目次
タナックス SRS-001 スマートライドモニター AIO-5 Lite……82,500円(2023年11月末発売予定)
スマホのあらゆるトラブルを解消するのがスマートモニターだ
Googleマップなど、スマホの地図アプリをナビとして利用するライダーは非常に多い。ほとんどの人はスマホ自体をハンドル周りに装着しているが、マウントの固定力不足による落下をはじめ、バイク特有の振動によるカメラ機能への悪影響、さらには昨今の猛暑による熱暴走やディスプレイのドット抜けなど、トラブルのネタは枚挙に暇がない。ちなみに筆者のスマホ(OPPO製)の場合、高温時はGoogleマップだけでなくカメラアプリも制限されてしまうので、ツーリング先でシャッターチャンスを逃したことが多々ある。
そんなスマホに関するトラブルを根底から解決してくれるのが、アップルカープレイやアンドロイドオートに対応したスマートモニターだ。Amazonなどの大手通販サイトではさまざまな種類が流通しており、すでに使っている方もいることだろう。ワイヤレス接続することでスマホのアプリをスマートモニター上で使用することができ、地図アプリだけでなく、SNSなどの通知を表示させることも可能だ。スマホ本体はバッグの中やジャケットのポケットに入れておけるので、万が一転倒などのアクシデントに遭ったとしても、スマホを破損する可能性は限りなく少なくなるのだ。
耐震性、輝度、防塵防水性など、全てがバイク専用設計だ
ライダーにとってマストアイテムになりそうなスマートモニター。タナックスはさまざまな既存製品を検証し、最終的にパートナーに選んだのが中国のCHIGEE(チギー)社だった。すでに流通しているバイク用スマートモニターの多くが、既存の4輪向け製品を転用したものであるのに対し、CHIGEE社の「AIO-5 Lite」はICチップから自社で開発したバイク専用設計というのがポイント。基板の各部には、バイクの振動によるパーツの抜け止めとして赤い接着剤が使われており、これは4輪用スマートモニターでは見られない手間だという。
スクリーンサイズは、スーパースポーツでも圧迫感の少ない5.0インチというコンパクトなもので、IPS液晶によりどの角度から見ても色の変化がほとんどないのが特徴だ。輝度についてはiPhone13と同等の1,000Nitを公称し、直射日光下においても非常に見やすい。
文字入力など細かな操作はタッチパネル上で行い、画面の切り替えなどは本体上部に並んだホットキー(物理ボタン)が担当する。ちなみに、グローブがスマホ対応品であってもタッチパネルの反応が悪いことが多々あるので、こうした物理ボタンの採用はライダーにとって非常にありがたい。
なお、物理ボタンなど可動部が増えるほど防水性が不利になりやすいが、この製品については本体、ドラレコ用の前後カメラともIP67という優れた防塵防水性を発揮。オプションのプロワイヤレスリモコンはIP68、タイヤ空気圧センサーはIP67なので、浸水によるトラブルの可能性は限りなく少ないはずだ。
CHIGEE社の代表はR1250GS乗り、だからかゆいところに手が届く
この製品、インナーフレームには一般的なアルミダイキャストではなく、チタンアルミ合金を採用している。これは重量、放熱性、剛性という3つのバランスに優れた素材だという。このインナーフレームは3軸フロート構造となっており、バイク特有の振動を軽減する。また、基板の熱を効率良く伝えるためにサーマルパッドを挟み込むなど、放熱においても万全の設計となっている。
セールス面で考えると、4輪用の方がはるかに売れる個数が多いと思われ、ゆえにバイク専用で設計することは勇気がいる判断だったに違いない。その理由についてタナックスにたずねると、何とCHIGEE社の代表(29歳!)はR1250GSに乗っており、自分が使う上で妥協のないスマートモニターが欲しかったから、とのこと。付け加えると、プログラム修正に対するCHIGEE社のレスポンスは非常に早く、「夜に送った依頼が翌朝には修正されている」ほどだという。
日本仕様はタナックスが監修、バイク用で初めて屋外Wi-Fi技適を申請
国内販売にあたり、日本仕様は全てタナックスが監修している。例えばインカムの接続方法について。一般的な製品はスマートモニター本体とインカムをBluetooth接続するが、それだとスマホからの音声案内に遅延が発生するため、地図アプリでは曲がるべき交差点を間違えてしまう可能性も。そこでタナックスは、CHIGEE社に対してインカムとスマホとのBluetooth接続を提案し、この遅延を解消したという。また、これによってインカムとスマートモニター本体のBluetoothの相性を気にしなくても良いという副産物も。
さらに、スマートモニター本体とスマホ間のデータ通信には5GHz帯のWi-Fiを使用しており、これを屋外で利用するために5.6GHz帯(W56)の技適マークをタナックスが申請している。4輪の場合は車両内が「屋内」として認められるため、5.2GHz帯(W52)の技適マークとなるが、これをそのままバイク向けに転用した製品は、正確には電波法違反となるので注意してほしい。
有料版のナビタイムもサックサク! 炎天下でも熱暴走は確認されず
内蔵ストレージ(eMMC)は32GBだ。Googleマップよりもデータ量がはるかに多いナビタイムの有料版プレミアムコースでも動作はスムーズで、これならたいていの作業においてストレスは感じないだろう。
なお、この夏は製品化に向けてタナックスのスタッフがさまざまなフィールドテストを実施。炎天下に6時間放置(!)しても熱暴走しなかったというから、バイク用としてはかなり信頼性の高い製品と言えそうだ。また、ファームウエアのアップデートにも対応しており、「CHIGEE GO」というアプリを経由して実施するとのこと。現在、このアプリは調整中であり、発売までには何らかのアナウンスがされる予定だ。
将来的には、BMWのマルチコントローラーで操作できるオプションを用意するなど、さまざまなことが計画されている。詳しい機能についてはこの記事をご覧いただくとして、リリース予定は2023年11月末なので期待して待ちたい。