Porsche 911 Carrera(’95/Type993) LONG-TERM REPORT Vol.2

ポルシェ 911(タイプ993)ロングタームレポート:第2回「大したことないって、言ってたのに(汗)」

「こんなのオイル漏れのウチに、入らないよ!」と言ってた993カレラのオイル漏れが、実はちょっとした“お漏らし状態”だったと発覚。特にひどかったのはカムカバーからの漏れで、いざ走らせるとこれが、エキゾーストにかかって “煙モーモー状態”だった(汗)。大したことないって言ってたのに~!! そんな初期トラブルを乗り越えて、今月はめでたく初試乗です!! (※この記事はGENROQ 2018年4月号の「ロングターム・レポート」に加筆・修正したものです)

念願の初対面と初試乗!・・・だったんだけど

前号で、遂に993との初対面を終えた筆者。ただドライブシャフトブーツやボンネットダンパーといった純正部品がメーカーから届かないという理由から、このときは愛しのハニーを我が家へと連れて帰ることはできませんでした。

それでも「とうとう993が手に入ったんだ!」と幸せな日々を送っていたわけですが、そんな日常を一気にブチ壊す一本の電話が、アイコードの鶴田御大からかかって来た! というのが、今月のお話です。

「オイル漏れ、思ったより激しかったわい!」

鶴田御大からの電話は、いきなりこんな感じで始まりました(汗)。

え゛~! だって初見で993の様子をチェックしたとき、「こんなのオイル漏れのウチに入らん!」って、言ってたじゃないデスかーッ! それがアイコードに引き取って来てみると「結構な量が漏れてたのよ」というのです・・・とほほ。

各部にお漏らしを発見・・・

オイル漏れは主にヘッドカバーからで、液体ガスケットの塗布量が少なかっ たから、オイルが再び漏ってきたというのがアイコードの見解でした。

ただこの処置に関して御大は「決して悪いことじゃない」と言います。というのも液体ガスケットを塗りすぎてこれが中にあふれ、オイル孔を塞いでしまうよりは、塗布量を少なくしてオイルが外に漏れる方が、よっぽどマシだというのです。

あとはチェーンカバーと、エンジンマウントの周辺にも少しお漏らししていましたが、これも「よくあること」。逆に縦割りクランクケースの継ぎ目からはオイル漏れしていないから、まだエンジンを降ろさないで済むとのことでした。

時すでに遅しのストーンガード

これ以外では、予定していた「ストーンガード」の施工が中止になりました。ストーンガードといえば911の張り出したリヤフェンダーを飛び石などから守るシート。マイ993にはこれが貼られておらず慌てて純正部品を取り寄せたのですが、時すでに遅し、の状態だったのです。

張り出したリヤフェンダーは沢山の飛び石を拾っており、これを貼るなら再塗装が必要。乾かすことも含めるとまた手元に来る時間が延びてしまうし、塗装費用もかなりの出費となるため、泣く泣くこれを断念したのでした。つか、前のオーナーさん、どうして貼っておかなかったんだ!?(それは後々わかることに)。

こうして一通りの納車点検を終えて、晴れて993を我が家へつれて帰ることに成功したわけですが、まず今月は溺愛レポートをする前に、ジャーナリストの目で辛口な評価をしてみようと思います。だって古い空冷ポルシェを買って、「その実どうなの?」というのが、みなさんの気になるトコロですもんね。

95年式の前期型カレラ。乗り始めて最初に感じたのは、今もってその乗り味が古さを感じさせない驚きでした。むしろ室内空間などはフロントガラスが近く理想的なタイトさで、それでいて横方向の窮屈さを感じさせない間取りが素晴らしい。ドアの厚みなど安全基準も昔は緩かったのでしょうが、そこには設計の良さが感じられます。Aピラーなどは現代車に比べてとても細く、それ故に視界は良好。目立つのは樹脂製インパネやコンソールのチープさ、エアコン制御の曖昧さで、こうした部分が現行911では、格段にプレミアム化されていると感じました。

その乗り味は、ハンドルを切らなければ、どっしりと重厚。車体が必要以上に低重心で、ボディが硬く感じられるのは、そのホイールベースが2270mmと短いからでしょう。ボディが小さいんですよね。ちなみにホイールベースは現行911(タイプ991)比で180mm、トヨタ 86と比べても30mmも短いンですよ!

