イタリアで売れてるバイク、TRK502X。ベネリのミドルアドベンチャーに乗ってみた!

イタリア国内のオートバイ(スクーターを除く)販売台数で、2020年から3年連続でベストセールスを記録し続けているという、ベネリの大排気量アドベンチャーバイクが日本国内にも導入された。堂々としたフォルムはまさにアドベンチャーだ!

REPORT●横田和彦(YOKOTA Kazuhiko)
PHOTO●モルツ佐藤(SATO Malt’s)

ベネリTRK502X……968,000円(消費税込み)

ミドルアドベンチャーなのにリッターバイクに匹敵!

TRK502Xは、ベネリが満を持して投入した本格大排気量アドベンチャーモデルだ。

第一印象はとにかく“デカイ”である。500ccという排気量はミドルクラスにカテゴライズされるが、実車を目の前にすると、まるでリッターアドベンチャーモデルかと思うくらいのボリューム感。オプションのアルミ製パニア&トップケースを装備しているからという理由もあるだろうが、その迫力はかなりのものだ。

同時に頼もしさが感じられるデザインを採用していることもヨーロッパで人気がある理由なのだろう。なんといってもイタリアでは2020年からオートバイ(スクーターを除く)販売台数のトップセールスになっているという輝かしい実績を持つバイクだ。その実力が楽しみである。

日本に導入されているモデルはヨーロッパ仕様よりも30mm低いシートが装備されているが、それでもテスター(身長165cmの日本人体型)にしてみれば取り回しやまたがるときに緊張が伴う。

テスター身長:165cm/体重70kg。ローシート仕様とのことだが、片足でつまさき1/3程度が接地、両足だとさらに接地面積は減る。足の短さが恨めしい…。

ポジションは個性的。まずシートが低いため相対的にハンドルが高く感じる。また着座位置に対してステップが前にある印象。イスに座っているような感覚になりリラックスできるのだが、個人的には車体コントロールのこと考えてもう少し後ろにある方が良いなと感じた。

なめらかな発進加速と高い安定感

またがって車体を引き起こすときもそれなりの重量を感じる。気合が入る瞬間だ。セルを押すとすぐに並列2気筒エンジンが目覚める。トルクフィールに優れた360度クランクを採用していることもあり、クラッチをつなぐと巨体がスーッと動き出す。低回転域ではトルクが少し薄めかなと感じたものの、回転の上昇とともに車速が上がっていく。爆発的な加速こそしないが4000rpmを超えたあたりからアクセル操作に比例してスムーズに速度が乗っていく感覚だ。

並列2気筒ということもあって振動は少ない。回転を引っ張ると高回転域で微振動が出るシーンもあるが、常用域は至って平和。これなら長時間乗っていても疲れなさそうだ。

着座位置が低いため、ハンドル位置は相対的に高く感じる。幅はアドベンチャーモデルとしては標準的なもので操作しやすい。

なめらかなエンジン特性に加え、シフトチェンジの感触もスムーズ。そのため市街地での走行は実にジェントルなもの。アイポイントが高いこともあって、周囲の交通の流れを読んだり、景色を眺めたりしやすい。アナログ式のタコメーターの動きを見ながら気分良く走れる。

【左】フロントホイールは19インチ。スポークを採用するなど、未舗装路での走行も考慮されている。倒立フォークのインナーチューブ径は50mm。ペタルタイプのディスクローターをダブルで装備する。【右】泥はねを効率的に抑える小型のリヤフェンダーをスイングアームに装備する。リヤブレーキディスクもペタルタイプのローターだ。

個人的にはブレーキを握り始めてから効きはじめるまでが少し長いかなと感じたが、リヤブレーキの効きは自然なので慣れれば問題なく減速できる。そのあたりは好みがあるので、ブレーキパッドの交換などで理想に近付けられそうだ。

スタビリティの高さを感じるコーナーリング

ハンドリングは基本安定指向。ワインディングでも大型アドベンチャーモデルらしいおおらかで落ち着いた挙動を示す。特にクセは感じないのでニュートラルに旋回していき、ギャップで振られるシーンも少なかった。ビッグバイクと同じようなイメージで走ることができる。

ただ大きなサイレンサーが高い位置にあるなどの理由から重心位置が高めなので、低速走行時などでまれにフラつくシーンがあったが、特性を知って慣れてしまえば問題ない。

高速道路は優雅に走り抜ける

大型のウインドスクリーンは防風効果が高い。高速道路を使ったロングツーリングのときに威力を発揮する。

アドベンチャーモデルの得意分野でもある高速走行では大型のウインドスクリーンが効果を発揮。ロングツーリングでのライダーの疲労を軽減してくれる。超ハイパワーなエンジンというわけではないが、振動が少ないのでクルージングしやすい。ただ7000rpmを超えると微振動が出始めるので、長時間走るなら少し下の回転数がよさそうだ。大柄な車体は安定感がバツグンで、ゆったりとした気分で旅ができるだろう。

