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Lamborghini Revuelto
新時代にふさわしい電動スーパースポーツカー



先代にあたる「アヴェンタドール」からアーキテクチャーを一新した「レヴエルト」。電動化戦略「コル・タウリ」を推し進めるランボルギーニのフラグシップスーパースポーツだけあって、初のプラグインハイブリッドモデルであっても、そのミッドに搭載されるのは今や存在そのものが尊いV型12気筒自然吸気エンジンだ。この珠玉のエンジンに3基の電動モーターを組み合わせ、システム最高出力1015PSを発揮する、新時代にふさわしいゴージャスな電動スーパースポーツカーである。
今回のサーキット試乗イベントの趣旨はメディア向け試乗会ではなく、注文済みのカスタマー(あるいは既納客)向けの試乗会なので、3日間も開催されるという。万全のホスピタリティはもちろん、スペアカーなども含めて8台ものレヴエルトが一堂に会する様は壮観というほかない。
実のところレヴエルトは日本導入直後の昨夏、富士スピードウェイで開催されたサーキット試乗会でその性能を体感しているが、ウエットコンディションの富士は若干の恐怖体験だった。今回の鈴鹿サーキットは、冬の合間の暖かな快晴とあって、1015PSの圧倒的なパフォーマンスを存分に味わえそうだ。
エンジンの出力方向が従来とは逆転


ミッドに搭載されるのはL545型6.5リッターV型12気筒ドライサンプ式自然吸気エンジン。これに新開発の8速DCT(湿式)が組み合わされる。6498ccのV12は今どき珍しい95×76.4mmのショートストローク設計を採用し、最高出力825PS(607kW)/9250rpm、最大トルク725Nm/6750rpmと、高回転型の特性を強く打ち出している。モーターはフロントに2基、リヤに1基搭載され、システム最高出力1015PS(747kW)を発揮する。
レヴエルトの最大の特徴は、エンジンの出力方向が従来とは逆転し、新開発の8速DCTが横置きで搭載されている点である。ランボルギーニV12モデルの系譜は、ミウラからカウンタック、そしてアヴェンタドールへと連綿と続いてきたが、カウンタックからアヴェンタドールまでは、V12エンジンの前方に変速機を搭載してきた。それがレヴエルトではエンジン後方に変速機を横向きに配置しているのが面白い。
なお、リヤに横置きトランスミッションを採用したランボルギーニV12モデルは「ミウラ」と「エッセンサ SCV12」の2車種のみである。ランボルギーニ通の読者諸兄は、ぜひこのトリビアをメモしておいてほしい。
乗り心地とウエット性能を両立したランフラットタイヤ


試乗は非常にコンパクトなスケジュールで、到着してすぐにドライバーズブリーフィングで車両の使い方や走行時のルール(追い越し禁止)などの説明を受けたら、直後にピットに並ぶレヴエルトに案内される。ディズニーランド並みの素早いオペレーションに翻弄されつつ、指定された鮮やかなイエローの個体に乗り込む。
装着されるタイヤはフロント20インチ、リヤ21インチのブリヂストン製ポテンザスポーツで、驚くべきことにランフラットである。だが前回の雨の富士スピードウェイでも証明されたように、乗り心地とウエット性能を両立した、今後の新しいスタンダードを確立すると期待されるスーパースポーツ向けタイヤだ。
試乗枠はアウトラップとインラップを含む合計3周を2セットで、走行は先導車(レヴエルト)が2台の試乗車を引っ張るカルガモ方式。だが、私の前を走る試乗車に乗るのはGENROQ本誌でお馴染みのレーシングドライバー田中哲也氏なので、先導車のプロドライバーも車内に備えた無線機で「どんどん行きますよ!」とイケイケでペースを上げてくれる。
まずはスポルトモードから



レヴエルトには5種類のドライビングモードが用意されるが、まずは「チッタ」でコースインする。EVモードとも言えるチッタはゼロエミッション4WD走行が可能だ。ここから一般道走行むけの「ストラーダ」を飛ばしていきなり「スポルト」に切り替える。この時点で最高出力907PSだ。サーキットなどで車両の限界を試したい場合は最大1015PSを発揮する「コルサ」を選ぶが、それは2回目のセッションにとっておく。
ドライビングモードのほかに3種類のハイブリッドモードもあって、ハイブリッドモードには「パフォーマンス」「ハイブリッド」「リチャージ(充電)」の3種類が用意される。ドライビングモードと個別に設定可能なので13種類の組み合わせがあるという。それぞれのモード切り替えはステアリングに備わる2つのダイヤルで行う。左がドライビングモードの調整ダイヤルで、右がハイブリッドモードの調整ダイヤルだ。
ハイブリッドスーパースポーツだけあって、バッテリーから強力なモーターの出力がエンジンをアシストする。スプーンカーブあるいはシケインからの全開加速で凄まじい加速を堪能できるが、当然電力は有限である。走行前と走行後でバッテリー残量をチェックする余裕はなかったが、最終3周目の後半にはスローダウンして「リチャージに切り替えてください」と無線で指示が飛んできた。
コルサの方がフロントが引っ張ってくれる

