BMW・R1300GS試乗記|「取り回しに難あり」は過去の話! 今回のモデルチェンジで、これなら乗れるに大躍進。

1980年の発売以来、43年が経過した今もなお、ツーリングエンデューロカテゴリーにおいて市場占有率が6割以上という絶対的な王者がBMWのR-GSシリーズだ。前回の大がかりなフルモデルチェンジから9年、ついに新時代の幕開けともいうべきニューモデル〝R1300GS〟が日本へ上陸した。ジャーナリスト松井勉氏による詳細解説および海外試乗記に続き、今回は伊豆で開催されたメディア試乗発表会でのインプレッションをお届けしよう。

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●ビー・エム・ダブリュー株式会社(https://www.bmw-motorrad.jp/ja/home.html#/filter-all)

ディテール解説

伝統のボクサーエンジンは「空水冷」という表記を継続するものの、完全水冷化によってシリンダーフィンがほぼ消失。先代のR1250GS比でボア径は102.5mmから106.5mmへと拡大、反対にストロークは76mmから73mmへと短くなり、排気量は1,254ccから1,300ccへ。吸気側のカムを低回転側と高回転側に切り替える「シフトカム」を引き続き採用する。最高出力はR1250GSの136ps/7750rpmから145ps/7750rpmへ。
エンジンのレイアウトは大幅に変更された。クランクケースの後方にあった6段トランスミッションはクランク軸の真下へ。また、カムチェーンの位置を右側はシリンダー前方に、左側は後方に配置することで、左右シリンダーの前後のズレを限りなくシンメトリーに近付けている。これらにより重量の削減(エンジン単体で-3.9kg)やマスの集中化、スイングアームの延長、空いたスペースへの排気コレクターの配置など、さまざまなメリットをもたらした。
クランクケース後方に大容量の排気コレクターを置くことができた結果、サイレンサーの小型化に成功。排気音はよりジェントルな印象に。
シャシーについては、エンジンをストレスメンバーとして利用する考え方こそ変わらないが、スチールチューブで構成されていたフレームは、板金シェル構造のスチール製フロントフレーム(一部に鍛造部品を使用)と、モノコックデザインのアルミダイキャスト製リヤフレーム(シートレール)に置き換えられた。これにより剛性向上と軽量化を両立している。
操舵機能と衝撃吸収機能を分離するという考え方のテレレバー・フロントサスは、フロントフォークのインナーチューブをトップブリッジがリジッドクランプする「EVOテレレバー」へと進化。なお、日本仕様は全モデルが電子制御サスDSA(ダイナミック・サスペンション・アジャストメント)を採用し、さらにツーリングはアダプティブ車高制御機能を盛り込んでいる。
チューブレスタイヤに対応したクロススポークホイール。タイヤおよびリムサイズはR1250GSから変更なし。日本仕様は新開発のブレンボ製スポーツブレーキキャリパーを標準装備し、合わせてフルインテグラルABSプロを導入する。
エンジンの前後長短縮によって片持ち式スイングアームは軸間距離を30mm延長(ホイールベースはR1250GS比で+10mm)し、EVOパラレバーへと進化した。ホイールトラベル量はフロント190mm、リヤ200mmだ。スイングアームから伸びるリヤフェンダーはダブルシェル構造となっており、走行風の流れによって泥汚れを排出する。
6.5インチTFT液晶ディスプレイは表示内容を更新している。なお、画像はGSスポーツで、ツーリングはスクリーンの手前にナビホルダーが付く。
R1150GSへモデルチェンジした際にアシンメトリーになったヘッドライトは、1300でシンメトリーかつ個性的なデザインへ。ハイとロービームを統合したプロジェクターユニットを中央に配置し、ツーリングはコーナリングライトを採用する。4本あるバー状のランプはDRLだ。
スタンダートとツーリングはLEDウインカーを内蔵したハンドプロテクターを採用。なお、ツーリングには防風効果を高めるエクステンション(グレーのパーツ)が追加される。GSスポーツのフロントウインカーは別体式となる。
ツーリングおよびスタンダードのブラックは電動調整式スクリーンを採用。さらにツーリングは防風効果を高める幅広ウインドプロテクターを標準装備する。
日本仕様のシートは前後ともヒーター付きとされる。シート高の表記としては850mmだが、ツーリングはアダプティブ車高制御機能を採用しているので、停車時の座面の高さは820mmとなる。なお、標準装備のグリップヒーターおよびフロントシートヒーターの温度調整はメーター内で行う。
シートを前後とも外すとアルミダイキャスト製リヤフレームの構造がよく分かる。なお、バッテリーはリチウムイオンとなり、これだけで2.5kgもの軽量化を達成。
ツーリングはパニアケースホルダーとセンターロックシステムを標準装備。写真の端子(マグネットコネクター)を介してパニアケースの内部照明およびUSB-A電源として使用できる。
アルミ製となったメインスタンド。走行中に左かかとが干渉するのを解消するため、レバーが可倒式となった。また、中央のプレート(ディフレクター)が車体への泥跳ねを軽減する。ツーリングは、電源オンかつエンジン停止状態でメインスタンドを下げると、自動的にアダプティブ車高制御機能によって車高が上がる仕組みとなっており、持ち上げる動作が非常に楽だ。
タンク上面に設けられたスマートフォン・ストレージ。トレーの下にはUSB-A電源ソケットが備えられている。

