軽二輪スクーター販売台数トップ、ホンダPCX160の実力を再検証→端的に言うと「機能とパフォーマンスの全部盛り」でした。

令和2年排ガス規制やユーロ5への適合を見据え、2021年にフルモデルチェンジしたホンダ・PCXシリーズ。排気量が7ccアップしたことで車名の数字を増やしたPCX160は、相変わらず軽二輪スクーターで販売台数トップを快走している。カラーバリエーションが変更された2022年モデルに試乗し、あらためて人気の理由に迫る。

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

ホンダ PCX160……407,000円(消費税込み)

新排ガス規制適合をきっかけに2021年モデルでフルチェンジ。エンジンはSOHC2バルブから4バルブとなり、ボア×ストロークを変更。さらにフレームも完全新設計となっている。
国内のラインナップで直接のライバルとなりそうなのがヤマハ・NMAX155だ。エンジンは可変バルブVVAを採用し、メーターはスマホ連携機能も。価格はPCX160と同じ40万7000円。
撮影車両は2021年から継続のマットディムグレーメタリックで、このほかにパールジャスミンホワイトも引き続き採用される。2022年の新色はマットギャラクシーブラックメタリックとフォギーブルーメタリックの2つで、PCX160のカラーバリエーションは計4種類だ。

過不足のない動力性能と上質感こそがPCX160の真骨頂

パーソナルコンフォートサルーンをコンセプトに、2010年3月に発売されたホンダ・PCX。当初は原付二種の125ccモデルのみだったが、燃費性能に優れるeSPエンジンの搭載など、2012年のマイナーチェンジのタイミングで“150”が追加された。このPCX150は、軽二輪クラス(126~250cc)の販売台数ランキングで常に上位に入る人気モデルとなり、街中だけでなく高速道路でもよく見かける存在に。そして、2021年には新排ガス規制適合を見据えてフルモデルチェンジを実施。エンジンはSOHC4バルブの“eSP+”となり、合わせてボア×ストロークの変更により排気量は149ccから156ccへ。これに伴い車名もPCX160となった。なお、最高出力は150の15psから15.8psへ、最大トルクは14Nmから15Nmへとそれぞれ微増している。

このPCX160については、発売されたタイミングで私は先代のPCX150とじっくり乗り比べている。高速道路において他のライダーと2台で全開加速を試みたところ、100km/hに到達するころには160が150を数車身リードしており、体感だけでなく実際にも速くなっていることを確認。また、それ以上に感心したのはシャシーの進化で、高速道路で大きなギャップを通過した際の衝撃吸収性や直進安定性が明らかに向上していた。

そんなPCX160を、2022年にカラーチェンジしたタイミングであらためて試乗してみた。最も感心するのは、上質とか上品という表現がしっくりくるエンジンフィールで、振動やノイズの少なさは単気筒とは思えないほどだ。この印象については前作のPCX150時代から変わらないが、160は油圧式カムチェーンテンショナーリフターの新採用や、ドライブベルトのダブルコグ化などでフリクションを低減。さらにクランクシャフトの剛性アップなども振動や騒音の低減に貢献しているという。

停止状態からスロットルを開けると、不快な振動を発することなく遠心クラッチがつながり、125cc以下の原付二種クラスよりも明らかに太いトルクで発進する。速度の上昇カーブは極めてストレートで、どの速度域からもスロットルレスポンスは良好。体に伝わる微振動は非常に少なく、走行中に耳へ届く排気音も心地良いと感じるレベル。アイドリングストップシステムによるエンジン停止と再始動の印象も特に不満がなく、裏方に徹した素晴らしいエンジンだと断言できる。


ドライでもウェットでも絶対に曲がれるという安心感

PCX160のライディングポジションは、両足を前方へ伸ばせるリラックス系であり、クロームのバーハンドルは絞り角、垂れ角とも大きめだ。シート高は764mmと低いため、視点も自ずと路面に近くなる。これが心理的な安心感を生んでおり、PCXシリーズが人気を集める理由の一つではないかと思っている。

PCX150から160になった際、フレームが一新されたのと同時に、リヤホイールが14インチから13インチへと小径化され、タイヤ幅は前後とも1サイズアップ。さらに、リヤのホイールトラベル量は85mmから95mmへと10mm増やされている。

12年前の登場時からPCXシリーズの乗りやすさと安定性の高さについては定評があるが、最新のPCX160はそれが極まったといっても過言ではない。遠心クラッチがつながる瞬間の微速域からフラつきにくく、発進直後の右左折も恐怖心はゼロ。速度上昇とともに直進安定性も高まるが、100km/h付近でも頑固になりすぎることはなく、ハンドルへの軽い入力だけでスイッと車線変更できてしまう。峠道でも同様で、特に体重移動を意識しなくても、視線を送りさえすれば自然とコーナーをクリアできてしまう。反面、フロントブレーキを残しつつグイッと倒し込む、などと頑張っても旋回力が極端に高まるわけではないので、伸び代が少ない=つまらないと感じるベテランライダーもいるだろう。だが、操縦技術の高低を問わずに曲がれるのは通勤通学スクーターにとって重要なファクターであり、それを磨き上げたPCXシリーズの進化を素直に称賛したい。

今回の試乗中、峠道に入ったところで雨が降ってきたのだが、接地感は薄れることなく、安心して走ることができた。なお、このPCX160からホンダ・セレクタブルトルクコントロールが採用されており、水溜まりで何度かスロットルを急開してみたのだが、少なくともアスファルト上では介入を確認できなかった。とはいえ、砂利の駐車場ではスロットルの動きに対して加速が間引かれている様子が伝わってきたので、フロントのABSとともに安心感を高めてくれるのは間違いない。

レインスーツを着込んだときほど、カギを取り出さなくて済むスマートキーシステムの便利さは身に染みるし、また脱いだレインスーツをヘルメットとともに放り込めるラゲッジスペースの広さはありがたいの一言。さらに、フロントインナーボックス内の電源ソケットがUSB Type-Cになったので、スマホの充電がしやすくなったのもうれしい。2021年はあのレブル250に次いで軽二輪クラス販売台数2位となったPCX160。その理由について納得しかない試乗となった。


ライディングポジション&足着き性(175cm/68kg)

先代のPCX150よりもフットスペース前方が縦横に30mmずつ拡幅されており、足を伸ばしたときの快適性が向上している。シート高が低い=視点が低いことの安心感は非常に大きい。
シート高の低さに加え、足を地面に降ろしたときのレッグラインがスムーズになるボディ形状により、足着き性は抜群にいい。PCXシリーズが人気を集める理由の一つと言えよう。

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