフレンドリーさを語るうえでは欠かせない要素だ。もっとも、シート高と運動&快適性はトレードオフの関係にあって、普段の僕は低いシートに疑問を抱くことが少なくないのだけれど、スズキは昔から低いシートと運動&快適性の両立に熱心で、歴代GSX-Rシリーズは2つの要素を高次元でバランスしていた。おそらくこのモデルも、近年のGSX-R600/750/1000などと同様のスタンスで開発されたのだろう。

そういったフレンドリーさを考えると、GSX-R125はロングランにも十分対応できそうなのだが、今回の試乗で撮影を兼ねて、一泊二日・約700kmのツーリングに出かけた僕は、やっぱりこのバイクは、いい意味でも悪い意味でもスーパースポーツなのだな……と感じることとなった。その詳細は、近日中に公開予定の第2回目で紹介したい。

ツインスパー風の樹脂製カバーを設置しているものの、フレームはスチール丸パイプを用いたダイヤモンドタイプ。Y字5本スポークはジクサーSF250と同様のデザインだが、リム幅は細身のフロント:2.15/リヤ:3.50(ジクサーSF250はフロント:3.00/リヤ:4.00)。

主要諸元

車名:GSX-R125
型式:8BJ-DL32D
全長×全幅×全高:2000mm×700mm×1070mm
軸間距離:1300mm
最低地上高:160mm
シート高:785mm
キャスター/トレール:25.5°/93mm
エンジン形式:水冷4ストローク単気筒
弁形式:DOHC4バルブ
総排気量:124cc
内径×行程:62.0mm×41.2mm
圧縮比:11.0
最高出力:11kW(15PS)/10500rpm
最大トルク:11N・m(1.1kgf・m)/5500rpm
始動方式:セルフスターター
点火方式:フルトランジスタ
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング
ギヤ・レシオ
 1速:2.923
 2速:1.933
 3速:1.476
 4速:1.217
 5速:1.045
 6速:0.925
1・2次減速比:3.285・3.214
フレーム形式:ダイヤモンド
懸架方式前:テレスコピック正立式φ31mm
懸架方式後:リンク式モノショック
タイヤサイズ前:90/80-17
タイヤサイズ後:130/70-17
ブレーキ形式前:油圧式シングルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:137kg
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:11L
乗車定員:2名
燃料消費率国交省届出値:45.8.0km/L(2名乗車時)
燃料消費率WMTCモード値・クラス2:43.5km/L(1名乗車時)

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著者プロフィール

中村友彦 近影

中村友彦

1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車…