SP武川のスリッパークラッチをモンキー125に装着する手順! 【動画・モトチャンプTV】

シフトダウン時の強烈なエンブレを和らげてくれる画期的なパーツがスリッパークラッチ。大型車に標準装備される例が増えてきたが原付モデルの採用例はほぼなし。そこでSP武川から発売されているスリッパークラッチの装着手順を紹介しよう。
モンキー125とグロムに装着可能なSP武川製スリッパークラッチキット。

運転中のシフトミスで必要以上にギアを落としてしてしまい、強烈なエンブレを経験したことがないだろうか。またコーナー進入時にシフトダウンしてエンジン回転数を合わせられずにクラッチを繋ぎ、これまたリヤタイヤがロックしてしまったなんて経験はないだろうか。こんな時に装備されているとラクなのがスリッパークラッチ。クラッチがつながる際に必要以上のエンブレを防止するため、半クラ状態を生み出してくれる優れたパーツ。近年では純正採用されるケースも増えてきたが、その多くは大型車で原付に採用した例はほぼない。でも、エンブレが比較的強いシングルエンジンのミッション車なら、装着したいと思う人は多いだろう。そんな声に応えてスペシャルパーツ武川ではモンキー125&グロム用にスリッパークラッチキットを発売している。今回はYOUTUBE公開しているモトチャンプTVで取り上げている「SP武川製のスリッパークラッチをモンキー125に装着!」という動画をダイジェストにまとめたので、誰でも装着できるように手順を紹介してみたい。

シリンダーからカバーを外す

リヤブレーキのステッププレートごと外してヒモで吊るす。

クラッチを外す前の準備として、まずマフラーを外してエンジンオイルを抜いておこう。さらにクラッチワイヤーのタイコをエンジン側のレバーから外して、エンジンに装着されているO2センサーのコードを抜いてシリンダーフィンの間などに固定しておく。その上でリヤブレーキレバーがある右ステッププレートを外す。外したプレートはヒモで上から吊るし、ブレーキホースに負荷をかけないようにしておく。

10本のボルトを外してカバーを外す。
カバーは下側のボルトを外してオイルが出るのを待とう。

エンジン右のシリンダーカバーを外すには10本の8mmボルトを外す。ボルトは対角線上に順番に緩めていき、最後に下側のボルトを抜くと残りのエンジンオイルが垂れてくれる。ボルトを不必要にオイルまみれにしないための処置で、オイルが垂れてこなくなったら完全にカバーを外そう。

クランクケースとカバーの間にはノックピンとOリングがあるので紛失に注意。

クランクケースとカバーの固定には位置決めのためノックピン4個とOリング2個が使われている。カバーを外した拍子にポロリと外れてしまうこともあるので、紛失しないよう要注意なポイントだ。

純正クラッチを分解する

クラッチカバーはそのまま、ディスクだけ抜くためベアリングを外して内部のナットを緩める。

SP武川のスリッパークラッチキットは純正クラッチプレートをそのまま使うため、作業としてはクラッチディスクだけを抜き取ることになる。まず中央の溝に入っているベアリングを抜き取ると、その奥にナットが見える。このナットを外すことでクラッチディスクをまとめいるクラッチセンターが抜けるのだが、そのままではナットが緩んでくれない。

ナットを緩める前にリフタープレートのボルトを緩める。

ナットを緩める準備として、まずリフタープレートのボルト3本を均等に緩めておく。この時点では緩めるだけでよく、完全に外さないよう注意したい。

ステッププレートを戻してリヤブレーキを手で押しナットを外す。

ナットを緩めるための専用工具もあるのだが、今回は専用工具を使わずにナットを外す。まずミッションを4速に手で入れてから、先ほど外したステッププレートを仮止めで良いので元に戻す。さらに右手でリヤブレーキを押し込んで回り止めとしつつ左手に持った工具でナットを緩める。リヤブレーキを手で押し込んだのは車体をリフトアップしているからで、地面に置いて作業するなら足でブレーキを踏むと良い。

クラッチディスクを抜いたらリフタープレートのボルトを均等に緩めて外す。

センターナットを外せばクラッチディスクはゴソッと抜き取ることができる。この時、エンジン側に固定されたままのクラッチプレートとディスクをまとめているクラッチセンターの間にワッシャーがあるので、紛失しないように確認しておくと良い。続いて抜き出したクラッチディスクを固定しているリフタープレートを完全に外す。この時、3本あるナットを1本だけ先に外してしまうとスプリングのテンションによりプレートが折れてしまうことがある。3本のボルトは均等に緩めて外すようくれぐれも注意して作業しよう。