BMW・R1300GS 主要諸元

エンジン型式 空冷/水冷4ストロークDOHC水平対向2気筒、8バルブ、可変カムシャフト
ボア×ストローク 106.5mm×73mm
排気量 1,300cc
最高出力 107kW(145ps)/7,750rpm
最大トルク 149Nm/6,500rpm
圧縮比 13.3:1
点火/噴射制御 電子制御式インテークパイプインジェクション
エミッション制御 クローズドループ制御式三元触媒コンバーター
排ガス基準 EURO 5
最高速度 225km/h以上(ケースOA装備、トップケースOA装備、タンクバッグOA装備:180km/h)
燃料消費率/WMTCモード値(クラス3)、1名乗車時 20.83km/ℓ
燃料種類 無鉛プレミアムガソリン
オルタネータ 650W
バッテリー 12V/10Ah、リチウムイオン
クラッチ 湿式多板、アンチホッピング機能付、油圧式クラッチ
ミッション 常時嚙合式 6段リターン、エンジンブロックに内蔵
駆動方式 カルダンシャフト
フレーム 板金シェル構造のフレーム(ドライブユニットを負荷分担に利用)、リヤフレームはアルミニウムダイキャスト
フロントサスペンション BMWテレレバー、コイルスプリング付きセントラルスプリングストラット
リアサスペンション アルミキャストシングルスイングアーム、BMW Motorradパラレバー
サスペンションストローク、フロント/リア 190mm/200mm
軸距(空車時) 1,520mm
キャスター 112mm
ステアリングヘッド角度 63.8°
ホイール クロススポークホイール
リム、フロント 3.00×19"
リム、リア 4.50×17"
タイヤ、フロント 120/70R19
タイヤ、リア 170/60R17
ブレーキ、フロント フローティングダブルディスク、直径310mm、ラジアル4ピストン固定式キャリパー
ブレーキ、リア シングルディスク、直径285mm、2ピストンフローティングキャリパー
ABS BMW Motorrad Full Integral ABS Pro(バンク角最適化)
全長 2,210mm
全幅 1,000mm
全高 1,490mm
シート高、空車時 850mm(ローダウンOE装備:820mm)
インナーレッグ曲線 1,900mm
車両重量 250kg(スポーツサスペンション装備:260kg、アダプティブビークルハイトコントロール装備:258kg)
許容車両総重量 465kg
最大積載荷重(標準装備時)217kg
燃料タンク容量 約19ℓ
リザーブ容量 約4ℓ

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著者プロフィール

大屋雄一 近影

大屋雄一

短大卒業と同時に二輪雑誌業界へ飛び込んで早30年以上。1996年にフリーランス宣言をしたモーターサイクル…