太田哲也、新生シボレー コルベットの「ミッドシップ」を語る

「ミッドシップのコルベットってどうなの?」。太田哲也、新型シボレー コルベットを斬る!

太田哲也、シボレー コルベットを語る
数々のモンスターマシンを御してきたモータージャーナリストの太田哲也氏が、ミッドシップへと変貌した新型シボレー コルベットを語る。
レースシーンの第一線で活躍し、今なおジェントルマンレーサーとしてロータス カップ ジャパンに参戦するなど、精力的にモータースポーツの楽しさを発信している太田哲也氏。グループCをはじめとしてモンスターマシンを数多く操ってきた太田哲也氏にとって、伝統のFRレイアウトを捨てミッドシップモデルへと変貌したシボレー コルベットはどう映るのだろうか?

Chevrolet Corvette

これがコルベット!?

太田哲也、シボレー コルベットを語る
新型シボレー コルベットは、コルベットが伝統的に採用してきたフロントエンジン・リヤ駆動のレイアウトと決別し、リヤミッドにエンジンを搭載するミッドシップへと移行。センセーショナルなデビューを飾っている。

GMは今後すべてのモデルをEVにすると発表したにもかかわらず、新型コルベットをこのタイミングで登場させた。しかも今回からは、FRからミッドシップにレイアウト変更し、EV時代の流れと逆行するV8エンジンを搭載して1300万円~(※2023年モデルより)のバーゲンプライスだ。

結論から言うと、新型コルベットはとても魅力的だった。コルベットといえば、今までは大きなエンジンをフロントに搭載し、ロングノーズ/ショートデッキ・スタイルが定番だった。しかし今回からエンジンはミッドに搭載され、「これがコルベット!?」と驚かされるほど、まったく別のデザインに生まれ変わった。

またどこかノスタルジーを感じさせてくれた今までのコルベットのイメージとかけ離れ、フロントの折れ曲がった線で構成される形状が、最初馴染まない感じだった。けれどもステルス戦闘機のイメージをとり入れたという話を聞いたら、何故か納得してしまった。レシプロ機からジェット戦闘機への転換か。

フェラーリと見間違える?

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リヤミッドシップレイアウトを採用したことにより、従来のロングノーズ・ショートデッキから大幅にイメージチェンジ。スーパースポーツモデルの雄、フェラーリのミッドシップモデルにも近いスタイリングを纏う。

以前に国産自動車メーカーのジャーナリスト試乗会に行った時のこと。パーキングに駐めてあった赤のコルベットを見て、メ―カーの開発者から「太田さんは今日、フェラーリで来たんですね」と言われた。僕が乗ってきたのではなかったのだが、開発者でさえ、ぱっと見「フェラーリかな?」と見間違えるほど、新型コルベットのシルエットはコルベットっぽくない。

やはりミッドシップだとフォルムが似てくるのだ。ただしコルベットは他のミッドシップほどはサイドシルが大きくなくて、乗り降りがしやすい。レザー張りのラグジュアリーな雰囲気の室内は広く、ウインドスクリーン越しの視界もよい。アメリカ人は身体が大きいので、シートの前後リクライニング量も十分だった。

サーキット走行ではミッド効果を発揮

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GMジャパンはコルベットの試乗会をサーキットで行った。ストリートユースはもちろん、新型コルベットのポテンシャルはサーキットでこそ発揮されるというアピールだ。

総排気量6156ccのV型8気筒OHVエンジンを搭載しているミッドエンジン・スポーツカー。スペックからじゃじゃ馬をイメージする人もいるだろう。実際はどうなのか。

ところが、サーキット走行をしてみたら、ハイパワーだが扱いやすかった。古いイメージがあるOHVエンジンも低回転から力があり実用的だった。最近のミッドエンジン・スポーツカーはターボを付けたりしているが、コルベットはいまだにNAエンジン。最高出力は502ps、最大トルクは65.0kgmを誇る。大排気量とOHVの効果で、低回転域から段付きなくリニアにふけ上がり、意外なほどスムースで扱いやすい。

たとえばFRでハイパワーだと、後輪の荷重が少ないため、強くパワーをかけると後輪が空転し、コーナーでは簡単に横スライドしてしまう。もちろん現代のクルマは電子制御前提だから(例えばBMW M4などだと電子制御を働かせることを前提にクルマを構成している)、横滑りなどのトリッキーな挙動は抑えてくれるのだが、そうなると本来の性能を発揮できていない、とも言える。