ディスクを清掃または交換する場合、内側3枚と外側2枚は別部品なので組み付けに注意。

クラッチディスクが分解できると、そのまま組み直すより清掃したり摩耗していたらディスクを新品に交換したくなるもの。そこで5枚あるディスクをバラバラにするのだが、組み直す時に内側3枚と外側2枚が別部品であることに注意しよう。よく見ればディスク面の溝の大きさが違うので、判別できるはずだ。

スリッパークラッチを組み込む

キットに付属するクラッチセンターへ純正クラッチディスクを移植する。

純正のクラッチセンター(写真右)から外したディスクをキット付属のクラッチセンター(写真左)へ移植する。くれぐれもディスクの内側と外側を間違えないように注意しよう。

キット付属のスライドワッシャーに注油してからクラッチカムにセット。

キットに付属するクラッチカムがスリッパークラッチ最大の特徴。ここへスライドワッシャーを組み合わせるのだが、そのまま使わず必ずワッシャーへエンジンオイルを塗布してから組み合わせよう。クラッチカムにはワッシャーが入る溝があるので位置を間違えることはないだろう。

ディスクを入れたクラッチセンターにプレッシャープレートを差し込む。

続いてディスクをセットしたクラッチセンターへプレッシャープレートをセットする。この時クラッチセンターとプレッシャープレートをよくよく見るとTAKEGAWAのロゴがあることに気づくはず。このロゴ同士を合わせるようにして組み合わせると正しい位置になる。必ずTAKEGAWAロゴを確認しよう。

プレッシャープレートへスライドカムをセットする。

手順が戻ることになるが、クラッチセンターとプレッシャープレートを組み合わせる前にプレッシャープレートへクラッチカムを入れる。ここでの注意点はプレッシャープレート側の摺動部へエンジンオイルを塗布しておくこと。クラッチカムは内部で動くため、必ずオイルを塗っておくようにしたい。

カバー内中央に純正ワッシャーを入れてから組み立てたクラッチを入れる。リヤタイヤを動かしながらだと入れやすい。

いよいよクラッチディスクたちをプレートへ戻す工程になる。まずプレート内にあった純正ワッシャーを必ず元の位置にセットしてからディスクたちを差し込むようにする。ディスクはそのままだとスムーズにプレート内へ戻ってくれないはず。プレートの溝へディスクの突起を合わせるようにするのだが、微妙にずれてしまうから、リヤタイヤを前後に動かしてみるとスムーズに入ってくれる。作業時はクラッチセンターへリフタープレートを固定していたボルトを2本入れておこう。ボルトがあることで手で掴みやすくなるので作業性がアップする。

キット付属のワッシャーを先にして純正ワッシャーを入れる。

クラッチセンターを固定するセンターナットを締め込む前に、キット付属の2ミリ圧のワッシャーを2枚入れてから純正ワッシャーを入れること。スリッパー機能のために必要な部品なので、組み忘れに要注意だ。さらにリヤブレーキをかけながらセンターナットを締め込み規定トルクで固定する。

スプリングを戻してからリフタープレートを仮止めする。

スプリングをクラッチセンターの突起に差し入れてからリフタープレートを仮止めする。この状態で少しだけテンションが掛かっているので、スプリングが正しい位置にあるかどうか確認する。さらにリフタープレートがそのままの状態で回らないかどうかも確認。もう一度リフタープレートを手で押し込んでプレートが回るかどうかも確認する。押し込んでいない状態でプレートが回ってしまったり、プレートを手で押し込んでもプレートが回らないようなら、どこかで手順を間違えていることになる。必ず確認して異常がないか点検しよう。

リフタープレート中央の溝へキット付属のワッシャーを入れてからベアリングを戻す。

クラッチの作動が確認できたらリフタープレートを固定する3本のボルトを規定トルクで締め込む。さらにキット付属のシムを2枚センターに差し入れてからベアリングを入れて交換作業は終了。あとは分解した手順と逆の順番でカバーや外したワイヤー、O2センサー、マフラーなどを組み込みエンジンオイルを規定量入れたら完了だ。

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著者プロフィール

増田満 近影

増田満

小学生時代にスーパーカーブームが巻き起こり後楽園球場へ足を運んだ世代。大学卒業後は自動車雑誌編集部…