人気オフローダー「ランドクルーザー250」「ジープ・ラングラー・アンリミテッド・スポーツ」の都市性能を試乗でチェック

都市部での走りは?「トヨタ ランドクルーザー 250 ZX」対「ジープ ラングラー アンリミテッド スポーツ」比較試乗

世界を代表するオフローダーがランドクルーザー250とジープ・ラングラーだ。ランドクルーザーの中核モデルとラングラーのアーバンな走りの性能とは?
世界を代表するオフローダーがランドクルーザー250とジープ・ラングラーだ。ランドクルーザーの中核モデルとラングラーのアーバンな走りの性能とは?
ランドクルーザーの中核モデル、新型250をようやく街中で試乗する僥倖を得た。オフロード性とコンフォート性の両立を図ったという新型の実力はいかに!? ライバルたりえるジープ・ラングラーを連れ出し両車を比較してみた。(GENROQ 2024年11月号より転載・再構成)

Toyota Land Cruiser “250” ZX

Jeep Wrangler Unlimited Sport

大人気モデルのポテンシャルを秘めたランクル250

最上級モデルのランクル300と硬派なランクル70の間を埋める新型ランドクルーザー250。街中での取り回しもよく、早くもヒットの予感。
最上級モデルのランクル300と硬派なランクル70の間を埋める新型ランドクルーザー250。街中での取り回しもよく、早くもヒットの予感。

今年4月に国内発売された「ランドクルーザー”250″」は、生産も順調に進んでいるのか、街中でも時おり見かけるようになった。そんなランクル250のハードウェアは、上級のランクル300と同じGA-Lプラットフォームを土台として、2850mmというホイールベースも共通。ボディサイズにも大きな差はなく、しいて言えば全長が25〜60mm短いだけだ。ただ、V6エンジンと10速ATを組み合わせる300に対し、直列4気筒+8速AT(もしくは6速AT)になるパワートレインが、ランクル250ならではである。

いずれにしても、トップランクルと共通の基本骨格を使う点は、前身となったプラドに対する250最大の特徴だ。その分、価格帯までが300(ただし、2022年夏から受注停止中)のそれとほぼ重なってしまったのも、良くも悪くも250のトピックである。実際、今回試乗したランクル250の最上級グレード、2.8リッターディーゼルの「ZX」の本体価格は735万円。300でいうと、V6ディーゼルのZXの発売当時価格と25万円の差しかなく、昨今の物価高騰には思わずタメ息が出る。

わずか799万円で手に入る憧れのラングラー

800万円を切る799万円というバーゲンプライスで販売中のエントリーモデル、アンリミテッドスポーツ。非常に買い得なモデルだ。
800万円を切る799万円というバーゲンプライスで販売中のエントリーモデル、アンリミテッドスポーツ。非常に買い得なモデルだ。

こうしてランクル250が700万円台のクルマ……となってくると、あらためて射程内に入ってくるのが、同じ本格オフローダーの「ジープ ラングラー」だ。現行型ラングラーは2018年に500万円を切るスタート価格で国内発売されるも、その後は記録的円安の影響で、値上げを余儀なくされてきた。スタート価格は一時870万円まで高騰したが、今年5月のマイナーチェンジで、エントリーモデルの「アンリミテッド・スポーツ」が復活。それは800万円切りの799万円という正札を掲げる。

ラングラーの新スポーツはサイドステップが省略されるなど、一部にコストダウンへの涙ぐましい努力を見せつつも、主要装備や主要メカニズムにショボさはない。ブラックフェンダーや17インチのオールテレインタイヤも主力の「アンリミテッド・サハラ」の装備と比較するとダウングレードにはなるが、実際には安価感より、タフなオフローダー風味が増した感のほうが強い。

こうしてラングラーはそれを輸入する日本法人の努力をうかがわせる一方で、ランクル250はより大きなボディで7人乗り、さらに電動本革シートなど装備も満載で、価格は735万円……。さすが国産車、いや、さすがはトヨタの買い得感に思わず涙が出そうになる(笑)。

電動パワステがランクルのキャラクターを激変させた

さらに、独立ラダーフレームにリヤがリジットサスペンションという構造までは共通の2台だが、ラングラーがフロントもリジッドでボール循環式ステアリングと、全身があえて古典的構造となるのに、ランクル250のフロント周りは独立ダブルウィッシュボーンにラック&ピニオンである。さらに、パワステもランクル初の電動式とするなど、上級の300以上にモダン化されている。