少し気になったのがトップ&パニアケースに荷物を満載したときのこと。重心がより高くなるので多少なりともハンドリングに影響が出そうな気がした。とはいえ長旅をするときには、この積載量が頼もしい味方になる。それがアドベンチャーモデルの特徴でもあるので、ゆったりとしたペースで周囲の景色を楽しみながら旅を楽しみたい。

STDでもフラットダートなら問題なし

せっかくのアドベンチャーモデルである。フラットダートに持ち込んでみた。重量感があるのと、装着しているタイヤが舗装路を重視したタイプなのでダートに入るまでは少し緊張する。一度横滑りしだしたら大柄な車体を制御するのにライダーのテクニックやパワーが必要となるので、無理せず進入していくと想像以上に安定感がある。ちょっとアクセルを大きめに開けるとリヤタイヤがスピン。それでも直進安定性は崩れなかった。

万一の転倒の際に車体を守るエンジンガードを標準装備。アドベンチャーモデルらしい装備だ。

アップダウンやガレ場があるようなオフロードを走るにはタイヤの選定やライダーの技術などが必要となるだろう。しかしオフを走るのは好きだがそれほど得意ではない私のようなライダーでも、ツーリング先で突然未舗装路が現れたときに焦らずに済む。

TRK502Xの良さは、リッターアドベンチャー並みの車格を持つバイクをリーズナブルに手に入れることができることだろう。トップ&パニアケースに荷物を満載し、長旅をするというアドベンチャーバイクが持つ醍醐味を手軽に味わうことができるのだ。ヨーロッパを中心に評価が高いバイクを次々にリリースするベネリからは、今後も目が離せなさそうだ。

ディテール解説

デュアルヘッドライト(ハロゲン)とLEDのデイライトを備えたフェイスデザインは力強いもの。写真はハイビーム時で、ロービームでは片側(向かって右側)のみの点灯となる。

少数派となりつつあるアナログ式のタコメーターを装備するコンビネーションメーター。ワーニングランプも見やすい。

【左】走行モードの切り替えシステムなどはないのでハンドルスイッチはシンプルなもの。何にでも使えるアクセサリースイッチがあるのは便利。【右】セルスタートボタン、ハザード、キルスイッチという一般的な装備の右側ハンドルスイッチ。グリップラバーにTRKのロゴが入っている。

ブレーキ&クラッチレバーは調整式。手が小さい筆者にとってはベストなレバー位置が設定できる嬉しい装備。

トラスフレームに搭載される並列2気筒500ccエンジンは静かでなめらかに回る。

ガソリンタンクの後端は絞り込まれニーグリップしやすい。容量は20リットルあるので航続距離は十分。

前後2ピースのシートは座り心地がよく、長時間のライディングでも疲れにくい。タンデムシートのクッション性も高い。

【左】ステップバーには微振動を吸収するラバーが装着されているが、外すとオフロードバイクのようなギザギザの滑り止めが現れる。【右】タンデムステップステーの内側には樹脂製のガードを装備。後輪の泥はねなどがタンデムライダーの足にあたりにくくなっているのが良い。

アップタイプのマフラーから吐き出されるサウンドは適度に元気なもの。

SPECIFICATION

車名(型式)  TRK 502X (P16)

全長×全幅×全高  2200mm×915mm×1480mm
軸間距離 1505mm
最低地上高 210mm
シート高 830mm (ローシート仕様)
車両整備重量 235kg
エンジン種類 水冷4ストローク2気筒
弁方式 DOHC8バルブ
総排気量 500cc
内径×行程/圧縮比 Φ69.0×66.8/11.5:1
最高出力 35kw/8500rpm
最大トルク 46Nm/6000rpm
トランスミッション形式 常時噛合6速リターン
クラッチ形式 湿式多板
フレーム形式 トレリス(格子)フレーム
懸架方式(前) 倒立テレスコピック
懸架方式(後) スイングアーム
ホイールトラベル(前) 140mm
ホイールトラベル(後) 45mm
タイヤサイズ(前) 110/80R-19
タイヤサイズ(後) 150/70R-17
ブレーキ形式/径(前) 油圧ダブルデイスク/320mmABS
ブレーキ形式/径(後) 油圧デイスク/260mmABS
燃料タンク容量 20L
燃費(WMTCモード) 24.3km/L
乗車定員 2名

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著者プロフィール

佐藤恭央 近影

佐藤恭央