鈴鹿のようなテクニカルかつチャレンジングなコースでは、フラグシップV12スポーツの大柄なボディを持て余すかと想像していたが、それはまったくの杞憂に終わった。S字コーナーなどは左右の切り返しも素早く、重心の低さとマスの集中によるバランスの良さに感動してしまった。できるだけ踏んでいきたい、まっちゃんコーナー(ヘアピンからスプーンカーブまでの右高速コーナー)もラインを選べば安心して踏んでいけた。ここは変速に手間取ると、安定性が失われる危険なコーナーだが素早い変速で不安感はなかった。
重心の低さ、マスの集中が好印象なのは、センタートンネルに駆動用バッテリーを配置しているためではなかろうか。従来トランスミッションとプロペラシャフトが占めたその場所は、108のパウチセル(ラミネートセル)で構成される高出力リチウムイオンバッテリー(電力量3.8kWh)が収まる。長さ1550mm、高さ301mm、幅240mmとなかなかのサイズだが、車体中央の低い位置に搭載することで重量増の影響を最小限にとどめている。
試乗1回目はスポルトで2回目はコルサで走行した。これまでのランボルギーニと同様にスポルトはまさに「ファンモード」。タイトコーナーあるいは中速コーナーでアクセルを踏んでいくとムズムズとリヤが出てくる。一方のコルサではスタビリティがグッと高まり、タイトコーナーはもちろん中速コーナーでも自信を持って踏んで行ける。コルサの方がフロントが引っ張ってくれる力を強く感じた。高速域で安定感を増す後輪操舵がスポルトもコルサも同様に働くとすれば、AWDの前後駆動力配分で調整していると考えるべきなのだろう。
電動ランボルギーニの新しい可能

サーキットを楽しめるレベルが全体的に一段上がっていることは間違いない。これは変速機が新開発の8速DCTになったこともあるが、モーターによる途切れることのない加速が安定感を増しているようにも思う。前述のとおりレヴエルトには3基の電気モーターが搭載される。フロントアクスルに2基の油冷式アキシャルフラックスモーター、8速DCT内に1基のラジアルフローモーターを内蔵する。当然フロントモーターは左右回転差を設けることでトルクベクトリング機能を備え、よりスタビリティを高め、あるいは回頭性を高めてくれる。これらのハーモニーが電動ランボルギーニの新しい可能性を示してくれたのだ。
プラグインハイブリッドということでブレーキはバイワイヤー式を採用するが、ペダルフィールは先代までのようなストロークで制動力を調整する印象はなく、硬くしっかりしたもの。今回は試乗会なのでヘアピンでもシケインでもギリギリまでブレーキを遅らせることはなかったが、安心感はかなり高まった。制動力も含めて隔世の感がある。
今回の試乗では、前述のブレーキともうひとつ変速機の進化による高速コーナリングの2つの安心感によって、2011年デビューの先代アヴェンタドールから12年分の進化を痛感した。これなら次の12年もカスタマーの心をしっかりと掴めるだろう。まさに電動ランボルギーニの新時代を保証する1台である。
REPORT/吉岡卓朗(Takuro YOSHIOKA)
PHOTO/Automobili Lamborghini
SPECIFICATIONS
ランボルギーニ・レヴエルト
ボディサイズ:全長4947 全幅2033 全高1160mm
ホイールベース:2779mm
車両重量:1772kg
エンジン:V型12気筒DOHC
総排気量:6498cc
エンジン最高出力:364kW(825PS)/9250rpm
エンジン最大トルク:725Nm/6750rpm
モーター最高出力:前220kW(299PS)/3500rpm 後110kW(150PS)/10000rpm
システム最高出力:364kW(1015PS)
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前265/35ZR20 後345/30ZR21
0-100km/h加速:2.5秒
最高速度:350km/h
車両本体価格:6543万2406円
【問い合わせ】
ランボルギーニ カスタマーセンター
TEL 0120-988-889
https://www.lamborghini.com/jp-en