【ゲリラ豪雨に備える】バイクは道路の冠水にどこまで耐えられる?

局地的な豪雨に見舞われて道路の排水が追い付かず、道路が池のように冠水。また線状降水帯が発生して河川が氾濫し、道路が池のように冠水。昨今の日本の夏は異常気象により、全国各地の道路が壊滅的な被害を受けている。もしもバイクやクルマで移動中、目の前の道路が冠水してしまった場合。咄嗟の判断を迫られるのが「このまま突き進んでも大丈夫か?」はたまた「引き返すべきか?」ということ。ここでは道路が冠水した時の、“バイクの限界点”をリサーチしてみた。
REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)

もしもアナタがバイク(下記右側の白いスクーター)で移動中、局地的なゲリラ豪雨に遭遇。路肩にバイクを停め、しばらく屋根のあるところに避難していたが、激しい雨は一向にやむ気配がない。道路の排水が間に合わず、水かさは徐々に増加。目の前の道路が瞬く間に冠水し、池のような状態になっていく。かなりマズい状態……。

この場合、アナタはどのような行動に出ますか? 1~3で答えてください。

1:水かさがさらに増す前に、とりあえず帰れるところまでバイクで移動する
2:エンジンが始動するうちに、少しでも冠水のない高台へ避難する
3:自分ではどうすることもできないので、この場所に留まって雨がやみ、水位が下がることを祈り続ける

水没の加減によっては、廃車となる可能性も……

アナタの愛車である白いスク―ターは、現況フロントがディスクキャリパー下まで浸かった状態。推測するにこの状態だと、まだ修理代がかからない範囲。つまりギリギリのところで、何とか走行できる範囲だと思われます。

もしもさらに水かさが増し、ステップボードのあたりまで水位が上昇してしまった場合。バッテリー周り、マフラー、駆動系、ブレーキ、エンジンオイル、ホイールベアリング、スピードメーターギア、ECUなどの点検が必要になる可能性大。点検代と修理代は~数万円程度が予測されます(パーツ代は含まず/あくまでも目安)。もしもエンジン内に水が浸入した場合、パーツ代を含め、点検代と修理代はさらに膨らむでしょう。

水かさがさらに・さらに増し、愛車の半分が水没した場合。上記に加え、各種エンジン系や電装系などの多くが被害を受け、点検・修理が必要。水没していた時間・水の種類(海水か泥水か等々)によって内容は変わりますが、一般的にこの場合はレストアと同様の作業が必要となり、点検代と修理代は大雑把に見積もっても10万円を超える可能性大(パーツ代は含まず/あくまでも目安)。最悪の場合は点検代・修理代・パーツ代が車両価格を上回り(買い換えた方が安い)、廃車となります。

目前の道路が冠水した場合は走行を諦め、即座に引き返すべき

上記を踏まえた上で、改めて問います。

写真の場合、アナタはどのような行動に出ますか?

1:水かさがさらに増す前に、とりあえず帰れるところまでバイクで移動する
2:エンジンが始動するうちに、少しでも冠水のない高台へ避難する
3:自分ではどうすることもできないので、この場所に留まって雨がやみ、水位が下がることを祈り続ける

予測するに、ここまで冠水すると、恐らく他の道もここと同じくらい、もしくはそれ以上冠水している可能性が充分あります。このため、1はかなり無謀な行為であるといえます。

上記写真の場合、エンジン、バッテリー周り、マフラー、駆動系、ブレーキ、エンジンオイル、ホイールベアリング、スピードメーターギア、ECUは、ギリギリのところで水没していません。

雨がやみ、水位が下がることを祈りつつ、エンジンが始動するうちに、冠水のない少しでも高いところへ移動する。また、もしも走行中、目前に写真の光景が広がっていた場合は、即座に引き返す。

今後の点検代と修理代、また身の安全の確保を総合的に判断した場合、筆者は恐らく2の行動に出ると思われます(もちろん状況により、身の安全を最優先するため、バイクを置いて逃げる等々、別の行動をとる可能性もあります)。

オフロードバイクやアドベンチャーバイクは道路の冠水に強い?

バイクを屋外で保管する場合、バイクカバーは必需品。これは雨風や紫外線からバイクをガードするため。バイクは雨風にさらされて走行する乗り物ですが、“バイクの中に対する”水の侵入には非常に弱いのが特徴です。

水の侵入に弱い箇所としては、エンジン内部、マフラー内部、バッテリー・各種配線・基盤・コンピューターなどの電気系統、フューエルインジェクション内部、エアクリーナー内部、ベアリングなどの可動部等々が挙げられます。

もしも電気系統が水に浸かり、メインスイッチをONにした場合。ショートを起こし、発火の危険があります。またエンジン内部に水が浸入すると、エンジン内部の各パーツはいとも簡単に破損。塩分を多量に含んだ海水の場合は、あっという間に錆びや腐食が進みます。

アウトドアやキャンプにも人気のホンダ CT125・ハンターカブ。エンジン下部に悪路走行向けのエンジンガードを装備し、マフラーはアップタイプを採用。
ホンダ CT125・ハンターカブの吸気孔入口(矢印)。エンジン内部への地面からの水やホコリの侵入を阻止するため、吸気孔をリアキャリア部に設置。

各部の破損を防ぐため、バイクで冠水路の走行は避けるべし

道路の冠水に少しでも強いバイクを挙げるとすれば(といっても限界がありますが)、オフロードタイプやアドベンチャータイプでしょう。大径ホイールを履き、エンジンの搭載位置(最低地上高)を上げ、地面から跳ね上がる異物の侵入に強いアップマフラーを装備したオフロードタイプやアドベンチャータイプは、ロードタイプやスクーターに比べ、路面からの水が浸入しにくく、悪路での走破性も高いのが特徴。

とはいえ高額な修理代、後々の不具合発生、また身の安全確保を鑑みても、バイクで冠水路を走行することはNG。身動きがとれず、脱出のために仕方なく冠水路を走った時は、雨天走行後と同様、必ず水道水でキレイに洗車し、しっかりと乾燥させることが大切です。

水没したら、任意保険(車両保険)は適用されるのか?

バイクには自賠責保険(強制保険/対人のみ)のほか、ライダーが自らの意思で加入する対人無制限・対物無制限・搭乗者・車両などの任意保険があります。

一般的にバイクの車両保険は、火災・爆発・台風・洪水・高潮等による被害は補償の対象。ただし地震や火山の噴火等による被害は、対象外となる場合があります(保険の種類や契約により異なるので、加入時は要確認)。

保管場所である居住地、頻繁に利用する道路、普段停めている職場や学校に不安がある人は、水没や冠水に対応する任意保険(車両保険)に入っておくのが安心です。

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