ハイパワーを受け止める「度量」はミッドシップが上

太田哲也、シボレー コルベットを語る
6.2リッターV8OHVエンジンはリヤミッドに搭載。さらにその後方にはゴルフバッグすら収まるトランクスペースを用意する。

しかし、新型コルベットはミッドシップなので、常にリヤに荷重がかかり、後輪の接地力が高められるので、アクセルオンで唐突にリヤがブレイクすることがない。前提として扱いやすいのだ。さらに電子制御が介入してくるときも、穏やかで本当に危ないときだけアシストしてくれる感じで印象がよかった。一般的にミッドシップはジャジャ馬だと思われがちだが、実はハイパワーなFRレイアウトのクルマと比較すると、ミッドシップの方が安心してアクセルを踏むことができる。

FRレイアウトのクルマは、アクセルを踏んだときに簡単にドリフトして、確かにそれもスポーツカーを楽しむ要素のひとつと言えるだろう。だが、それも過ぎると、最高出力が500psぐらいあったりする場合、怖くてアクセルを踏めなかったりする。ハイパワーを受け止める「度量」はミッドシップのほうが高いのだ。

コルベットに乗ってみて、おそらく、ル・マンなどのスポーツカーレースに出ることを意識しているのではないかと思った。レーシングカーのベースとしては最適である。

公道でも快適な理由は実はミッドにある

太田哲也、シボレー コルベットを語る
前後足まわりにはダブルウィッシュボーンを備え、最高出力502psの大パワーを効率よく路面に伝える。筆者は予想以上に硬くないセッティングに対しても好印象だと語った。

公道を走ってみると思いのほか乗り心地がよく、足もガチガチではなかった。それもミッドシップの良さだといえる。ミッドは前後重量配分のバランスがよいので、公道では快適、サーキット走行もそこそここなしてしまう。少し説明しよう。

たとえば、FFレイアウトのクルマの場合、リヤサスペンションをかためないと限界領域ではアンダーステア特性となって曲がりにくくなる。ところがミッドシップだと、元来の素性がいいので足をさほどかためなくても、もともとの操縦安定性が高いマージンがある。乗り心地の良さと優れた操縦安定性を高い次元でバランスさせやすいのだ。

僕はいま、コルベットと同じくミッドシップレイアウトのアルピーヌ A110を通勤の足に使っているが、アルピーヌはいい意味で乗用車的要素を併せ持つ。コルベットもこの乗り味だったら通勤に使えるなと思った。これが現代のミッドシップの方向性なのだろう。

もっとアメリカ車は見直されるべきだ

太田哲也、シボレー コルベットを語る
まもなくハイパフォーマンス仕様の「コルベット Z06」も上陸する見込み。クーペ、コンバーチブル、Z06と、選択肢の広がりはユーザーにとっても歓迎すべきことだろう。

税込車両本体価格は1300万円~。試乗した時点では2000万円ぐらいするのかと思ったが、意外なほど安かった。これはGMの量産パーツを流用することで実現したプライスなのだという。

もはやフェラーリやランボルギーニは、頑張って働いたら買えるようなものではなくなった。コルベットはアメリカ人の感覚として、頑張ったら何とか手が届くイメージなのだそう。クルマ好きに夢を与えるという意味において、いい話だと思う。まさにアメリカンドリーム!

多くの日本人のクルマ好きにとって「アメ車」は食わず嫌い的な存在だが、新型コルベットに乗ってみて、もっとアメリカ車は見直されるべきだと思った。

TEXT/太田哲也(Tetsuya OTA)

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今もなお、ロータス カップ ジャパンへの参戦などサーキットドライブを積極的に楽しむジェントルマンレーサーであり、モータージャーナリストとしても活躍している太田哲也氏。かつてプロドライバーとして数多くのレースに参戦しモータースポーツの頂点を体験してきた太田哲也氏にとって、現代最高峰のパフォーマンスをもつランボルギーニ ウラカン STOとはどんなクルマに映ったのか? 富士スピードウェイを舞台に行われた試乗会で得た太田哲也氏のインプレッションをお届けする。

【SPECIFICATIONS】
シボレー コルベット
ボディサイズ:全長4630 全幅1940 全高1220mm
ホイールベース:2725mm
車両重量:1670kg
エンジンタイプ:V型8気筒OHV
総排気量:6156cc
最高出力:369kW(502ps)/6450rpm
最大トルク:637Nm(65.0kgm)/5150rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前245/35ZR19 後305/30ZR20
車両本体価格(税込):1300万円~

【問い合わせ】
GMジャパン・カスタマーセンター
TEL 0120-711-276

【関連リンク】
・GM 公式サイト
https://www.chevroletjapan.com

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