「史上最大のミニ」の 新型「MINI カントリーマン」に試乗

「ホントにミニ?」と思わせる史上最大サイズの新型「MINIカントリーマン」に試乗

果たしてこれはMINIなのだろうか──? 実車を目の前にして、これほどまでに困惑した経験ははじめてのことだった。新型MINI「クロスオーバー」改め「カントリーマン」は、それほどまでに大きく、デザイン的なアイコンも大胆な解釈で再定義している。では、走りはどうだろう? 4WDの上級モデル2台を連れ出して確かめた。
手前がMINIジョンクーパーワークス・カントリーマン・オール4、奥がMINIカントリーマンSオール4。
果たしてこれはMINIなのだろうか──? 実車を目の前にして、これほどまでに困惑した経験ははじめてのことだった。新型MINI「クロスオーバー」改め「カントリーマン」は、それほどまでに大きく、デザイン的なアイコンも大胆な解釈で再定義されている。では、走りはどうだろう? 4WDの上級モデル2台を連れ出して確かめた。(GENROQ 2024年7月号より転載・再構成)

MINI Countryman S All 4 & John Cooper Works All 4

「クロスオーバー」から「カントリーマン」へ

果たしてこれはMINIなのだろうか──? 実車を目の前にして、これほどまでに困惑した経験ははじめてのことだった。新型MINI「クロスオーバー」改め「カントリーマン」は、それほどまでに大きく、デザイン的なアイコンも大胆な解釈で再定義している。では、走りはどうだろう? 4WDの上級モデル2台を連れ出して確かめた。
MINIカントリーマンSオール4(右)は566万円、MINIジョンクーパーワークス・カントリーマン・オール4(左)は667万円。

堂々と「ミニ史上最大SUV」を謳い、またこれまでの「クロスオーバー」から名前を変えたことで、何かと話題になっているのが「ミニ・カントリーマン」。「BMW MINI」がデビューしたのは2001年のことで(先日発表されたミニ・クーパーはBMWミニとして4世代目)、それ以降次々とモデルを増やしてきたファミリーの中にあって、2010年登場のカントリーマンは初代モデルから「そんな図体じゃそもそもミニじゃないだろ」と賛否両論あったSUVだが、いわばマニアックな3ドアモデルに対して、より高い実用性を求めるユーザーに応える役目を担ってきた。偉大なご先祖様の名前を受け継ぎながら、時代の要請に合わせつつ成功作として代を重ねているのだから、たとえオリジナルのBMCミニを愛するファンが何と言おうと、並大抵の仕事ではない。

ラインナップはガソリンにディーゼル、EVまで

S ALL4とJCWはともに2.0リッター4気筒ターボエンジンを搭載。ただしチューニングが異なり、前者は204PS/300Nm、後者は317PS/400Nmとなる。ヘッドカバーのデザインは両車共通だ。
S ALL4とJCWはともに2.0リッター4気筒ターボエンジンを搭載。ただしチューニングが異なり、前者は204PS/300Nm、後者は317PS/400Nmとなる。ヘッドカバーのデザインは両車共通だ。

小さくないミニとして生まれたカントリーマンは、ご存知のように日本では商標登録の関係でその名称を使えなかったが、3代目に当たるこの新型で晴れて「クロスオーバー」改め「カントリーマン」と、欧州市場などと同じ車名を名乗ることになった。昨年末に発表された日本仕様は、高性能モデルのジョンクーパーワークス(JCW)とSに加え(ともに2.0リッター4気筒ガソリンターボ)、カントリーマンC(1.5リッター3気筒ガソリンターボ)とカントリーマンD(2.0リッター4気筒ディーゼルターボ)がラインナップされており、さらに今年3月にはバッテリーEVモデル2車種も発売された。その中から今回はJCWカントリーマンALL4とカントリーマンS ALL4を取り上げる。「ALL4」とは電子制御多板クラッチによってオンデマンド制御する4WDモデルのことだ。

サイズはBMW X1とほぼ同等

従来、ミニの「S」といえばそれなりに尖ったスポーティモデルだったが、新型では高級感すら感じさせる乗り味に。位置付けが変わった?
MINIカントリーマンSオール4。従来、ミニの「S」といえばそれなりに尖ったスポーティモデルだったが、新型では高級感すら感じさせる乗り味に。位置付けが変わった?

新型カントリーマンは先代モデルよりもさらに明確に大きくなった。JCWカントリーマンの外寸は全長4445×全幅1845×全高1645mmというもので、従来型よりもそれぞれ130mm、25mm、65mm拡大している。またホイールベースはBMW X1やX2と共通の2690mmで、先代比+20mmとなる。もはや立派なCセグメントSUVである。八角形のグリルと変形六角ヘッドランプが特徴的な新型は、シンプルで張りのある面構成で力強さを打ち出しながらも、各部にミニのモチーフを取り入れており、そう言われるとミニかもしれない、と感じさせられる。デザイナーはさぞかし苦労したことだろう。

