「アストンマーティン ヴァンキッシュ」が3代目となって復活

アストンマーティンの3代目フラッグシップ「ヴァンキッシュ」がデビュー「優雅なボディにお約束のV12」

東京・青山でワールドプレミアと同時に公開された新型ヴァンキッシュ。
東京・青山でワールドプレミアと同時に公開された新型ヴァンキッシュ。
2代目が生産を終えてから、しばらくラインナップから姿を消していた「ヴァンキッシュ」がついに復活した。さらに優雅なボディにはお約束のV型12気筒を搭載。まさにアストンマーティンのフラッグシップにふさわしいスーパーラグジュアリースポーツである。

ASTON MARTIN VANQUISH

ワールドプレミアと同時に東京で公開

アストンマーティンのフラッグシップ「ヴァンキッシュ」が生まれ変わって帰ってきた。3代目となるヴァンキッシュは、ロングホイールベースの優雅なフォルムを持つFRクーペ、そしてそのボンネットの下にはV12気筒を搭載するというヴァンキッシュの伝統を守りつつ、すべてが新しくなった新世代のラグジュアリークーペだ。

その発表は9月2日にイタリア・ヴェニスで行われたのだが、なんとそれと同じタイミングで東京でのお披露目が行われた。ヴェニス以外の地で同時発表を開催したのは世界でも東京だけだというから、いかにアストンマーティンが日本市場を重視しているのかがよくわかる。

新型ヴァンキッシュでまず目に飛び込むのは美しいデザインだ。従来よりフロントアクスルとAピラーの根元の距離が80mmも延長され、その佇まいは実に優雅。ボンネットの大胆なエアダクトがハイパワーマシンであることを主張しながらも、アストンマーティン独特のフロントグリルがボディ全体をエレガントに引き締める。

そして新型ヴァンキッシュをもっとも印象づけるのがリヤスタイルだ。大きなブラックのパネルと、その両側に配された縦に並べた7個のユニットで構成されるテールライトは実に斬新。それでいてどこから見てもアストマーティンとわかるアイデンティティの巧みさは見事なものだと言えるだろう。

大幅なブラッシュアップが施されたV12気筒は825PS

驚くのはそのボディがすべてカーボンファイバー製であること。シャシーはアルミ製、そしてボディ外板はカーボンとすることで、その重量は1774kgに収まる。V12気筒を搭載する大型ラグジュアリークーペとしては非常に軽量だ。だがカーボンのボディは生産にかなりの時間と労力を必要とするためであろう、ヴァンテージの生産台数は年間1000台以下となると発表されている。このクルマを手にできるのは、世界の中でも限られた者のみということになりそうだ。

ボンネットに収まるエンジンは5.2リッターV型12気筒ツインターボ。シリンダーブロックを強化し、カムシャフトやコンロッド、また吸排気系を一新するなどほぼ全面刷新に近い改良を加えられて、825PS/1000Nmという強力なアウトプットを発生する。これを受け止めるのはZF製の8速AT。同時にE-diffも採用され、これはフル開放から135ミリセコンドで完全ロックが可能だという。ESCと完全統合制御を行うことで、街中から高速クルージング、そしてドリフトまであらゆる運転パターンにふさわしいトラクションを得ることができる。サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーン、リヤがマルチリンクで、ブレーキはカーボンセラミックのディスクが奢られる。

DB12と同様の新世代インテリア

インテリアに目を向けると、先に登場したDB12にも通じる新たなアストンマーティンのインパネデザインが採用されているのがわかる。水平基調のインパネの中央には10.25インチの横型タッチスクリーンが備えられ、メーターも10.25インチのフルデジタル式。他ブランドとは異なり物理的スイッチを多く残しているのはアストンマーティンの伝統のスタイルを残すためかもしれないが、これを好意的に思う人は多いだろう。シフトノブもボタンではなくレバー式に改められている。

手作業による上質なシートは超ラグジュアリークーペにふさわしい仕上がりで、スポーツドライブにも十分なホールド性も備えるが、希望すればカーボンファイバー製のパフォーマンスシートを選択することもできる。なお、新型ヴァンキッシュは完全な2シーターであり、プラス2のシートは用意されない。その代わりにシート後方には荷物を置く十分なスペースがある。リヤのラゲッジスペースも含め、2人の数泊分の荷物なら余裕で積み込むことができるだろう。

高級サルーンのような快適さを持ちながら、サーキット走行もこなせるスポーツ性能の二面性がアストンマーティンの魅力だが、新型ヴァンキッシュはそれが最高峰のレベルで結実した1台と言えそうだ。ヴァンテージ、DB12と主力モデルを立て続けに新型へと切り替えてきたアストンマーティンだが、同社のアイコンと言えるヴァンキッシュの復活により、その勢いはさらに増すことになりそうだ。

SPECIFICATIONS

アストンマーティン ヴァンキッシュ

ボディサイズ:全長4850×全幅1980×全高1290mm
ホイールベース:2885mm
車両重量:1774kg
エンジン:V型12気筒DOHCツインターボ
総排気量:5204cc
最高出力:614kW(835PS)/6500rpm
最大トルク:1000Nm(102kgm)/2500~5000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:Fダブルウイッシュボーン Rマルチリンク
ブレーキ:F&Rベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
最高速度:345km/h
0→100km/h加速:3.3秒

DBSにくらべて56kgほどの軽量化を実現した2代目「ヴァンキッシュ」。

量産アストン初のフルカーボンボディを採用した2代目「ヴァンキッシュ」【アストンマーティンアーカイブ】

DBSが生産終了した2012年に登場した新たなるフラッグシップが2代目「ヴァンキッシュ」だ。最大のトピックは、アストンマーティン量産車としては初採用となるフルカーボンファイバー製のボディを採用したこと。進化型の「ヴァンキッシュS」も含めた7年あまりのモデルライフを解説する。

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著者プロフィール

永田元輔 近影

永田元輔

『GENROQ』編集長。愛車は993型ポルシェ911。