本格オフロードではシーンによって甲乙つけがたい走破性を見せる(はずの)ランクル250とラングラーだが、舗装路メインの今回の試乗では、さすがにランクル250の洗練性が光る。エンジンもラングラーがガソリンで、ランクル250はディーゼルだが、静粛性は明らかにランクル250に軍配だ。凹凸が連続するような場面ではリジッド特有のクセが出るランクル250だが、整備された舗装路ではリジッドとは思えない乗り心地を披露する。300のような可変ダンパーも備わらないのに、この滑らかさとは、サスペンション各部のフリクションロスがよほど小さいのだろう。

無骨なデザインながらも使いやすいラングラーのインパネ

また、ランクル250は電動パワステのデキも秀逸で、徹頭徹尾スムーズな手応えも、本来の乗り心地をさらに際立たせる。その電動パワステを活かした先進運転支援システム(ADAS)の進化もランクル250の自慢で、ハンズフリー運転も可能とするアドバンストドライブを作動させた時の、慣性重量を感じさせずピタリと安定した“半自動運転”は素直にレベルが高い。

ランクル250と比較すると、ラングラーの走りはワークホースのそれというほかないが、古典的な構造からも分かるように、それはあくまで意図的なキャラクターでもある。それに、今のラングラーは高度なADAS機能や、ガソリンらしからぬ柔軟性を見せる直噴ターボ、そして舗装路でも4WDの安定性を得られる“4Hオート”モードなど、最新技術が随所に盛り込まれている。

世界一のオフローダー同士の熾烈なバトル

ワークホースでありながらどちらも最新世代のADASを採用するなど、都市部や高速でも使いやすい配慮が光る2台。両車ともに世界一のオフローダーだ。
ワークホースでありながらどちらも最新世代のADASを採用するなど、都市部や高速でも使いやすい配慮が光る2台。両車ともに世界一のオフローダーだ。

このように、日常的なオンロード走行では対照的な味わいを見せる2台だが、本格オフローダーならではの血統を隠せない美点では共通する。それは、どちらも車両感覚がバツグンなことだ。いかにも正立したコマンドなドラポジのラングラーは、窓から顔を出せばボディ四隅が視認できる。一方、ボディの角が即座にイメージできるダブルバブル形状フロントフードや、傾きを直感できる水平ダッシュボードといったランクル250のディテールはまさに、ランクルの伝統である。ランクルとラングラーは、ともに世界随一のオフロードブランドだ。ありとあらゆる修羅場を生き抜いてきたリアルな伝統が、そこには息づいている。

REPORT/佐野弘宗(Hiromune SANO)
PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)
MAGAZINE/GENROQ 2024年 11月号

SPECIFICATIONS

トヨタ・ランドクルーザー“250” ZX

ボディサイズ:全長4925 全幅1980 全高1935mm
ホイールベース:2850mm
車両重量:2400kg
エンジンタイプ:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
総排気量:2754cc
最高出力:150kW(204PS)/3000-3400rpm
最大トルク:500Nm(51kgm)/1600-2800rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後トレーリングリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後265/70R18
燃料消費率:11.0km/L(WLTCモード)
車両本体価格:785万円

ジープ・ラングラー・アンリミテッド・スポーツ

ボディサイズ:全長4870 全幅1895 全高1845mm
ホイールベース:3010mm
車両重量:1990kg
エンジンタイプ:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1995cc
最高出力:200kW(272PS)/5250rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/3000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前後コイルリジット
ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク
タイヤサイズ:前後245/75R17
燃料消費率:9.8km/L(WLTCモード)
車両本体価格:799万円

【問い合わせ】

トヨタ自動車お客様相談センター
TEL 0800-700-7700
https://toyota.jp

ジープ・フリーコール
TEL 0120-712-812
https://jeep-japan.com/

300と同じGA-Fプラットフォームを採用したランドクルーザー250。快適な乗り心地と悪路走破の両立は見事としか言いようがない。

試乗してわかった「トヨタ ランドクルーザー 250」は快適性もゲットした日本最高峰のSUV「もはや敵なし」

ランドクルーザーシリーズの中核モデルとして快適性と悪路走破性を両立させたのが250だ。300シリーズ同様に強固なGA-Fプラットフォームを採用しながらも、快適性を上げるためシリーズ唯一電動パワステを採用している。モダンで瀟洒なデザインと走りの快適性、これは大ヒット間違いなしだ。(GENROQ 2024年7月号より転載・再構成)

「ジープ ラングラー」2025年モデルのエクステリア。

2025年モデル「ジープ ラングラー」がミリタリーイメージの新色「’41」を追加「コネクティング機能強化も」

ジープブランドは、「ラングラー」とプラグインハイブリッドモデル「ラングラー 4xe」の2025年モデルを発表した。2025年モデルのラングラーは、2.0リッター直4ガソリンターボ、3.6リッターV型6気筒ガソリン、6.4リッターV型8気筒「HEMI」、高効率プラグインハイブリッド・パワートレインをラインナップする。

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