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Aston Martin Aramco Cognizant Formula One
キャッチコピーは「サムライ魂」
2023年F1世界選手権第17戦、日本グランプリが幕を開けた。秋に開催される日本GPとしては、これが最後になるかもしれない鈴鹿サーキットには、公式プログラムがスタートする前の木曜からファンが殺到。2度のフリー走行が行われた金曜日も、前年比20%増の集客で、日曜はフルキャパシティの状態だという。
そんな鈴鹿に並々ならぬ意気込みでやってきたのが、前半戦で快進撃を続け、5月には2026年からのホンダとのパートナーシップを発表するなど、今シーズンの台風の目と言っていいアストンマーティン・アラムコ・コグニザント・フォーミュラ・ワン・チームだ。
前戦シンガポールGPでは、予選でのランス・ストロールの不運なクラッシュ、そして決勝でのフェルナンド・アロンソのパフォーマンス低下によって、シーズン初の無得点に終わってしまったが、チームは日本GPを前に「サムライ魂」というキャッチコピーのPRをSNSを中心に積極的に展開。アロンソ、ストロールともに日本GP専用の白基調のスペシャルカラーに彩ったヘルメットを用意して現れた。
常に100%でいるというプレッシャー
そうした意気込みが功を奏したか、金曜午前のFP1ではアロンソが6位、ストロールが10位。午後のFP2ではアロンソが6位、ストロールが11位と好位置につけている。そこでセッション終了直後、チーム代表のマイク・クラックに話を聞くことができた。まず今シーズンの好調ぶりについて話を向けてみた。
「とても強いシーズンと言える。昨年のチャンピオンシップでは55ポイントで7位だったのに、現時点で200ポイント以上を獲得。表彰台フィニッシュは7回だからね。シーズン序盤、我々は2番目に強いチームだった。フェラーリも強かったけどミスが多かった。一方メルセデスとマクラーレンはマシンをアップグレードして我々よりも進歩したが、開幕時は我々の方が上だったからね」
彼の言う通り、モナコGPでアロンソが2位を獲得したところまでは、常にトップクラスのポテンシャルを発揮してきたが、それ以降は好不調の波が大きくなっているように感じられる。
「我々は今、開発というレースの最中にある。ライバルに比べると我々の組織はまだ小さい。トップチームは様々な経験を積み慣れているが、我々はそうではない。だからチームとして学ばなければならない。そのためにパーツを持ち寄り、正しい開発を続けるだけでなく、ミスをしないことが大切なんだ。しかも常に100%でいることがプレッシャーになる。チームとして、このプレッシャーにどう対処するかを学ぶ必要がある」
2026年は最高のパワーユニットで
そのための解決策のひとつが、5月のモナコGP終了の翌日から移転作業が始まったシルバーストーン脇の新工場の存在だ。
「私たちはまだチームを発展させているところです。来年には新しいインターンを迎え、シミュレーターを導入し、インハウスでより多くのパーツを作れるようになります。また新しい風洞施設も稼働することになっています。そのうえで開発時間を短縮し、より多くのパーツを同時に生産する方法を開発する必要があるのです。これは少々時間がかかることですが」
そして彼らの未来を決める、もうひとつの重要なピースが、2026年シーズンからの独占使用が決定したホンダ製パワーユニットとなる。
「ホンダは素晴らしいパートナーだ。彼らは2026年も最高のパワーユニットを作ってくれると信じている。エンジンだけでなく、バッテリーも重要な要素になるからね。そのためには、自分のシステムのトピックを明確にする必要がある。そこで我々は今、ワーキンググループを立ち上げているところだ。我々は非常にオープンな関係にある。これからの2年間はその準備期間としてとてもいいと思っているよ」
フレキシブルウイング規制は影響なし
では、日本GP初日の結果について、チームとしてはどう評価しているのだろうか?
「鈴鹿はとてもいい場所で、いいサーキットだからね。僕たちはみんな、ここに来るのが大好きなんだ。今日はフェルナンド、ランス共に悪い1日ではなかった。だから今は、予選の準備と、今日使用した各タイヤのデータを比較して、明日以降の週末と、来年に向けて正しい選択をすることだ」
一方、金曜のフリー走行を見ていて気がついたのが、これまでたわんだり、動いたりしていた、いわゆる“フレキシブルウイング”に規制がかかり、どのマシンのウイングも固く動かなくなったことだ。この規制変更はAMR23のパフォーマンスに影響を与えているのだろうか?
「我々には特に影響はないね。特に調整を行う必要もなかった」
最後にこの週末の目標を聞いてみた。
「2台ともポイントをゲットすること。それができれば良い週末になるだろうね。表彰台が獲得できれば、なおさらだね」