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タブレットのような機能性を期待してはいけない
鉛筆の先を紙の上にのせ、いつものように滑らせると、黒鉛の芯が紙の表面で削られる感触を指先で感じながら、適度な抵抗感の中で文字を書いていく。誰もが慣れ親しんできた、ごく当たり前の感覚。
クアデルノは電子ペーパーと電子ペン入力を組み合わせた、薄型軽量の“電子文房具”だ。勘違いしないでほしいのは、情報端末ではないということ。こう書くと、色気をまったく感じないだろうが、実はクアデルノほど“感覚”に訴えかける製品はそうそうない。
パソコン、スマホ、タブレット、どんな端末も高度に進化し、アプリをインストールすることで様々な機能が追加できるが、クアデルノにタブレットのような機能性はない。ほとんど電力を消費しない電子ペーパーに印刷物のように文書を表示し、そこにペンで入力を行っていくだけ。堆く積まれていた紙を1枚の軽い端末の中に吸い込んでいき、そこに鉛筆で書き込みもできる。
“紙と鉛筆”の如き心地よさ
ほとんどの作業はパソコンのキーボードでできる。そう思って仕事をしてきた僕が、極めてアナログな価値に根ざすクアデルノの商品性に惚れ込んだのは、そのコンセプトの愚直さに他ならない。
誰もが普通に原体験を持っている“紙と鉛筆”。その体験を再現するところに拘っているから、実に違和感なく文房具として使いこなせるのだ。鉛筆の芯が紙の上で削られつつ、そこに筆致が生まれていく感覚。電子ペーパーならではの“紙のような表示”だけなら感動はしない。ところが、ペン先を走らせた時の感覚が組み合わさった時、そこに“紙と鉛筆”が再現される。
クアデルノの良さは、その感覚に訴えているところだ。ペンタブレットはお絵かきやちょっとした指示には使いやすくとも、PDF文書に細かく書き込みを行ったり、手書きでアイデアをまとめてみたりしてみると紙らしさをおおよそ感じることができない。紙の代わりにはならない。
もちろん、パソコンがあれば十分、あるいはタブレット端末で十分という人もいるだろう。しかし世の中は驚くほど紙で溢れている。なぜなら紙の方が便利、あるいは情報を把握したり、アクションを起こす時に便利なこともあるから。
ペーパレース時代の紙である
クアデルノに惚れたのは、そこにパソコンやスマートフォン、タブレットでは到達できない腑に落ちる感覚があったからだ。電子機器だがハイテク製品ではない。感覚に根差した製品であることがクアデルノを唯一無二のものにしている。
クアデルノに書類を積んでおき、パラパラと書類を見ながら、気になるところに書き込んでいく。電池消費が少ないからバッテリー残量は気にならない。そもそも紙との違いを意識すらしなくなってくる。
A4サイズで約350g、A5サイズで約251gと実に軽量。それでいて、手書きメモなら1万枚を収納できる。ペーパーレス時代にも紙の使い勝手がほしい。そんなふうに感じたことがあるならば、手にしても後悔することがないだろう。
REPORT/本田雅一(Masakazu HONDA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2020年 8月号
PRICE
A5サイズ:4万4800円(税込)
A4サイズ:6万4800円(税込)
評価
情報端末と思うと肩透かし。タブレットのような機動力を求めるなかれ。この製品は純粋な“文房具”。使う人の感性に訴えかける“紙と鉛筆”に近いフィーリングこそが生命線だ。
コストパフォーマンス:3
高速性・応答性:2
書き味:5
デザイン:3
読みやすさ:5
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