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Lamborghini Countach LPI 800-4
型破りでエッジの効いたキャラクターを未来に向けて発信
毎年8月、全米、そして世界中から多くのカーマニアを集めるモントレー・カーウイーク。その中でも最も早く、そして格式高く開催されるのが、モントレーの隣町、カーメルのクエイル・ロッジを舞台に行われる「ザ・クエイル:ア・モータースポーツ・ギャザリング」だ。
毎年それぞれにテーマを決めて開催されるこのイベントだが、今年のテーマのひとつは「ランボルギーニ カウンタックの生誕50周年」。今から50年前の1971年、ジュネーブ・ショーで、後に続くカウンタック・シリーズの始祖にあたる、プロトタイプの「LP 500」が発表されてから、今年はちょうど半世紀にあたることからそれが選ばれた。
スーパーカーブームを築いた初代をオマージュ
1970年代半ば、日本で巻き起こったスーパーカーブーム。この時の主役のひとつは、間違いなくランボルギーニ カウンタックだったといってもよいだろう。自動車というよりも、未確認飛行物体と呼ぶ方が適切であるかのように感じた、ベルトーネのマルッチェロ・ガンディーニの手による、低く、ウエッジシェイプの効いたボディ。最高速度300km/hを実現することができるV型12気筒エンジン。そして何よりシザース式のドア。何もかもがスーパーカーのスターとなるに十分なキャラクターを秘めていた。
その時の夢をもう一度というわけなのだろうか、それともこれがデビューの絶好のチャンスと考えられたのだろうか。ランボルギーニはモータースポーツ・ギャザリングで、ついにカウンタックの名を復活、「カウンタック LPI 800-4」のネーミングとともに、それを披露したのである。リリースにはわざわざその発音が「Coon-tach」であるという注釈まで添えて。ここでは自分が50年近く使ってきた、カウンタックのままで原稿を進めるが。(※編注:本来の発音は「Coon-tach=クンタッチ」であること示す。日本国内では1970年代当時にオリジナルモデルを「カウンタック」と呼び、今に至ってもこの呼称が人口に膾炙しているため、本稿でも「カウンタック」と呼ぶ)
随所に見られるランボルギーニのDNA
実際に完成し披露されたカウンタック LPI 800-4のエクステリアデザインは、最初のカウンタックがおそらくそうであったように、驚嘆と羨望の眼差しで会場の観客に迎え入れられたに違いない。デザインはもちろんランボルギーニ・チェントロスティーレによるもので、それを率いるミィティア・ボルケルトは「数年前からチェントロ・スティーレに保管されている初代カウンタック=LP 400を見るたびに鳥肌が立つほどに感動し、私やデザインチームの全員が、未来に向けたランボルギーニを造るためにここにいるのだということを思い出させてくれました。これは私たちのDNAの譲れない部分であり、そして本質です。初代カウンタックは、ランボルギーニのデザインDNAの基礎を作りました。一方で新しいカウンタックは、型破りでエッジの効いたキャラクターを未来に向けて発信していきます」とコメントしている。
確かに21世紀に生まれたカウンタック LPI 800-4のスタイリングを見ると、過去のモデルから採り込まれたモチーフとともに、新しいデザインが上手くまとめられていることがわかる。いかにもカウンタックらしい、横長で長方形のグリルデザインや(リトラクタブルではなくなってしまったが)ヘッドライト、六角形をテーマとしたホイールアーチやボディサイドのNACA式エアインテークなど、いずれも過去のカウンタックを彷彿とさせてくれる。乗車と降車は、もちろんあの有名なシザースドアから行う。
初代カウンタック開発チームの精神が先見的なハイブリッド技術に結実
それではこのボディに包み込まれるメカニズムはどうか。CEOとしてステファン・ヴィンケルマンがランボルギーニに戻ってきて、再び車名からその概要を容易に認識することが可能になった。このLPI 800-4に搭載されるパワーユニットは、780psの最高出力を発揮する6.5リッターのV型12気筒エンジンを縦置きミッドシップし、さらに以前シアンで実現されたマイルドハイブリッド機構を組み合わせた4WDだ。
チーフ・テクニカル・オフィサーのマウリツィオ・レッジャーニは「初代カウンタックを開発したチームは、ランボルギーニの先見的な技術アプローチを前進させ、予想もしなかった技術革新で、市販車最高のパフォーマンスを実現しました。その精神がランボルギーニR&D部門の原動力となり、LPI 800-4の先見的なハイブリッド技術に結実させ、ランボルギーニのV12モデルに求められる感動的なドライビングと最高級のパフォーマンスを生み出しています」と語る。
6.5リッターのV型12気筒エンジンは、それだけでも780psの最高出力を発揮し、また最大トルクも720Nmに達するが、ランボルギーニはギヤボックスとの間に34psの最高出力を瞬間的に発揮できるエレクトリックモーターを搭載。これは前でも触れたとおりシアンで採用された革新的かつ独特なアーキテクチャーで、マイルドハイブリッドとしては唯一電動モーターとホイールがダイレクトに接続されることになるため、V型12気筒エンジンの純粋な挙動を妨げることはない。また電動モーターの電源は、同じ重さのリチウムイオン電池と比較して3倍の電力を誇るスーパーキャパシタ。ただしこのスーパーキャパシタは、まだ研究中ということもあり、次期12気筒モデルに搭載される可能性は低い。
最高出力814ps、最高速度は355km/h!
軽量なカーボンファイバー素材によって成型されたモノコックタブとボディパネルの効果によって、カウンタックLPI 800-4は高いねじり剛性とともに、乾燥重量で1595kgという驚くべき軽量性を得ている。パワーウェイトレシオは1.95kg/ps。カーボンファイバーはフロントスプリッター、フロントウインドウやウイングミラー周り、エンジンボンネットカバーのエアインテーク、ロッカーパネルのほか、インテリアでも数多く使用されている。またルーフはボタン操作ひとつで不透明から透明へと透過率を変更できる、調光式ルーフとされている。
システム全体の最高出力では814psに達するカウンタック LPI 800-4だが、車名はそれからやや控えめな数字となっている。だが0-100km/h加速の2.8秒、0-200km/h加速の8.6秒、そして最高速度の355km/hは大いに魅力的な数字だろう。ちなみにカウンタック LPI 800-4の生産台数は112台。これは初代のカウンタックが、そもそもLP 112の型式で設計、生産されたことに由来するという。
REPORT/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)
PHOTO/Lamborghini S.p.A.
MAGAZINE/GENROQ 2021年 10月号
【SPECIFICATIONS】
ランボルギーニ カウンタック LPI800-4
ボディサイズ:全長4870 全幅2099 全高1139mm
ホイールベース:2700mm
乾燥重量:1595kg
エンジン:V型12気筒DOHC+モーター
排気量:6498cc
最高出力:574kW(780ps)/8500rpm
最大トルク:720Nm(40.8kgm)/6750rpm
モーター最高出力:34ps
モーター最大トルク:35Nm
トランスミッション:7速SCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ(リム幅):前255/30ZR20(9J) 後355/25ZR21(13J)
最高速度:355km/h
0-100km/h加速:2.8秒
【問い合わせ】
ランボルギーニ カスタマーセンター
TEL 0120-988-889
【関連リンク】
・ランボルギーニ 公式サイト
http://www.lamborghini.com/jp