【パリ・ショー】アルピーヌのBEVシリーズ第2弾「A390_β」を公開

“F1みたいな運転感覚?”アルピーヌのクロスオーバーEVコンセプト「A390_β」をワールドプレミア「2025年市販化予告」

EV専用プラットフォーム「Amprミディアム」を採用した「アルピーヌ A390_β」のエクステリア。
10月14日に開幕するパリ・モーターショーを前に、アルピーヌは2025年の市販化を予告するフル電動コンセプト「アルピーヌ A390_β」をワールドプレミアした。
10月14日から開幕するパリ・モーターショーを前に、アルピーヌはフル電動クロスオーバーコンセプト「A390_β」をワールドプレミアした。ルノー・グループが開発したEV専用プラットフォーム「Amprミディアム」を採用し、2025年に量産化される予定だ。

Alpine A390_β

「ドリームガレージ」第2弾モデルとして開発

EV専用プラットフォーム「Amprミディアム」を採用した「アルピーヌ A390_β」のエクステリア。
アルピーヌは、コンパクトスポーツ「A290」に続く、「ドリームガレージ」第2弾モデルとして、フル電動クロスオーバー「A390_β」を初公開した。

アルピーヌ初のフル電動スポーツファストバック・コンセプトとして開発された「A390_β」は、流麗なフォルムに観音開き式ドアが特徴だ。アルピーヌが投入を予定しているフル電動ラインナップ「ドリームガレージ(Dream Garage)」3車種のうち、A290に続く2番目モデルとなる。さらに第3弾としてA110のフル電動仕様が投入される予定だ。

「A390_β」というネーミングは、Aに続く3つの数字で構成される、近年のアルピーヌの命名ルールに従っており、「3」は車両のサイズ、「90」は多目的スポーツモデルを意味する。ギリシャ文字の「β」に関しては、量産モデルの正式発表を控えた、開発の中間プロトタイプであることを指している。

A390_βは、日常レベルのあらゆる用途を想定したマルチパーパス・クロスオーバーとしてだけでなく、A110のようなスポーツドライビングを楽しむことも想定。アルピーヌは、A390_βを「レーシングカーがテーラーメイドのスーツを着込み、ドレスアップしたモデル」と説明する。

エクステリアのベースとなったのは、2022年のパリモーターショーで発表された耐久レーシングコンセプト「アルペングロー(Alpenglow)」。A390_βもアルプスの山々からインスピレーションを得ており、アルペングローと同様に鉱物や雪といった自然をイメージしたフォルムやディテールが採用された。

空力を意識した流麗なエクステリア

EV専用プラットフォーム「Amprミディアム」を採用した「アルピーヌ A390_β」のエクステリア。
2022年のコンセプトカー「アルペングロー」と同様のデザインコンセプトが採用され、機能性とエアロダイナミクスを高次元で融合。リヤセクションにはテールが迫り出す、可変ライトストリップが導入された。

美しい流れを持ったA390_βのシルエットは彫刻的でダイナミック。アルプスの山々をイメージした1枚岩のようなフォルムは、機能性とエアロダイナミクスを最適なバランスで両立した。サイドセクションははアルピーヌ製スポーツカーの特徴的なラインを踏襲しており、静止していても動きを感じさせるデザインを纏っている。

シャープなラインを際立たせるエクステリアカラーは、多面的な表情を持った専用色「ブルー・スペキュラー(Bleu Specular)」。塗料には細かい粒子が含まれており、それぞれが光を反射することで、明るいブルーと深みを持ったブルーが能動的に変化する。

シャープなラインを持つライトストリップ下部には、大気圏を突き抜ける彗星をイメージし、光る三角形のデザイン要素「コズミック・ダスト(Cosmic Dust)」を配置。フロントセクションには、車両上部のエアフローを整える「フライング・ブリッジ(Flying bridge)」も採り入れられた。

リヤセクションは「機能がフォルムを決める」というコンセプトが表現された。テールはル・マン24時間レースで活躍したアルピーヌのプロトタイプレーシングカーを思わせるシャークフィン形状。リヤディフューザーに組み込まれたライトストリップは80mm伸縮し、「ショートテール」から「ロングテール」に変更することで、高速走行時のCd値を引き下げ、航続距離を伸ばすことができるという。

