水冷2気筒Vストローム250と油冷単気筒Vストローム250SX。250ccクラスに2種類存在するVストローム、買うべきはどっち?

今年8月にVストローム250SXが発売されたことで、スズキの軽二輪ラインナップはアドベンチャーモデルが2機種という状態に。先に登場したVストローム250は、販売台数ランキングで毎年上位に入るほどの人気モデルであり、250SXがデビューしたあとも極端に売り上げが落ちることはないだろう。この2台、どちらを買おうか迷っている人も多いと思われるので、両車の走りや装備の違いについて紹介したい。

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

価格差は7万7000円、車重差は27kgと大きな開きあり

今年8月に日本での販売がスタートしたVストローム250SX(56万9800円)。車体色はパールブレイズオレンジ、チャンピオンイエローNo.2、グラススパークルブラックの3種類。装備重量は164kgで、生産はインドだ。単独インプレ記事はこちら
最新の排出ガス規制に適合し、今年3月に発売されたVストローム250の最新型(64万6800円)。日本での初出は2017年で、カラーリングは4種類を用意する。装備重量はSXより27kg重い191kgを公称。生産は中国にて行われている。
Vストローム250SXのシート高は835mm。身長175cmの筆者でも両カカトは同時に接地しないが、車体が軽いので不安感なし。シッティング、スタンディングともにバランスは良し。
Vストローム250のシート高は、SXより35mm低い800mm。足着き性は優秀で、SXよりも明らかに低重心な印象も。ハンドル位置が高く、一般的なネイキッドよりもアップライトだ。

油冷単気筒の250SXか、それとも水冷並列2気筒の250か

Vストローム250SXは、ジクサー250/SF250と共通の249cc油冷SOHC4バルブ単気筒「SEP(スズキ・エコ・パフォーマンス)」エンジンを搭載。最高出力は26psを発揮する。
Vストローム250は、2012年に発売されたGSR250に端を発する248cc水冷SOHC2バルブ並列2気筒を搭載。最高出力は24psで、WMTCモード値は32.1km/l(SXは34.5km/l)だ。

スズキによると、Vストローム250SXとVストローム250の両モデルが併売されているのは、世界広しと言えども日本ぐらいとのこと。つまり、どちらがいいか? なんて悩めるのはこの国に住む我々の特権でもあるのだ。

車名こそ似ているが、中身も生産国も全く異なるこの2台。最初はエンジンの違いについて説明しよう。まずVストローム250SXは、ジクサー250/SF250と共通の249cc油冷SOHC4バルブ単気筒を搭載している。GSX-R1000Rと同レベルのショートストローク設計で、水冷ではなく油冷としたり、DOHCではなくSOHCを選ぶなどして、部品点数の削減による軽量化やフリクションロスの低減を徹底。シングルながら10,000rpmまで回るエンジンに仕上げている。

この油冷シングル、低回転域でラフにクラッチミートしてもスタタタタッと力強く発進し、164kgという軽量な車体と相まって、市街地ではキビキビと走り回れることが印象的だ。急な上り勾配が続くワインディングロードでは、4,000rpm以下に落ちるとややトルクが薄いと感じるが、1速シフトダウンしてスロットルを開ければ、レッドゾーンの始まる10,000rpmまでスムーズに伸び上がる。スロットルの開け閉めに対する反応、つまりレスポンスが優秀なのも好印象で、これが未舗装路でのコントロールの良さにもつながっている。

これに対してVストローム250は、180度クランク採用の248ccSOHC2バルブ並列2気筒エンジンを搭載する。GSR250に端を発するこのパワーユニット、設計年度としては今から10年以上も前ということになろう。最高出力は24psで、250SXの26psよりもわずかに少ない。

ところが、いざ同条件で走らせてみると、発進加速やそこで感じる低中回転域のトルク感は同等以上なのだ。トラクション感というか、路面を蹴り出している感覚は250SXより薄いものの、体感的な加速Gはほぼ横並びだ。これは、発進~90km/hまでの加速性能を重視したというカムプロフィールの選択が功を奏しているのだろう。よって、こちらの方が2ps少ないということを、試乗の途中からすっかり忘れてしまったほどだ。

