スズキ・ジクサーSF250の親しみやすさは、ヤマハ・セローに近いものを感じた。|1000kmガチ試乗2/3

ソノ気になったときの旋回性はなかなかシャープで、エンジンのパワーバンドを維持して走るのは相当に楽しい。もっともジクサーSF250の本当の価値は、さまさまなライダーや環境に適合できる、懐の深さにあるのかもしれない。

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)

スズキ・ジクサーSF250……481.800円

1345mmのホイールベースは、日本で正規販売されている現行250ccフルカウルスポーツでは最短。

ちょっと高めのシートに好感触

 第1回目を改めて読み直したら、何だかとりとめのない内容だったので、今回はオーソドックスなインプレから。まずはマシンに跨った段階での印象を記すと、シート高はライバル勢より5~20mm高い800mmだから、小柄なライダーは足つき性に不満を感じるかもしれないが、スポーツライディングに寄与する上半身の程よい前傾とロングランでありがたくなる下半身の余裕は、ちょっと高めのシートのおかげなので、僕には絶妙の設定に思えた。逆に日本市場を考慮してシートを下げていたら、操縦性や快適性という面で、何らかのマイナス要素を感じたのかもしれない。

 市街地を走っての印象は、ありきたりな表現で恐縮だが、すこぶる扱いやすかった。単気筒特有の美点は特に感じられなくても、エンジンは従順で扱いやすいし、ヒラヒラと言うほどではなくても、車体の動きは十分に軽快。渋滞路ではバックミラーの左右への張り出しの多さが気になったけれど、この特性なら日常の足として大いに活躍できるはずだ。なお車体の動きに関しては、オーバーサイズの感があるフロント110/70ZR17・リヤ150/60ZR17のタイヤを、前後とも、あるいはリアだけでも1サイズ細くすれば、さらに軽快なハンドリングが実現できるのではないかと思う。

 続いては高速道路の話で、インターネットに掲載されたサーキットでのインプレを読むと、メーター読みの最高速は150km/h前後だから、法定速度上限での巡行は余裕。もっとも、スクリーンが小さいのでウインドプロテクションは抜群とは言い難いし、7000rpmを超えると徐々にハンドルやステップに微振動が出て来るので、超快適なわけではない。ただしスクリーンの小ささに関しては、後述するワインディングでの運動性能に寄与しているはずだから、安易に異論を述べるべきではない……ような気がする。

スパッ‼と表現したくなる旋回性

 ワインディングで印象的だったのは以下の2つの出来事。最初に感心したのは、よく曲がること。いや、この表現はあまりにベタすぎるけれど、ライポジや前後重量配分が絶妙で、ホイールベースが短く、エンジン幅が狭くてクランクのジャイロ効果が少ないからだろうか(スクリーンの小ささとフェアリングのスリムさも利いていると思う)、コーナー進入時に適切な動作を行えば、ジクサーSF250はスパッ‼と表現したくなるほどシャープな旋回性を披露してくれる。そしてそういった特性を引き出すことを強要して来ないところに、僕はスズキの見識を感じた。この特性なら、まったり走行でもストレスは溜まらないし、エントリーユーザーでも難しさや怖さを感じることはないだろう。

 ではもうひとつの印象的な要素は何かと言うと、調子に乗ってアクセルをガンガン開けていたら、レブリミッターが作動する機会に頻繁に遭遇したのに、それがべつにイヤではなかったこと。と言っても最初にその事態に遭遇した際は、“10000rpmで頭打ちは早すぎないか?”と思ったのだが、ワインディングでの慣れが進んだ段階でレブリミッターが作動しない領域、7000rpm近辺~10000rpm以下の維持を意識してみたら(最高出力発生回転数は9000rpm)、往年の2ストローク的で、それはそれでスゴく楽しかった。

 ただし車体と同じく、エンジンもそういう乗り方を強要してくる気配はなく、早め早めのシフトアップで低中回転域だけを使って走っていても、違和感や物足りなさは特に感じない。言ってみればジクサーSF250の車体とエンジンには、ライダーの気分や技量、走る環境などに自然に適合できる、いろいろな引き出しが備わっているのだ。