F1マシンをイメージしたコクピット

EV専用プラットフォーム「Amprミディアム」を採用した「アルピーヌ A390_β」のインテリア。
ドライバーズシートは、通常モードとF1マシンを思わせる低い位置のシートポジションへと切り替えが可能。ステアリングホイールも、F1マシンを思わせる機能性が与えられている。

A390_βは、Bピラーを省き広大な開口部を実現した、観音開き式ドアを採用。インテリアもエクステリア同様に、アルプスをイメージしてクリーンにまとめられた。

前席は鉱物をテーマに、自然とテクノロジーが融合した有機的なダッシュボードを配置。F1マシンを思わせるステアリングホイールに組み合わされたドライバーズシートは、快適な通常モードから、低い位置で身体をしっかりとホールドする、F1マシンのようなシートポジションへと切り替えることができる。

ドライバーが車両と一体化した没入空間をコンセプトに、ステアリングホイールの奥に配置された3枚のガラスパネルに、様々なドライブ情報をホログラフィックに投影。また、2種類のモードが用意されたステアリングホイールには、F1マシンと同様にオーバーテイクボタンが導入されており、スイッチに軽く触れるだけで、瞬時に追加のモーターパワーを引き出すことができる。

ドライバーオリエンテッドな前席とは対照的に、後席はパウダー状の雪が敷き詰められ、究極の快適空間を実現。 車内での居心地の良さを最大限に高めるため、シートポジションを記憶するメモリーフォームが導入された。 雪に覆われた山々をイメージした純白のベンチシートは継ぎ目のない1枚板で構成されており、パッセンジャーはまるで真っ白な雪の上に降り立ったようなピュアな印象を得るだろう。

3基のモーターをインテリジェントに制御

ルノー・グループが独自開発したEV専用プラットフォーム「Amprミディアム」をベースに、アルピーヌが独自のチューンを実施。走行環境に合わせて、3基のモーターがアクティブに制御される。
ルノー・グループが独自開発したEV専用プラットフォーム「Amprミディアム」をベースに、アルピーヌが独自のチューンを実施。走行環境に合わせて、3基のモーターがアクティブに制御される。

EV専用プラットフォーム「Amprミディアム」をベースに、フロントに1基、リヤに2基の電気モーターを搭載。フル電動AWDパワートレインはアルピーヌ専用チューンが施され、インテリジェントトルクマネージメントシステムやアクティブトルクベクタリングが組み合わせられた。

走行中はフロントアクスルとリヤアクスルに搭載された3基の電気モーターが発生する、強大なトルクをインテリジェントに制御。リヤアクスルは左右ホイールそれぞれを、個別にトルク配分することで、あらゆるグリップレベルに対応するシャープなハンドリングを実現した。これにより、クロスオーバーでありながらも、A110のような軽快感が確保されている。

3基の電気モーターをアクティブトルクベクタリングで制御するテクノロジーは、これまで少量生産のハイパーカーにのみ採用されてきた技術。ミドルサイズセグメントのクロスオーバーでは世界初採用のテクノロジーとなる。

アルピーヌのフィリップ・クリーフCEOは、A390_βについて次のようにコメントした。

「A390_βは、5人乗りのA110をイメージし、アルピーヌらしいスポーツファストバックの投入を予告しています。このコンセプトカーが持つ洗練されたレーシングスピリットは、2025年以降にフランス・ディエップのファクトリーで生産される、市販仕様のパフォーマンスとドライビングエクスペリエンスを体現していると言えるでしょう。アルピーヌらしいドライビング体験をお届けすることを約束します」

6月のル・マン24時間を機会に発表された、アルピーヌのフル電動ハッチバック「A290」。

見えてきたA110以降のアルピーヌラインナップ「A290という数字が持つ意味」

アルピーヌが発表したフル電動ホットハッチ「A290」。アルピーヌらしいドライビングプレジャーと共に日常の使い勝手をかなり意識したニューモデルである。これによってA110のみのラインナップからついに脱却するが、A290以外にも今後続々と新型車を投入予定だという。ル・マン24時間でA290の発表を目の当たりにしたジャーナリストが今後の展開を予想する。

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ゲンロクWeb編集部

スーパーカー&ラグジュアリーマガジン『GENROQ』のウェブ版ということで、本誌の流れを汲みつつも、若干…