とはいえ、差があるなと感じたのはワインディングロードの上り区間だ。Vストローム250は250SXよりもクランクのイナーシャ(慣性モーメント)が34%も多く、一度上りで失速させてしまうと再び元気良く加速するまでにややタイムラグがあるのだ。これがスポーティな走りの興を削ぐ感じになってしまうのだが、逆に高速道路を一定速度で走るときの巡航性能は、250SXよりも明らかに高いため、疲労の蓄積を抑えつつ淡々と移動できるだろう。


フロントホイール径の差が悪路走破性に大きく影響

Vストローム250SXは、ネイキッドのジクサー250をベースに開発され、フロントホイールは17インチから19インチに大径化。合わせて前後ディスクブレーキも大きなサイズへ。
Vストローム250はフルカウルスポーツのGSX250Rと同時に開発。10本スポークのアルミキャストホイールや標準装着タイヤ(IRC・RX-01)まで足周りはそのまま流用している。

フレームは、250SXがダイヤモンドタイプ、250がセミダブルクレードルで、フロントホイールは250SXが19インチ、250が17インチとなっている。つまりこの2台、エンジンだけでなく車体も全くの別物なのだ。

前後17インチホイールにオンロードタイヤを履くVストローム250は、さながらネイキッドモデルのようなハンドリングを有している。ベースとなったGSX250Rに対してフロントフォークは専用セッティングとなっており、アップライトな乗車姿勢と相まって、街中でもワインディングロードでも非常に扱いやすい。高速道路に入って80km/hを超えると、軽二輪とは思えないほど安定性が高まり、路面の大きなギャップを通過したり、突然の横風を食らったとしても、走行ラインを乱されにくいのだ。

これに対してフロント19インチ、リヤ17インチのセミブロック調タイヤを履くVストローム250SXは、どの速度域でも常にリヤ主体で旋回するイメージであり、これは多くのアドベンチャーモデルに共通するハンドリングだ。車体の純粋な旋回力なら250に軍配が上がるが、250SXは27kg軽い車体とレスポンスのいいエンジンがそれをカバーしている。

そして、未舗装路に一歩足を踏み入れると、両車の差は決定的となる。前後17インチの250は、路面の凹凸に対してハンドルを取られやすく、タイヤもあまりグリップしないため、「やっぱりネイキッドの粋を出ないな」と感じてしまう。これに対し、250SXはフロントホイールが大径な分だけ障害物を乗り越えやすく、しかもセミブロック調タイヤが砂利や泥濘地でもそこそこグリップしてくれるので、ツーリング先で遭遇するフラットダート程度なら楽に走破できるのだ。

なお、両モデルともウインドスクリーンとナックルカバー、シュラウドによる防風効果が高く、VストロームシリーズのDNAがしっかりと伝わってきた。

この2台は見た目以上に性格を異にしており、だからこそスズキは併売という選択をしたのだろう。Vストローム250SXは、SX(スポーツクロスオーバー)というネーミングのとおり、未舗装路も含めてさまざまなシチュエーションを楽しめるモデルであり、多くの人が想像するアドベンチャー像がこれだろう。一方、Vストローム250は、アドベンチャーの姿を借りたロングツアラーであり、17ℓというビッグな燃料タンク容量や、純正アクセサリーでトップとサイドケースを用意していることからも自明だ。ゆえに、自分の用途が分かっていれば、自ずと選ぶべきモデルが見えてくるだろう。


ディテール比較

Vストローム250SXのシートは前後別体式で、パッセンジャー側はインドの女性の横座り(サリー乗り)にも対応できるように座面が非常に広く、しかもクッション性に優れる。グラブバーを兼ねるリヤキャリアは、パッセンジャーシートとツライチになるように設計
Vストローム250のシートは前後一体式で、同じくグラブバー兼アルミ製リヤキャリアを備えている。最初からサイドケースアタッチメントが装備されているのもポイントで、純正アクセサリーを駆使しての積載量という点においては、Vストローム250に軍配が上がる。
Vストローム250SXのヘッドライトはLEDで、ジクサー250から流用している。
Vストローム250のヘッドライトはハロゲン球で、今となってはやや暗く感じる。
Vストローム250SXのフル液晶ディスプレイ。インド仕様はスマホとの連携機能「スズキライドコネクト」を採用するが、日本仕様は見送られた。タコメーターは10,000rpm以上がレッドゾーンとされ、平均/瞬間燃費計や電圧計なども搭載する。
Vストローム250(2021年型)のフル液晶ディスプレイ。盛り込まれている機能は250SXとほぼ共通だ。なお、メーター左側にある電源ソケットは250SXがUSBなのに対し、250はシガーソケットとなっている。250はハザードスイッチあり。
Vストローム250SX純正アクセサリー装着車。
Vストローム250純正アクセサリー装着車。