インテリアにはエンタメ機能が盛りだくさん

S ALL4のインテリア。トリムラインは「クラシック」「フェイバード」「JCW」から選択でき、こちらは「フェイバード」。エコ素材の採用にも積極的だ。
S ALL4のインテリア。トリムラインは「クラシック」「フェイバード」「JCW」から選択でき、こちらは「フェイバード」。エコ素材の採用にも積極的だ。

比較的簡潔なエクステリアに対してインテリアは凝りに凝っている。ドアを開けた際の驚きというか、ギャップの大きさが“売り”のひとつかもしれない。ダッシュボードやドアトリムはザクッと編み上げたニットのような素材(リサイクルポリエステルという)が使われており、ダッシュは内部から間接照明のようにアンビエントライト(ドライブモードによってパターンと色が変わる)が投影される。

そして何よりも目立つのがセンター配置の大きな円形有機LEDタッチスクリーンだ。操作系はこのディスプレイとその下に並ぶスイッチに集約されており(小さなATセレクターもここに設けられている)、速度などの情報は円形スクリーンの上縁部、またはコンバイナー式のヘッドアップディスプレイに表示され、通常のメーターパネルはもうドライバー正面には存在しない。おかげで室内は開放感にあふれ、実際にも十分広々している。

アップライトに座るリヤシートの足元も広く(ただしバッテリーEVではフロアが高くなるはずだ)、さらにリクラインとスライド(13cm)も可能である。大きな円形のディスプレイは選択する走行モードによって表示される数字の字体までレトロなグラフィックに変わるなど、どこまでもこだわりが見て取れる。しかも「スポーツ」や「ノーマル」などではなく、「ゴーカート」や「コア」「「タイムレス」などと名付けられており、走行機能に加えてライティングやサウンドまで「エクスペリエンス」スイッチで選択することができる。ミニはもともと多彩なカラーやトリムを自分好みに選べたが、ここまで徹底的にミニ流を貫かれるともう使いにくいなどと不満を言う気にもならない。こういうセンスを好むユーザーには堪らない魅力に映るのだろう。

走りは洗練を感じさせるほどに進化

アダプティブサスペンションを標準装備するJCWは、S ALL4より15mm車高が低くなる。ゴーカート・フィーリングはより洗練された。
アダプティブサスペンションを標準装備するJCWは、S ALL4より15mm車高が低くなる。ゴーカート・フィーリングはより洗練された。

フロントに横置きされるエンジンはこちらもX1/X2と共通のB48系2.0リッター4気筒ターボで、JCWは233kW(317PS)/5750rpmと400Nm/2000-4500rpmを発生、一方のカントリーマンSは150kW(204PS)/5000rpmと300Nm/1450-4500rpmを生み出す。どちらも7速DCTの電制4WDだが、JCWには極太の握りのステアリングホイール裏にシフトパドルが備わる。X1 M35i xDriveと同じスペックのハイパワー版4気筒ターボはさすがに強力で、0-100km/h加速が5.4秒というデータも納得というほどの加速を見せる。もちろんカントリーマンSでもパワーに不足はないが、こちらはマニュアルシフトする手立てがないので(D/Lレンジのみ)山道ではちょっと積極的になり切れない。

ラフでヤンチャなフィーリングは鳴りを潜め

さらに20インチタイヤにアダプティブサスペンション(可変ダンパー)、JCWパフォーマンスブレーキ(Lパッケージ・オプションの一部)を備えるJCWは、ビシッと引き締まった活気あふれるハンドリングの代わりに、低速ではいささか上下動が気になるハードめの乗り心地だが、思った以上に洗練された大人びた印象を抱いた。ミニは以前のクロスオーバーも含めて、良く言えば活気あふれるヤンチャな挙動(ゴーカートフィーリングとアピールしていた)でエッジの効いたキャラクター、別の言い方ではちょっとガサツでラフな感じが拭えなかったものだが、新型はたとえJCWでもその雑な手触りがなくなり、いわばプレミアムな洗練が感じられる。斬新さとユニークさだけでなく、中身もしっかり成長しているのである。

REPORT/高平高輝(Kouki TAKAHIRA)
PHOTO/神村 聖(Satoshi KAMIMURA)
MAGAZINE/GENROQ 2024年7月号

SPECIFICATIONS

MINIカントリーマンSオール4

ボディサイズ:全長4445 全幅1845 全高1660mm
ホイールベース:2690mm
車両重量:1640kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1998cc
最高出力:150kW(204PS)/5000rpm
最大トルク:300Nm(30.6kgm)/1450-4500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク
タイヤサイズ:前後225/55R18
車両本体価格:566万円

MINIジョンクーパーワークス・カントリーマン・オール4


ボディサイズ:全長4445 全幅1845 全高1645mm
ホイールベース:2690mm
車両重量:1680kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1998cc
最高出力:233kW(317PS)/5750rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/2000-4500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後245/40R20
車両本体価格:667万円

【問い合わせ】
MINIカスタマー・インタラクション・センター
TEL 0120-329-814
https://www.mini.jp

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著者プロフィール

高平高輝 近影

高平高輝

大学卒業後、二玄社カーグラフィック編集部とナビ編集部に通算4半世紀在籍、自動車業界を広く勉強させてい…