Vストローム250SXが生まれた理由

 ここからは撮影を兼ねたロングツーリングに使っての話だが、その感想を記す前に、リアショックのアジャストに触れておこう。ジクサーSF250のリアショックはスプリングが硬めで、路面の凹凸を通過するとなかなかの衝撃が尻に伝わって来る。そこで、出荷時には4になっているプリロードの設定を徐々に弱めてみたところ、最終的には最弱の1がベストとなった。ちなみに最弱までプリロードを抜くと、車両によっては峠道などで頼りなさや曲がりづらさを感じることがあるのだけれど、ジクサーSF250の場合はまったく問題ナシ。それどころか、リアの車高がわずかに低くなったことで、シート座面の前下がり感もわずかに解消されるので、僕としてはいいことづくめだった。

 そしてリアショックのプリロードを最弱にした状態で、約500kmの距離を走った僕は、行程の終盤で最上級の褒め言葉として、ヤマハ・セローのフルカウルロードスポーツ仕様?……という言葉を思い浮かべた。と言うのも、どんな状況にも柔軟に対応できることや、乗り手がソノ気になったときに明確な手応えを返してくれること、Uターンやゴー&ストップが気軽に行えること、燃費が嬉しくなるほど良好なこと、パワーの少なさが気にならないことなど、ジクサーSF250はセローとの共通点が多いのである。

 もっともこの原稿に着手する数日前に、ジクサー250(ここで言うも何だが、ジクサーSF250のネイキッド仕様)の基本設計を転用したアドベンチャーモデルのVストローム250SXが国内で発表され、そのモデルがどことなくセロー的なので、今の時点でセローの名前を出すのは微妙かもしれない。でもまあ、そもそもジクサー250が前述したオールラウンダーとしての資質を備えていたからこそ、スズキはセロー的なモデルを作ったんじゃないだろうか?

 そんなジクサー250とジクサーSF250は、世間の一部ではエントリーユーザー向きと言われているようで、確かに、そういったライダーにオススメしやすい特性ではある。とはいえ今現在の僕は、経験豊富なベテランでも、このバイクは相当に楽しめるんじゃないかと感じているのだった。

※近日中に掲載予定の第3回目では、筆者独自の視点で行う各部の解説に加えて、1234kmを走っての実測燃費も紹介する。

後輪のガードは非常に厳重。一般的なリアフェンダー、チェーン用と一体式の前側カバーに加えて、スイングアームマウント式フェンダーも装備。

主要諸元

車名:ジクサーSF250
型式:2BK-ED22B
全長×全幅×全高:2010mm×740mm×1035mm
軸間距離:1345mm
最低地上高:165mm
シート高:800mm
キャスター/トレール:24°20′/96mm
エンジン形式:油冷4ストローク単気筒
弁形式:OHC4バルブ
総排気量:249cc
内径×行程:76.0mm×54.9mm
圧縮比:10.7
最高出力:19kW(26PS)/9000rpm
最大トルク:22N・m(2.2kgf・m)/7300rpm
始動方式:セルフ式
点火方式:フルトランジスタ点火
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング
ギヤ・レシオ
 1速:2.500
 2速:1.687
 3速:1.315
 4速:1.111
 5速:0.954
1・2次減速比:3.086・3.076
フレーム形式:ダイヤモンド
懸架方式前:テレスコピック正立式φ41mm
懸架方式後:スイングアーム・モノショック
タイヤサイズ前:110/70R17
タイヤサイズ後:150/60R17
ブレーキ形式前:油圧式シングルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:158kg
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:12L
乗車定員:2名
燃料消費率国交省届出値:45.0km/L(2名乗車時)
燃料消費率WMTCモード値・クラス1:37.3km/L(1名乗車時)

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著者プロフィール

中村友彦 近影

中村友彦

1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車…