フル電動ラグジュアリー3列シートSUV「ボルボ EX90」に試乗

ボルボの最新ラグジュアリーSUV「EX90」にロサンゼルスで試乗「3列シートを持つフル電動モデルの実力」

EVのフラッグシップモデルとなるEX90に試乗した。
EVのフラッグシップモデルとなるEX90に試乗した。
先日、2030年EV専業化目標の撤回を発表したボルボ。将来の完全電動化は視野にいれつつも一部をPHVとして残すようだ。そんな岐路に立つボルボだが、EVのフラッグシップモデルとなるEX90にようやく試乗することができた。さて、その出来はいかに!?(GENROQ 2024年11月号より転載・再構成)

Volvo EX90

一気に変わったシャシー性能

先日、2030年EV専業化目標の撤回を発表したボルボ。将来の完全電動化は視野にいれつつも一部をPHVとして残すようだ。そんな岐路に立つボルボだが、EVのフラッグシップモデルとなるEX90にようやく試乗することができた。さて、その出来はいかに!?
2030年EV専業化目標の撤回を発表したボルボ。将来の完全電動化は視野にいれつつも一部をPHVとして残すようだ。

EV時代を迎え、ボルボのシャシー技術が長足の進化を遂げている。モデル名に3ケタ数字を用いた2000年くらいまでのボルボは、サスペンションがとにかくソフトで、俊敏なハンドリングさえ期待しなければこれはこれで納得のいく仕上がりだった。ところが2010年前後に「スポーティな味付け」を求め始めたあたりからサスペンションセッティングの迷い道に入ってしまい、これはSPA/CMAと呼ばれる新世代プラットフォームを用いるようになると一気に顕在化した。

すなわち、サスペンションストローク初期の動きが渋く感じられるうえに、足まわりに強い衝撃が加わると微振動が尾を引く傾向が見られるようになったのだ。その症状は次第に軽くなったほか、トーマス・インゲンラートのデザインがあまりに魅力的で、しかも安全装備が充実しているわりに価格はお手頃だったため、この時期にボルボは販売台数を一気に伸ばすことになったが、シャシーの総合評価という点ではドイツ・プレミアム御三家には及ばないというのが私なりの捉え方だった。

ところが、初のEV専用プラットフォームを得て誕生した「EX30」に試乗して、ボルボのシャシーに対する見方が一気に変わった。前述した足まわりの突っ張った印象が消え、微振動もほとんど感じられなくなったのだ。ハードコーナリング時の接地性などはまだ改良の余地があったけれど、この完成度であればドイツ・プレミアム御三家と真っ向勝負ができると思われたのである。

ボルボの最新EVである「EX90」をロサンゼルス周辺で試乗して、その印象はさらに強まった。

2.5tを越える重量級ながら俊敏なステアリング

先日、2030年EV専業化目標の撤回を発表したボルボ。将来の完全電動化は視野にいれつつも一部をPHVとして残すようだ。そんな岐路に立つボルボだが、EVのフラッグシップモデルとなるEX90にようやく試乗することができた。さて、その出来はいかに!?

EV化を進めるボルボのフラッグシップモデルであるEX90は全長5mを越すボディに111kWhのバッテリーを搭載。高性能版のツインモーター・パフォーマンスであれば前後に計2基のモーターを積んで最高出力517PSと最大トルク910Nmを発揮し、0-100km/h加速を4.9秒でクリアする俊足ぶりを披露する。そのわりに最高速度が180km/hに抑制されているのは、安全性に対するボルボらしい配慮によるものだ。

イギリスでは税込1800万円を超える高級車とあって、その乗り心地はしなやかで快適そのもの。前述した微振動も、多少の個体差こそあったものの概ね解消されていた。ちなみにEX90のプラットフォームはSPAの進化版でSPA2を名乗るが、試乗会に出席したボルボ関係者によればEV化に際して大改良を施した結果、従来のSPAと共通する部分は決して多くないという。

しかし、EX90で本当に驚いたのは、2.5tを越える重量級ボディをしなやかな足まわりで支えているにもかかわらず、コーナリング時にもほとんど遅れを感じさせないステアリングレスポンスのよさにあった。もっとも、それは一部のスポーツカーのように過剰な反応を示すものではないけれど、素早く転舵してもスッとノーズが切れ込んでいく様子は、ソフトな乗り心地からは想像がつかないほど爽快で自然なレスポンスだった。

その秘密は、リヤモーターと組み合わされたデュアル・クラッチ・トルクベクタリングにある。

サステナブル素材を用いつつ質感の高いキャビン

これはディファレンシャルギヤの代わりに2組のクラッチで左右の後輪に伝える駆動力を制御するもので、コーナーのアウト側により多くの駆動力を配分することによりスムーズなコーナリングを実現する。もっとも、駆動力制御はクラッチによる断続だけで増速は行われないため、グイグイと強く曲がる印象は薄いものの、それだけにドライバーの自然な感覚に見合った反応を示してくれる。

エクステリアデザインは、EX30同様、ストロボパターンを使ったりフロントグリルを塞ぐ(実はバンパー下に開閉式のエアインテークを備える)ことで未来感を醸し出しているが、その度合いはEX30より控え目で落ち着きが感じられる。一方のインテリアデザインは従来モデルの延長線上にあって極めて魅力的。しかも、サステナブル素材を用いながら質感の高いキャビンに仕上げている点が印象的だった。

先ごろEV化路線の見直しを発表したばかりのボルボだが、彼らは実直に自分たちのやるべきことをこなしている。その高い志は、EX90からもふんだんに感じられるはずだ。

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)
PHOTO/Volvo Cars
MAGAZINE/GENROQ 2024年 11月号

SPECIFICATIONS

ボルボEX90 ツインモーター・パフォーマンス

ボディサイズ:全長5037 全幅1964 全高1744mm
ホイールベース:2899mm
モーター
システム最高出力:380kW(517PS)/4200-6000rpm
システム最大トルク:910Nm(92.8kgm)
駆動方式:AWD
EV航続距離(WLTP):570-614km
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
0-100km/h加速:4.9秒
最高速度:180km/h

【問い合わせ】
ボルボお客様相談室
TEL 0120-922-662
https://www.volvocars.com

ボルボらしさを保ちながら、新時代の幕開けを象徴するエクステリアが与えられた「EX90」。

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ボルボ・カーズは、7シーターフル電動SUV「EX90」をスウェーデンのストックホルムにおいてワールドプレミアした。ラインナップのフル電動化に向けて、EX90はボルボ新時代の幕開けを象徴する1台になると宣言している。

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著者プロフィール

大谷達也 近影

大谷達也

大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌「CAR GRAPHIC」の編集部員…