最高出力1275PSの新型「マクラーレン W1」がデビュー

「最高出力1275PSの後輪駆動でドライバーを試す」マクラーレンの新型アルティメットシリーズ「W1」がデビュー

新4.0リッターV8ユニットに高出力モーターを組み合わせ、システム総合で最高出力1275PS、最大トルク1340Nmを誇る。
新4.0リッターV8ユニットに高出力モーターを組み合わせ、システム総合で最高出力1275PS、最大トルク1340Nmを誇る。
マクラーレン・オートモーティブが新型スーパースポーツ「W1」を発表した。1992年登場の「F1」、2013年登場の「P1」に続く、アルティメットシリーズの最新作は驚愕の1200PS超を誇るハイブリッドスーパースポーツである。スニークプレビューを取材した西川淳が報告する。

McLaren W1

破格のパフォーマンス

特徴的なガルウイングドアを採用したW1。

1974年10月6日、エマーソン・フィッティバルディを擁するマクラーレンはF1界において初めてコンストラクター王者を獲得した。M23を駆るエマーソンは自身2度目のタイトル獲得だったけれど、ドライバーズ王者を出したのもマクラーレンとしては初だった。初めての、しかもWでタイトル獲得の快挙。チーム・マクラーレンが名実ともにワールドチャンピオンとなった日である。

50年後の今日。チーム・マクラーレン最強説を改めてアピールする歴史的モデルの誕生に我々は立ち会うことになった。その名も「W1」。1990年代に伝説となったF1、2010年代のアイコンとなったP1に続くマクラーレンロードカーラインナップの頂点というべき限定モデルシリーズ「アルティメットシリーズ」の最新版である。

開発にあたって具体的なターゲットとなったモデルはスピードテールとセナだった。スピードテールよりも素早く300km/hへと到達し、テストコースではセナより3秒早く走りきる。そう書けばW1のパフォーマンスの破格さに見当がつくというものだろう。ちなみにそんなパフォーマンスを実現するべく、W1には12種類の世界初と45種類のマクラーレン初という技術が贅沢に散りばめられているという。

“空力モンスター”

発表に先立って限られたメディア向けに開催されたスニークプレビューにおいて、実車のスタイルを目の当たりにした第一印象は「P1の正当な後継であり、その発展系」だった。一見シンプルで飾り気のないデザインのように見えるのだが、よくよく見てみれば凝りに凝ったエアロダイナミクス仕様となっている。

まさに“空力モンスター”。それは歴代アルティメットシリーズ最大の個性であり、マクラーレンロードカーの魅力でもある。最新のW1ではそれを極めた。特にW1の特徴であるガルウィングドア(ディヘドラルではなくアンヘドラル)を開けてみれば、その断面はフォーミュラ1のウイングのように複雑な形状で3枚のパネルが合わさっていることが分かる。何ならドアを開けたまま走りたくなるくらいにカッコいい。それにとにかくタイヤの露出が大きい。こんなにタイヤの見えるロードカーを見るのは初めてだ。

全てに空力の意味があるのはマクラーレンにとってはいつものこと。ルーフ上のパネルや300mmも伸びるロングテール・リヤウイングなど、とにかく空気の流れに徹底的にこだわった。それでいてセナのように仰々しくはならない。エアロダイナミクスの進化を感じる1台だろう。レースモードでは前37mm後17mm下がって、リヤには1tものダウンフォースがかかる。なんと理想的なリヤディフューザーを装着すべく、そのスペースを稼ぐためにパワートレイン自体を3度傾けることまで仕組んだ。

フォーミュラカー主体とするブランドのこだわり

ドアを開けて乗り込めば、マクラーレンらしく、いかにも機能性の高そうなコクピットが見えた。新開発のCFRPモノコックボディ(アエロセル)に新素材を駆使したシートが固定されている。ペダルボックスを前後に移動させてポジションを決める方式だ。ヘッドレストを前に倒せば、その向こうにわずかながら物置スペースがあった。

注目すべきはやはりパワートレインだろう。次世代を担う新たな4.0リッターV8ユニット「MHP-8」を積んできた。エンジン単体で928PSを発揮、リッターあたり233PSはもちろんマクラーレン史上最高のスペックだ。最高回転数は9200rpm。

これに347PSを発揮するアキシャルフラックスモーターを含んだeモジュールと8速DCT(後退はエレクトリック)を組み合わせ、eデフを通じてリヤ2輪を駆動する。そう、マクラーレンはまたしてもRWDを貫いた。フォーミュラカーを主体とするブランドならではの、それはこだわりだろう。システム総合スペックはなんと最高出力1275PS、最大トルク1340Nmで、軽量化にこだわった結果、車両重量(乾燥重量)はP1とほぼ変わらない1399kgを実現したから、パワーウェイトレシオはなんと1.1kg/PSとなる。

マクラーレン初となるプッシュロッド式サス

エアロダイナミクスを追求し、理想的なリヤディフューザーを装着すべく、パワートレインを3度傾けたという。

もちろんサスペンションシステムも全く新しい。特にマクラーレンのロードカーとしては初めてプッシュロッド式を採用。これにインボードスタイルのサスを組み合わせ、空力の最適化にも取り組んだ。特にフロントサスはアエロセルに直接マウントされ、アーム類などを3Dプリントで製作することで重量と性能も最適化した。アクティブコントロールシステムも最新版へとアップデートされている。

とにかくその仕様や性能、機能を書き出し始めると膨大になってしまう。実際に試す前から頭がヒートアップしてしまいそうだ。

お値段2ミリオンポンド以上。もちろんMSO次第である。世界限定399台はすでにアロケーション済みらしい。

SPECIFICATIONS

マクラーレン W1

ボディサイズ:全長4635 全幅2074 全高1182mm
ホイールベース:2680mm
乾燥重量:1399kg
エンジン:V型8気筒DOHCターボ
総排気量:3988cc
エンジン最高出力:683kW(928PS)
エンジン最大トルク:900Nm
モーター最高出力:255kW(347PS)
モーター最大トルク:440Nm
システム最高出力:938kW(1275PS)
システム最大トルク:1340Nm/4500〜5000rpm
バッテリー容量:1.384kWh
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):前265/35R19(9.5J) 後335/30R20(12.0J)
最高速度:350km/h(電子制御作動)
0→100km/h加速:2.7秒
車両本体価格:約200万英ポンド

エンジン最高出力と最大トルクは、エンジンが737PSと720Nm、エレクトリックモーターは179PSと260Nmという数字で、システム全体では916PSの最高出力と900Nmの最大トルクを発揮することが可能。

マクラーレン初のアルティメット・シリーズ「P1」が究極のモデルであるという理由【マクラーレン クロニクル】 

2012年のパリ・サロンで、そのプロトタイプが世界初公開され、翌2013年のジュネーブ・ショーでオフィシャル・デビューを飾ることになった「マクラーレン P1」。初のアルティメット・シリーズを解説する。

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西川 淳