最終の空冷ポルシェを令和に愛でる! LONG-TERM REPORT Vol.4

ポルシェ 911(タイプ993)ロングタームレポート:第4回「もう、ピッカピカやで!」

993ロングタームレポート第4回
993ロングタームレポート第4回。
23年落ちのヤングタイマーとの愛を深めるために選んだ手段は、内外装のクリーニング。ポリッシャーでギュイーン! と磨いてピッカピカ♪ なんて思っていたら、いやいやこれがとっても奥が深いのであった。というわけで今回の「外装編」では、塗装から純正パーツの話まで、空冷予備軍には“耳ダンボ”なお話を交えながら徹底解説してみよう。(※この記事はGENROQ 2018年6月号の「ロングターム・レポート」を加筆・修正し再収録したものです)

内外装リフレッシュ、実践編

「身」も心もボクのものに! と題して始まった993の内外装リフレッシュ編。一番最初の作業は“磨き”となりました。

クレフで作業を担当して下さるのは、磨き&コーティングのプロフェッショナルである今市博文氏、通称ヒロさん(現在は残念ながら引退)。事前に打ち合わせをしたとき代表の水島サンからは「クリアの残り具合を見ないと、どこまで作業できるかわからないなぁ・・・」なんて脅されていたのですが、ヒロさんはマイ993を診るやいなや、無言のもとにザーッと水洗いしてから素早く拭き上げ、いきなりポリッシャーを“ヴィーン!!”。

ギャーッ! オッサンなにすんねん!!

しかし焦ったのもつかの間、磨かれた部分は傷ひとつなくピッカピカになってしまいました。どうやら塗膜を診た段階で、瞬時にクリア層が残ってるのを見抜いてしまったようなのです。職人、怖えぇ~。見た目も怖えぇ~。

「これはきっと、塗装したあとに雑なポリッシュした結果だね・・・」

さらには「記事的にはツマラナイかもしれないけれど、このクルマの塗装状態はかなりいいですね」と顔に似合わぬリップサービスまで。

ヒロさん、まじ!? ほんと? いいんです、いーんです。記事的になんて、どうだっていーんです。自分の993が褒められただけで、ワタクシ幸せですから!

たださらに細かい分析によると、993には以前コーティングが施されており、そこには無数の「磨き傷」が付いているとのこと。「塗装は素晴らしいのに、どうしてこんな磨き方をしたんだろう・・・?」と、ヒロさんは悩んでおりました。

この993はアイコード代表である鶴田御大が、ボクに手が届く価格帯の「掘り出しもの」として見つけてきてくれた個体。以前は中古車屋さんで1回車検を通した履歴もあり、きっと売りに出された段階で、雑な磨きが入ったんでしょうねぇ。

ヒロさんいわくボディの至る所にポリッシャーを回した跡が付いており、光に当てるとアチコチ渦巻きみたいになってるとのことでした。それは粗鈑金屋さんやディーラーがよく使う、シングルタイプのポリッシャーと、粗めのコンパウンドによってできた磨き跡。納車したての新車でも、光に当てるとこうした傷があるのは珍しくないそうです。

かたやヒロさんは、ダブルアクションのポリッシャーを使ってます。またそのコンパウンドも、粒子がナノレベルと非常に細かい。ただその分、通常よりも時間が掛かってしまうのだそうです。

さてマイ993は磨き傷こそあるものの、傷の“深さ”はそれほどでもなく、クリア層を少し削るだけで素直な輝きを取り戻せるとのことでした。もっとも、その削り方こそが重要なんですけれどね。

手順としては、まず洗車。ボディの汚れを落としたら古いコーティングを除去して、さらに傷を取る磨きに入ります。そして最後はコーティング剤を塗布して終了。次回にはピッカピカ! な993をお見せできることでしょう。

8万円は磨きで節約できるのか!? リヤガーニッシュは・・・復活できず!!

ところで面白かったのは、磨きの行程で古い汚れが取れて、チッピング(飛び石)の跡が露出してきたことでした。古いクルマを磨くとこうした部分が出てくるのは珍しくなくて、こだわる人だと再塗装なんてことがあるらしいのですが、もちろんボクは見なかったことにしました。

ヒロさん曰く「磨きとは、クリア層を削ること」。だから塗装面まで入った傷は、取れません。むしろ塗装がはげる場合もあるので、今回も深い傷がある所は磨きませんでした。

そしてコーティングは、「ピカピカにするというよりも、塗装を守るもの」。だから「新車時や、塗装を終えた段階でやっておくのがベストです」とのことでした。

ちなみにクレフがPPFのフィルム施工と並んでコーティングを推奨するのは、「タイヤかすやブレーキダストからボディを保護することができる」から。だから走り派にも、コーティングはお勧めなのだそうです。

これぞ高級中古車の洗礼 ヘッドライトユニットの輝きを取り戻せ!

ではそのコーティング、どうやってメンテすればいいのでしょう? 高価なコート剤はテスト上では10年もつと言われているものもありますが、実際大抵は「1年もたない」とのこと(汗)。ヒロさんいわく「自分のコーティングは最大で5年ほど持ちますが、オーナーさんが見て、最初の輝きが失われたなぁ・・・と思ったときがリペアどきですね」とおっしゃっていました。

また普段のメンテは、なるべく柔らかい素材で洗うこと。タオルは使い込むと硬くなるので、こだわるならセームか素手(!)がいいそうです。

そして最大の敵は「ウォータースポット」。雨は酸性が強く、陽が射すとレンズ効果で塗装面を焼いてしまう。コーティングすればボディの汚れは簡単に落とせるようになるけれど、ウォータースポットとホイールに付いた鉄粉だけは、後からはどうにもできないとのことでした。

鉄粉の話もしたいのですが、誌面も尽きてきたのでそれはまた次回に話しましょう。しかし、ワタクシ今まで走ることばかりに夢中で、磨きなんて単なる贅沢だと思っていたので、目からウロコなことばかりでした。

愛車がきれいになっていくのを見るって、とても楽しいですね!

REPORT/山田弘樹(Kouki YAMADA)
PHOTO/山田真人(Makoto YAMADA)

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著者プロフィール

山田弘樹 近影

山田弘樹

モータージャーナリスト。自動車雑誌『Tipo』の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した…