最新SUVを豪華比較試乗! レンジローバー×グランドチェロキー×カイエンの一見異なる3台はそれぞれSUVにとって重要なプライドがあった

今回新型となったレンジローバーと比較するのは、カジュアルな4X4の始祖ワゴニアの直系といえるグランドチェロキー。そして生粋のスポーツカーブランド、ポルシェの新たな挑戦として世に投じられたカイエンである。
今回新型となったレンジローバーと比較するのは、カジュアルな4X4の始祖ワゴニアの直系といえるグランドチェロキー。そして生粋のスポーツカーブランド、ポルシェの新たな挑戦として世に投じられたカイエンである。
圧倒的な質感とこれぞラグジュアリーSUVのお手本たる走行性能を実現した新型レンジローバー。対するは新興ハイパフォーマンスSUVの代表と言えるカイエンの最強グレード、そして本格的な悪路走破性も備えたアメリカンラグジュアリーSUVの2台だ。果たして新型レンジローバーとライバルたちはどんな競演を魅せてくれたのか。

Land Rover Range Rover
Jeep Grand Cherokee L
Porsche Cayenne Turbo GT

各カテゴリーのパイオニア3台の際立つ個性

新型レンジローバーの最も変わったと思わせるのは乗り心地の素晴らしさだ。日常的に用いる低中速域の路面アタリの丸さや入力による音・振動の小ささは世界最良クラスといっても過言ではない。
新型レンジローバーの最も変わったと思わせるのは乗り心地の素晴らしさだ。日常的に用いる低中速域の路面アタリの丸さや入力による音・振動の小ささは世界最良クラスといっても過言ではない。

一見、なんの脈絡もなく集まったかにみえる3台のSUV。しかし各々にパイオニアとしての自負が垣間見える。

ひとつは遡ること60年前の1962年、ジープ派生のメカニズムを実用的な乗り心地とパッケージに融合し、4×4の存在意義を民生向けとして示したワゴニア、その直接的系譜となるグランドチェロキーだ。ちなみにアメリカ本国ではこのグランドチェロキーをベースとしたモデルがグランドワゴニアのリバイバルとしても販売されている。

もうひとつは今から20年前の2002年、生粋のスポーツカーブランドであるポルシェの新たな挑戦として世に投じられたカイエンだ。パフォーマンスとしては既にBMWのX5も比するところにあったが、自らのアイデンティティを反映した大胆なデザインが受け入れられ、会社の形勢を逆転させる大ヒットになったのはご存知のとおりだ。以来、この手法は他のスポーツブランドも倣うところとなっている。

そして、レンジローバーだ。4×4の民生化という点ではワゴニアからの刺激もあったかもしれない。が、こちらは出自柄ピクニックや狩りなど、ロイヤルファミリーや貴族家系などエスタブリッシュメントの嗜みにも配慮して設えられた、いわゆるプレミアムSUVの始祖とすることに異論はないだろう。走破性と乗り心地を卓越したバランスで成立させるそのメカニズムを、上質な革や杢の加飾で彩られた運転環境で味わうというある種の違和感が圧倒的な個性として世界に知れ渡った。

おおらかなライドフィールがいかにもアメリカンSUV

副変速機を持つトランスファーなど本格的仕立ては継承されているグランドチェロキーLだが、そのアーキテクチャーは同門のアルファロメオの「ジョルジオ」を共用している。
副変速機を持つトランスファーなど本格的仕立ては継承されているグランドチェロキーLだが、そのアーキテクチャーは同門のアルファロメオの「ジョルジオ」を共用している。

それぞれの世界を切り拓き、そして後に大きな影響を及ぼしたこの3銘柄を改めて並べて走ってみると、新しいレンジローバーの立ち位置は果たしてどのように映るのか。そんな興味をいだきながらまず乗ったのはグランドチェロキーだ。3.6リッターV6自然吸気のペンタスターユニットを縦置きで搭載。副変速機を持つトランスファーと本格的仕立ては継承されている一方で、そのアーキテクチャーは同門のアルファロメオのジュリアやステルヴィオが用いる「ジョルジオ」を活用している。

