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初出陣、ガス欠覚悟の東海道ワンウェイ・アタック!
東海道といえば、安藤広重の浮世絵シリーズ『東海道五十三次』や、十返舎一九(じっぺんしゃいっく)の『東海道中膝栗毛(とうかいどうちゅうひざくりげ)』を思い起こす人も多いだろう。江戸時代、日本の交通と物流を支える幹線道路だった東海道は、今でも東名高速や東海道新幹線が突っ走る日本の大動脈だ。国道1号もこのルート上を走っている。
ほとんどの日本人なら「お江戸日本橋、七ツ立ちぃ~♪」とかいう唱歌に聞き覚えがあるだろう。「東京・日本橋を七ツ時に出発した」という歌詞だが、かんじんの七ツ時がいつなのかはよくわからない。夜明け前には違いないものの、当時は日没と夜明けを基準に1日を12分割して時刻を決める不定時法を使っていて、今のような機械的24分割の定時法ではなかったから、この歌の「七ツ時」が現代でいう何時なのかも、季節によって変わるのだ。
連載開始にあたり、この歌にちなんで七ツ時に日本橋を出発してやろうと勢い込んでいたタカハシだったが、めっちゃ寝坊して、実際に日本橋を走り出したのは午前11時半。夜明け前どころかすっかり昼メシ前の、だらしなさ全開の旅立ちとなってしまった。
旅の相棒はホンダCT125ハンターカブ
タカハシのぐだぐだガス欠チャレンジ第1回の相棒には、いやにシャッキリ男前ワイルド系のカブ、CT125ハンターカブが選ばれた。先代のCT110ハンターカブ(通称)国内生産終了から約40年、長き眠りからめざめ、ついに復活の雄叫びをあげた新ハンターカブは、蕎麦だの新聞だのを積んでウロウロ走り回っている平凡系カブの兄弟や親戚だとはとても思えないほどガンガン走る。
スロットルを開ければ、いつでもどこでもぐりんぐりん加速するし、ちょっと手荒な曲げ方をしても、ビシッとシャープにコーナリングがキマる。あまりにもよく走るから、これならもうカブって名前じゃなくていいんじゃないの、いっそクラッチ付きの6速リターンでいいんじゃないの……とまで思わせられるガチガチのハイパフォーマンス・バイクなのだ。
しかもこのマシン、カブシリーズのご多分にもれず驚異的に燃費が良い。WMTCモードの燃費は67.2km/l。さらに普通のカブよりタンクがでかい。その豪胆不敵のツラ構えは、へたすると連載一発目からサクッと京都にたどり着けてしまい、このクソめんどくさい連載からもさっさと解放されちゃうんじゃないかという期待感をプンプン漂わせている。
東海道は京都へと続く
さて、いくらアホが売り物のタカハシだって、わざわざ高速すら走れない125ccでガス欠するまで下道を何百kmも走りたいなんてアホなことを考えるハズはない。この旅は、アフロ的ヘアスタイルがトレードマークのモーターファンBIKES編集者、通称「モジャ山田ヒゲ男君」がある日突然連絡してきたことから始まった。
「オマエにステーキをおごってやるから今すぐ来い」
上から目線でそう命じられ、のこのこ出かけたのが運のツキ。町はずれのうら寂しいステーキ〇ストで1000円の激安ステーキをおごられ、わけもわからずうっかりそれを口に入れたとたん、わずかなスキを狙いすましたようにこの企画を持ち出されてしまったのだ。
口に入れたステーキは、もう吐き出せない。こぼれた水は盆に返らず、乗りかかった舟からも降りられない。そして走り出したバイクはガス欠するまで止まらない。結局タカハシは、東京・日本橋からまだ見ぬ京都・三条大橋をめざし、フューエルタンクがカラッカラに乾ききるまで東海道をひた走る運命に身をゆだねる結果となったのでR。(←文体が昭和すぎ……)