やれたブッシュなどゴム系パーツは今後の課題

足周りには社外の車高調キットが入っており、タイヤも18インチを履かせているせいか、操舵感はかなりクイック。993カレラには鈍重なイメージを持っていたのですが、我が子はちょっと過敏なくらいです。ポルシェって、足周りでここまで変わるんですね。そして993にはPSMなんてないですから、注意が必要です(笑)。

さらにマイ993は、前後で銘柄違いのタイヤを履いていました(笑)。きっと前オーナーさんが、車検のために安いタイヤを買い足したのでしょう。またブッシュもそこかしこヤレていることから、ハンドリングに落ち着きがない。それでも思った以上に乗り心地が良いのは、ボディ剛性の高さが理由でしょうか?

目玉となる3.6リッターの空冷ユニットは、吹け上がり感が絶妙! 絶対的なパワー感は大したことないけれど、これをまったく不満に感じないのは、アクセルの踏み始めからトラクションが、本当に驚くくらい素早く掛かるからです。

独特のメカニカルサウンドが気持ちいい

後ろからの蹴り出し感は、現行911よりもダイレクト。だから降車後は、それなりに疲れます。特に今は「オレは911を運転しているんだ!」という緊張感もあるから、なおさらです。でも趣味のスポーツカーなら、これくらいの方が楽しいですね!

シングルカム&2バルブのサウンドは、低中速で“クワラララ ~ッ”と独特な高周波を発しており、それが高回転になるほど、トーンを揃えていきます。回さないで走ると、ノーマルマフラーということもあり、結構静か。回して走ると、排気サウンドではなく、メカニカルサウンドが気持ちよく盛り上がります。

特にこのクルマは、定番チューンである「RSフライホイール」が入っていたので、高回転までの到達感や、ヒール&トゥしたときの“ツキ”が気持ちよい。またメカニカルノイズが大きい割に振動が少なく、わずかなバイブレーションすら心地良いのは、空冷・水平対向エンジンならでは。本当にお互いの振動を、ピストン同士が打ち消し合っているんですね。

オーナー目線で言うと・・・ずばり最高です!

ご存じの通り993の後期型は排気量も3.8リッターとなり、ヴァリオラムまで付いて、低回転でもトルクフルな993になりました。でも以前これに試乗したときボクは、なんだかエンジン特性がもっさりと感じて、自分で乗るなら3.6リッターまでの「ヴァリオ無しがいいな・・・」と思っていました。市場価格も、3.6の方が安いですし(笑)。

そういう意味では、前期型を選んで大正解!

あらら? 辛口評価のつもりがいつの間にか、溺愛評価になってしまいました。

まとめると、パワー感はさほどないけれど、別に下がないわけではない。そして回せば、とっても楽しい。足周りのことはまだよくわからないけれど、質素で可愛い911、「これでいーじゃん!」というのが993の第一印象です。 そしてオーナー目線で言うと・・・ずばり最高です♡

REPORT/山田弘樹(Kouki YAMADA)
PHOTO/市 健治(Kenji ICHI)

やっぱりポルシェはお金がかかる!?
今月の出費:15万2280円(チーン・・・)

ストーンガード(1万1100円×2)
カッティングシート(4500円×2・工賃3000円×2枚)
ドライブシャフトブーツ(6000円×4セット グリース含む)
ステンレスバンド(160円×8個)
ドライブシャフトブーツ交換・作業工賃(2万円×2)
フードダンパーフロント4450円×2、リヤ3950円×2・工賃8000円)
タペットカバーオイル漏れ修理(2万5000円 オイル補充含む)
このとき筆者は毎回、その月ごとにかかった費用を計上して993の維持費がどのくらい掛かるのかをドキュメントしようとしていた。しかしあまりに色々掛かり過ぎて面倒になり、なおかつこれを全て細かく書くと読者もドン引きするだろうという配慮のもと、計上を止めた。993、それなりにお金は掛かります。そしてこれは、オーナーがどこまでやりたいか? にも密接に関係してきます。

【COOPERATION】
アイコード
TEL 0565-46-0727

【関連リンク】
・アイコード 公式サイト
http://icode.jp/

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著者プロフィール

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山田弘樹

モータージャーナリスト。自動車雑誌『Tipo』の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した…