621PSのV8ツインターボを搭載する3列7シーター「BMWアルピナXB7」に試乗

621PSのV8ツインターボ搭載の3列7シーター「BMW アルピナ XB7」の意外な乗り味

BMW X7のマイナーチェンジに伴い、BMWアルピナ XB7も2023年モデルとなった。スペック上パワートレインに大きな変更は認められないが、フロントまわりのデザインがX7同様改められた。
BMW X7のマイナーチェンジに伴い、BMWアルピナ XB7も2023年モデルとなった。スペック上パワートレインに大きな変更は認められないが、フロントまわりのデザインがX7同様改められた。
BMWアルピナの誇るラグジュアリーSUV、XB7がベースとなるX7同様にマイナーチェンジを受けて外観が一新された。621PSを発揮する4.4リッターV8ツインターボを積む3列7シーターの実力を確かめた。(GENROQ 2023年9月号より転載・再構成)

BMW Alpina XB7

開発の手を弛めないアルピナ

2025年をもって商標をBMWに譲渡することを発表したアルピナ。今後はゴリゴリのスポーツ路線のBMW Mと双璧をなす、ラグジュアリースポーツ路線のサブブランドとして展開するのか? 先行きはまだ見通せない。

だが、その開発の手を弛めはしない。ベースモデルとなるX7のマイナーチェンジに伴い、アルピナの誇るラグジュアリーSUVのXB7が23年モデルとなった。スペック上パワートレインに大きな変更は認められないが、フロントまわりのデザインがX7と同様に変更された。新デザイン最大の特徴は上下に分割されたヘッドライトと、光ファイバーが内臓され、キドニーグリルを仄かに灯すアイコニックグローだろう。アルピナロゴの入ったリップスポイラーと相まって、新型XB7の強烈な存在感をさらに高めている。

専用ホイールと専用タイヤの組み合わせは、アルピナの伝統だ。もちろんデザインだけではなく、性能にこだわっている。テスト車は標準の21インチではなく、オプション装備となる伝統の20スポークデザインが美しい23インチ・アルピナ・クラシック鍛造ホイールを装着していた。4本で13kgの軽量化に成功したという。ピレリと共同開発した23インチタイヤは、前後ミックスサイズでフロント285/35ZR23、リヤ325/30ZR23となる。

2660kgながら“巡航”最高速度は290km/h

上質な素材が用いられた室内も当然最新世代のBMWデザインだ。大きな存在感を放つカーブドディスプレイはブルーとグリーンを基調とした配色がアルピナを主張している。最新の運転支援システム、BMWドライビング・アシスト・プロフェッショナルも採用されており、デザインも技術もすべて一新されている。

アルピナ独自のチューニングが施された4.4リッターV8ツインターボエンジンは、48Vマイルドハイブリッドシステムを採用し、巧みな動力配分を実現したと謳う。最高出力621PS、最大トルク800Nmを発揮し、同じ4.4リッターV8ツインターボを搭載するX7 M60iと較べ、最高出力で91‌PS、最大トルクで50‌Nm上回る。アルピナ仕様の大型インタークーラーにラジエーターを追加し、断面が改良されたクーラントホースなどの高性能クーリング・システムでさらに進化した賜物だろう。2660kgという重量級ながら、0-100km/h加速4.2秒で、アルピナがこだわる“巡航”最高速度は290km/hを誇る。

マイチェン前のXB7試乗経験はなく、初対面となったテスト車は恐ろしく車高が低い。どうしたことかと案じたが、これはスポーツプラスモードに設定されていたためだった。アルピナ独自のチューニングが施されたエアサスは、走行状況やモード選択に応じて車高調整が可能だ。スポーツモードまたは160km/h超で車高は20mm下がり、スポーツプラスモードまたは250km/h超で車高はさらに20mm下がる。ちなみに悪路走行では30km/h以下で最低地上高が40mm上げられる。

ダイナミクスと乗り心地の両立こそアルピナの真骨頂

ドライビングダイナミクスと快適な乗り心地を両立させるのがアルピナの真骨頂だ。ところが走り出すと、その乗り味は明確に硬い。以前試乗したX7 M60iは乗り心地の良さが印象的だった。直前に試乗したスタイリッシュな4ドアクーペ、B8グランクーペと較べても硬いほどでこれは意外だった。そのぶん山道や高速道路をハイスピードで走る場面では、魅力を放つかもしれないが、今回の試乗ではその領域を試せなかった。

テスト車にはオプションのシフトパドルが装備されていた。標準では伝統のスイッチ式ではなくパドルレスとなる。運転支援システムの高度化に伴い、ハンズオフ機能が作動する前のレベル2自動運転では、ステアリングに触れていることが求められる。そういったセンサー類を内蔵したステアリングをアルピナ独自で採用することはもはや困難だという。とはいえ2年後のブランド譲渡まではその信念を貫いてほしいものだ。

REPORT/吉岡卓朗(Takuro YOSHIOKA)
PHOTO/平野 陽(Akio HIRANO)
MAGAZINE/GENROQ 2023年9月号

SPECIFICATIONS

BMWアルピナXB7アルラッド

ボディサイズ:全長5180 全幅2000 全高1835mm
ホイールベース:3105mm
車両重量:2660kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:4394cc
最高出力:457kW(621PS)/5500-6500rpm
最大トルク:800Nm(81.6kgm)/1800-5400rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
タイヤサイズ:前後285/45R21
0-100km/h加速:4.2秒
最高巡航速度:290km/h
環境性能(WLTCモード)
燃料消費率:7.3km/L
車両本体価格:2740万円

【問い合わせ】
ALPINA CALL
0120-866-250
https://alpina.co.jp/

BMW X7を新旧比較

「どこが変わって、どこが変わってない?」 ラグジュアリーSUV「BMW X7」を新旧比較

各メーカーからフラッグシップクラスのSUVが相次いでリリースされ、かつてのオフロードユースをイメージさせるSUVから、ショーファードリブンにも対応するラグジュアリーSUVへと様変わりを見せて激戦区を形成している。これまでラグジュアリーSUVカテゴリーで存在感を示してきたBMW X7も、同社のフラッグシップサルーンである7シリーズのフルモデルチェンジに合わせ新型X7を発表した。旧型から新型への進化具合を概観する。

大幅に改良された「BMW アルピナ XB7」の走行シーン。

非公開: 最高出力621ps、巡行最高速度290km/hを誇るラグジュアリーSUV「BMW アルピナ XB7」が日本導入【動画】

アルピナ初となるラグジュアリーパフォーマンスSAV「BMW アルピナ XB7」は、2020年の発売以来、グローバルな評価を獲得している。今回導入が決まった2023年モデルは、最新世代の4.4リッターV型8気筒エンジンを搭載し、よりシャープなデザイン、最先端のドライビングアシスト・システム、コネクティング・オプションを含め、大きな進化を果たしたという。日本における予約オーダーがスタートしたBMW アルピナ XB7の日本導入時期は2023年夏を予定している。

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著者プロフィール

吉岡卓朗 近影

吉岡卓朗

大学卒業後、損害保険会社に就職するも学生時代から好きだったクルマのメディアに関わりたいと、1999年に…