両モデルのコンセプトの違いを端的に表しているのが上の写真だ。Vストローム250SXは、街中や林道をスリムな車体で駆け抜けてほしいとの思いから、純正アクセサリーの設定はトップケースのみとしている。対して250はトップとサイドの3ケースに対応しており、超が付くほどのロングツーリングまで視野に入れている。

Vストローム250SX 主要諸元

型式 8BK-EL11L
全長/全幅/全高 2,180mm/880mm/1,355mm
軸間距離/最低地上高 1,440mm/205mm
シート高 835mm
装備重量 164kg
燃料消費率 国土交通省届出値:定地燃費値 44.5km/L(60km/h)2名乗車時
WMTCモード値 34.5km/L(クラス2、サブクラス2-2)1名乗車時
最小回転半径 2.9m
エンジン型式/弁方式 EJA1・油冷4サイクル単気筒/SOHC4バルブ
総排気量 249cm3
内径×行程/圧縮比 76.0mm×54.9mm/10.7:1
最高出力 19kW〈26ps〉/9,300rpm
最大トルク 22N・m〈2.2kgf・m〉/7,300rpm
燃料供給装置 フューエルインジェクションシステム
始動方式 セルフ式
点火方式 フルトランジスタ式
潤滑方式 圧送式ウェットサンプ
潤滑油容量 1.8L
燃料タンク容量 12L
クラッチ形式 湿式多板コイルスプリング
変速機形式 常時噛合式6段リターン
変速比 1速 2.500
    2速 1.687
    3速 1.315
    4速 1.111
    5速 0.954
    6速 0.826
減速比(1次/2次) 3.086/3.076
フレーム形式 ダイヤモンド
キャスター/トレール 27°00’/97mm
ブレーキ形式(前/後) 油圧式シングルディスク[ABS]/油圧式シングルディスク[ABS]
タイヤサイズ(前/後) 100/90-19M/C 57H / 140/70-17M/C 66S
舵取り角左右 35°
乗車定員 2名
排出ガス基準 平成32年(令和2年)国内排出ガス規制に対応

製造国 インド

Vストローム250 主要諸元

型式 8BK-DS12E
全長/全幅/全高 2,150mm/880mm/1,295mm
軸間距離/最低地上高 1,425mm/160mm
シート高 800mm
装備重量 191kg
燃料消費率 国土交通省届出値:定地燃費値 38.9km/L(60km/h)2名乗車時
WMTCモード値 32.1km/L(クラス2、サブクラス2-2)1名乗車時
最小回転半径 2.7m
エンジン型式/弁方式 J517・水冷4サイクル2気筒/SOHC2バルブ
総排気量 248cm3
内径×行程/圧縮比 53.5mm×55.2mm/11.5:1
最高出力 18kW〈24ps〉/8,000rpm
最大トルク 22N・m〈2.2kgf・m〉/6,500rpm
燃料供給装置 フューエルインジェクションシステム
始動方式 セルフ式
点火方式 フルトランジスタ式
潤滑方式 ウェットサンプ式
潤滑油容量 2.4L
燃料タンク容量 17L
クラッチ形式 湿式多板コイルスプリング
変速機形式 常時噛合式6段リターン
変速比 1速 2.416
    2速 1.529
    3速 1.181
    4速 1.043
    5速 0.909
    6速 0.807
減速比(1次/2次) 3.238/3.357
フレーム形式 セミダブルクレードル
キャスター/トレール 25°10’/100mm
ブレーキ形式(前/後) 油圧式シングルディスク[ABS]/油圧式シングルディスク[ABS]
タイヤサイズ(前/後) 110/80-17M/C 57H/140/70-17M/C 66H
舵取り角左右 36°
乗車定員 2名
排出ガス基準 平成28年二輪車排出ガス規制に対応

製造国 中国

キーワードで検索する

著者プロフィール

大屋雄一 近影

大屋雄一

短大卒業と同時に二輪雑誌業界へ飛び込んで早30年以上。1996年にフリーランス宣言をしたモーターサイクル…