【YZF-R15の投入でヤマハは4機種に】最もホットな150ccクラスのメリットを再考してみた。

250ccのフルサイズに満たない軽二輪車のラインナップが増えつつある。ホンダはADV160とPCX160の2機種、スズキはジクサー150の1機種のみだが、ヤマハに至ってはXフォース、NMAX155、トリシティ155というスクーター系3機種に続いて、本格ロードスポーツのYZF-R15まで投入し、1メーカーで4機種も用意しているのだ。ここではスズキ以外の全車に試乗している筆者が、150ccクラスの魅力について紹介しよう。

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

原付二種のファミリーバイク特約が必ずしも安いとは限らない!?

国内の軽二輪販売台数ランキングにおいて、常に上位にいるホンダ・PCX160。上質なエンジンフィール、ドライでもウェットでもコーナーでは絶対に曲がれるという安心感、抜群の足着き性の良さ、そして充実した各種装備など、軽二輪スクーターとして非の打ち所なし。試乗インプレッションはこちら

先日、千葉県の県庁所在地にあるバイクショップで、店主とこんな会話をした。原付二種クラスの話題から、「どういうわけか、スクーターで売れるのは圧倒的にホンダ。PCXは125だけじゃなくて160も動きがいいし、ADV160はウチでやってるレンタルバイクの方も人気なんだよね。ほら、このあたりは京葉道路を2~3区画使えば下道の渋滞を回避できるとか、125cc以下が走れない波乗り道路(九十九里有料道路)とかあるでしょ。だから150ccクラスって人気なんだよ」と、教えてくれた。「でも、所有するとなったら、ファミリーバイク特約が使える125ccの方が維持費が安くなりますよね」と、こちらが質問すると、「確かにそうなんだけど、最近はタイムズ(カーシェアリング)で済ます家庭も少なくないからさ、そもそも自動車保険に入っていない人も多いんだよ。それに……」といって、任意保険の現状について簡単に教えてくれた。契約条件によってさまざまに変わるものの、ファミリーバイク特約に必要な料金と一般的なバイク保険とでは、長期間契約によっては後者が安くなるケースも。つまり、「原付二種=ファミバイ特約が使えるから維持費が安い」というのは、人によって当てはまらないこともあるのだ。

150ccのスクーターでもメーター読み100km/h巡航は可能だ

筆者が実際に代車としてお借りしたヤマハ・NMAX155。シート下のトランクの狭さがPCX160に対するディスアドバンテージであり、それが売れ行きに響いた可能性大。動力性能やハンドリング、乗り心地といった基本性能ではPCX160に決して負けていないのだが……。

そんな店主との会話の流れから、そのショップからヤマハ・NMAX155を代車としてお借りすることができた。仕事では何度か試乗しているモデルだが、自分の足として使うのは初めてだ。車体サイズは125ccと共通なので大きすぎず、狭い駐輪場での取り回しも苦労は一切なし。高速道路ではメーター読みで100km/h巡航ができ、渋滞にハマっても車体が軽いので疲労度が圧倒的に少ない。もしこれが250ccフルサイズのスクーターだったら、動力性能その他で余裕があるのは明白だが、それと引き換えに身軽さが失われてしまう。今回の件で、あらためて150ccクラスの魅力に気付くことができた。ちなみにこのNMAX155、1週間ほどの貸与期間に300km以上も走ってしまった。それだけ足代わりとして非常に便利だったからだ。

2022年6月に発売された155ccスクーターのヤマハ・Xフォース。NMAX155があるのになぜ? という疑問はあったものの、足代わりに使うほどにステップスルーデザインによる乗降車のしやすさを痛感する。試乗インプレッションはこちら
同じくヤマハのトリシティ155。車重はNMAX155の131kg、Xフォースの130kgに対して172kgと40kg以上も重く、さらにフロント2輪による転がり抵抗も加わるので、125よりも動力性能の面で有利な155の方を強く推す。試乗インプレッションはこちら

YZF-R15はR25のお下がりにあらず。本格派のスポーツバイクだ

180度位相クランク採用の249cc水冷DOHC4バルブ水冷並列2気筒エンジンを搭載。最高出力は35ps、車重は169kgで、価格は69万800円と、限りなく70万円に近い。R15との比較記事はこちら

