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CHEVROLET CAMARO FINAL EDITION
大きくパワフルで速いクルマを信奉するなら
たとえテスラが50万台売れたとしても(昨年の世界販売台数は180万台強)、巨大な米国の自動車マーケットに占める割合はまだ3%ちょっとである(もちろんそれでも大したものだが)。何しろ米国の昨2023年の自動車販売台数はおよそ1560万台と日本の3倍以上。州が違えば別の国とも言われるアメリカ合衆国全体では、今なお大きなボディに大きなエンジンを積む車への需要は底堅い。
ちなみにそのうち車種別のトップ3の顔ぶれは長年変わらず、いわゆるビッグ3、すなわちGM(昨年はシルバラードが約55万台)とフォード(75万台)、ラム(旧ダッジ、45万台)のピックアップトラックである。昔ほどではないとはいえ、中西部で走っているのはピックアップばかりで日本車もテスラも珍しいと言われるゆえんである。
戦後日本が憧れた豊かなアメリカを象徴するものが、自動車だったことは言うまでもない。昭和、平成と様々な紆余曲折を経た今なお、アメリカ抜きの日本は考えられない。自動車産業もユーザーも絶大な影響を受けて来た。その中でも当時の若者の憧れの的は、ベビーブーマー世代(日本でいう団塊の世代)をターゲットにしたスポーティなクーペであり、その代表格が「シボレー カマロ」である。
大きくパワフルで速いクルマを無条件に信奉してきた我々昭和オヤジにとっては信じられないことだが、1967年のデビュー以来、もうすぐ60年にもなろうという歴史のページが一旦閉じられるという。その掉尾を飾るモデルが伝統のV8エンジンを積んだ高性能モデルの「カマロSS」をベースにした「ファイナル エディション」である。
記念プレートが備わるコクピットに盛り上がる
シボレー カマロが、ひと足先の1964年に発売されたフォード マスタングへの対抗馬として生まれたことはご存知の通り。その後はライバルとして競い合いながら、「ポニーカー」や「スペシャルティカー」と呼ばれる新たなジャンルを開拓してきた。実用的な“自家用車”から脱した日本の自動車界がトヨタ セリカやダットサン フェアレディZなどで追随したこともまたご承知のとおり。今でこそ主戦場は異なるかもしれないが、長年のお手本だったのである。
2024年型「カマロ ファイナル エディション」は、2016年デビューの通算6代目、その前の5代目モデル(一時空白期間があったが2010年に復活)のシャープで逞しいマッスルカースタイルを踏襲したフロントエンジン、後輪駆動の2ドアクーペである。全長×全幅×全高は4785×1900×1345mmとさすがに立派な体格だが、SUV全盛の昨今では意外にコンパクトではないかと感じられるから不思議である。
もっとも、ファイナル エディション専用装備のレカロ製パフォーマンス バケットシートに包まれて眺めると、ウエストラインとダッシュボードの見切り線が高く、バスタブに沈み込んだようなドライビングポジションが古典的だが、オジサンたちはこれが当たり前だったのでかえって落ち着く。ステアリングホイールとグローブボックスにも記念のプレートが備わっている。
「これこれ、これだよ」と魅了される回転フィール
タイヤサイズはフロントP245/40ZR20、リヤP275/35ZR20。最高出力333kW(453ps)/5700rpm、最大トルク617Nm/4600rpmを発揮する6.2リッターOHV V8エンジンを搭載する。濃密で滑らかな、湿度の高い感じでしっとりとした回転フィーリングが魅力だ。
6代目カマロには2.0リッター直4ターボモデルも設定されていたが、やはりその真髄は自然吸気の大排気量V8モデルである。ファイナル エディションはSS同様、6.2リッターOHV V8エンジンを積む。伝統的とは言ったが、最新のスモールブロックV8(第5世代といわれるLT1型)は、バルブ駆動は従来通りのOHVを踏襲しているものの、それ以外は古風どころか最新式である。
現在のシボレーV8はブロックもヘッドもオールアルミ製で、ダイレクトインジェクションに可変バルブタイミングやアクティブフューエルマネジメントと呼ぶ気筒休止機構(軽負荷時はV8の半分のシリンダーを休止)を搭載、シフトパドル付きのATは何と10段だ。
最高出力と最大トルクは333kW(453ps)/5700rpmと617Nm/4600rpmである。実際に一般道でも高速道路でもクルージング時には頻繁にV4に切り替わるようだ。最近のV8ターボは燃焼効率を重視して気筒当たり500cc程度が一般的だが、100mmを超すボア径のオーバースクエアを維持するカマロのV8は、いかにも余裕綽々と回る。濃密で滑らかな、湿度の高い感じでしっとりとした回転フィーリングは、とりわけ3000rpmから5000rpmにかけて滔々とあふれ出す水のように分厚くなり、これこれ、これだよと魅了される。尽きることのないかけ流し温泉のような豊かさだ。もちろん、踏めば精悍なビートを感じさせながら直線的に盛り上がる。4種類のドライブモードのトラックを選べば、スロットルオフ時にバリバリという排気音も加わるし、実際に0-60mph加速4.0秒の駿足である。
最新技術を取り入れつつも逞しく骨太
磁性流体によって減衰力を制御するマグネティックライドコントロール(電子制御ダンパー)を標準装備する足まわりは、引き締まってはいるが、もはやスパルタンでも大味でもなく、フラットで快適な乗り心地と正確なハンドリングをもたらしてくれる。あえてコーナーでパワーをかけても安易にリヤに20インチタイヤがブレークすることもなく(LSDも標準装備)、絶大なトラクションで猛然と加速するだけである。
最新の制御技術を取り入れながら、逞しく骨太な、かつ大らかで古風な雰囲気を絶妙に残しているカマロの次期型が電動化するかは分からないが、シボレーはこの塩梅を維持するために腐心しているはずである。
REPORT/高平高輝(Koki TAKAHIRA)
PHOTO/平野陽(Akio HIRANO)
SPECIFICATIONS
シボレー カマロ ファイナル エディション
ボディサイズ:全長4785 全幅1900 全高1345mm
ホイールベース:2810mm
車両重量:1710kg
エンジン:V型8気筒OHV
排気量:6168cc
最高出力:333kW(453PS)/5700rpm
最大トルク:617Nm(62.9kgm)/4600rpm
トランスミッション:10速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前ストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前P245/40ZR20 後P275/35ZR20
車両本体価格(税込):940万円
【問い合わせ】
GMジャパン・カスタマーセンター
TEL 0120-711-276
【関連リンク】
・GMジャパン 公式サイト
https://www.chevroletjapan.com/