ヤマハは2023年10月から12月にかけて、プラットフォームを共有する小排気量のMTスポーツモデル4機種を立て続けに発売した。MT-125とXSR125については、海外では155ccモデルも展開しているが、日本に投入された軽二輪枠は現状においてYZF-R15のみである。

すでにYZF-R25を販売していることから、軽二輪クラスに「YZF-R」を名乗るモデルを2機種も投入することになったヤマハ。市場導入の理由としては、「低価格の軽二輪モデルを用意して若年層を獲得すること」であり、実際にR25とR15の価格差は14万800円、およそ25%もの開きがある。両モデルとも普通二輪免許以上が必要という点では共通するが、14万円もの差額があれば、ヘルメットや各種装具、さらにはカスタムパーツに投資できるというメリットが生まれる。

そして、両車を試乗した筆者が声を大にして伝えたいのは、R15はR25のお下がりなどではなく、性格を異にした本格的なスポーツモデルだということだ。最高出力でも、またパワーウエイトレシオ的にも、圧倒的に上回るのはR25だが、R15は車重が28kgも軽いことと、単気筒ゆえの車体のスリムさがアドバンテージであり、R25よりも切れ味の鋭いハンドリングを有しているのだ。これはかつてカワサキがラインナップしていたニンジャ250SLを彷彿させるもので、R25よりも通好みなマシンと言ってもいいかもしれない。

YZF-R15はR25より14万800円も安い。試乗インプレッションはこちら
国内メーカーではないものの、150ccクラスにはこんな変わり種も。台湾のハートフォードというメーカーが生産し、ウイングフットが日本で販売しているミニエリート150だ。前後12インチのコンパクトなボディに、約15psを発生する水冷シングルを搭載。試乗インプレッションはこちら

車両価格の安さと身軽さが150ccクラスにおける最大のメリットだ

車検がないので維持費が安く、車重が軽いので入門者にはぴったりと長らく言われてきた250ccクラス。しかし、さまざまな法規制に対応した結果、車重は徐々に重くなり、いつしか若年層が気軽に手を出せる価格帯ではなくなってしまった。そうした250ccフルサイズモデルのネガティブな要素を軽減したのが150ccクラスであり、ネオ・エントリーを名乗ってもいいのではないか、というか筆者の考えだ。もちろんセカンドバイクとしても非常に魅力的であり、今後さらに盛り上がることを期待している。

ヤマハ・YZF-R15 ABS……550,000円(2023年10月16日発売)

YZF-R15 ABS 主要諸元

認定型式/原動機打刻型式 8BK-RG86J/G3U4E
全長/全幅/全高 1,990mm/725mm/1,135mm
シート高 815mm
軸間距離 1,325mm
最低地上高 170mm
車両重量 141kg
燃料消費率 国土交通省届出値 
定地燃費値 65.7km/L(60km/h)2名乗車時
WMTCモード値 50.2km/L(クラス1)1名乗車時
原動機種類 水冷・4ストローク・SOHC・4バルブ
気筒数配列 単気筒
総排気量 155cm3
内径×行程 58.0mm×58.7mm
圧縮比 11.6:1
最高出力 14kW(19ps)/10,000rpm
最大トルク 14N・m(1.4kgf・m)/7,500rpm
始動方式 セルフ式
潤滑方式 ウェットサンプ
エンジンオイル容量 1.05L
燃料タンク容量 11L(無鉛レギュラーガソリン指定)
吸気・燃料装置/燃料供給方式 フューエルインジェクション
点火方式 TCI(トランジスタ式)
バッテリー容量/型式 12V、5.0Ah(10HR)/YTZ6V
1次減速比/2次減速比 3.041(73/24)/3.428(48/14)
クラッチ形式 湿式、多板
変速装置/変速方式 常時噛合式6速/リターン式
変速比 1速:2.833 2速:1.875 3速:1.363 4速:1.142 5速:0.956 6速:0.840
フレーム形式 ダイヤモンド
キャスター/トレール 25°30′/88mm
タイヤサイズ(前/後) 100/80-17M/C 52P(チューブレス)/140/70-17M/C 66S(チューブレス)
制動装置形式(前/後) 油圧式シングルディスクブレーキ/油圧式シングルディスクブレーキ
懸架方式(前/後) テレスコピック/スイングアーム
ヘッドランプバルブ種類/ヘッドランプ LED
乗車定員 2名

製造国 インドネシア

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