ジープとアルファロメオ、ブランド的には走りのイメージがまるっきり異なるところだが、アーキテクチャーの出どころをまったく感じさせないほどに化けてしまえるのが現代の技術でもある。グランドチェロキーも然りで、いい意味でズシッと重めな手応えをもった、いかにもアメリカンSUV的におおらかなライドフィールが印象的だった。試乗したグレードは最上位のサミットリザーブでエアサスが配されるが、乗り味の傾向はコイルサスのリミテッドでも大差はない。ところどころに凹凸やひび割れのあるアメリカの郊外路を、60マイルを保ちながら淡々と数百km走る、そういう使い方には抜群に馴染む頼もしさを備えている。

一方で、乗用車同然の洗練度という点でみれば、そことは敢えて一線を画しているように感じられた。操舵ゲインの立ち上がりに過敏さはなく、サスもエアバネを使っていながら、路面のサーフェス感を逐一掌に伝えてくる。アーキテクチャーの素性からすれば、もう少し快適で機敏な味付けにも出来たと思うが、そこを敢えて抑えてでも悪路での扱いやすさを前提とするところにジープのクルマ造りの矜持がある。

SUV最速の座をかけて

カイエン史上最強グレードのターボGT。クーペのみの設定で、ノルトシュライフェでのSUV最速レコードを保持する。
カイエン史上最強グレードのターボGT。クーペのみの設定で、ノルトシュライフェでのSUV最速レコードを保持する。

カイエンの試乗モデルは先に追加された史上最強グレードのターボGT。クーペのみの設定で、ノルトシュライフェでのSUV最速レコードを保持している。彼らがそうはいわずとも、傍目にはアストンマーティンやランボルギーニといったライバルを迎え撃つための設えであろうと意識しないわけにはいかない。最速こそがポルシェに課せられたミッション。それはSUVでも然りだ。

それでもターボGTのパワーは640ps/850Nmだから、同門でもあるウルスに対しての政治的配慮も感じないわけではない。しかしアクセルをドンと踏んでみれば、その動力性能差は無に等しいことは一発の加速で明らかになる。んまぁとにかく速い。ニュルスペックであるはずのリヤ脚も踏ん張りきれず、それがムニュムニュした不穏な動きを伴いながら2速でも唖然とする加速が途切れない。いかなる状況でも盤石なシャシーファスターがポルシェの身上だとすれば、そのマージンを相当に走りの側に振り込んでいる。何が何でも勝つというポルシェの狂気を久々に見た思いだ。

それゆえ、日常域での乗り心地は粗さが目立つ場面もある。微小入力域の転がりのしなやかさはバネ下の凶暴さを忘れるほどだが、ちょっと凹凸が大きくなるとバネものの硬さが手応えや乗り心地として現れる。

ターボGTの白眉はやはりコーナリングだ。再チューニングされたPASMとPDCCの組み合わせは、このクルマから慣性を開放したかのように作動し、ロールを最大限抑えながらソリッドに曲がっていく。それでも必要な旋回実感やロードインフォメーションを確実にドライバーに伝えてくる、その味付けは見事だ。加えて強力無比なブレーキでもってその速さを精緻に御することもできる。何より減速時の絶大な安心感はポルシェ以外の何者でもない。乗れば必ず納得させられるはずだ。

変わったところと変わらないところ

そして新しいレンジローバーだ。第一報で驚いたパネル間チリのツメっぷりは市販車でも同じ。ちょっと引いてみた時の塊感やツライチ感は半端ではない。特徴的なリヤスタイルを見ずとも、印象として新型であることが即座に伝わってくる。悪路走行が前提のクルマと鑑みれば、前型比50%増という破格の剛性がなければこうはいかないと察せられる。

乗り込むと、変わったところと変わらないところの両方に気づく。運転席環境は他のモデルに寄せられ、ドアトリム上に据えられたウインドウスイッチや三角的な断面形状のステアリングなど、レンジローバーと一瞥できる要素はなくなった。結果として、ベルトラインも若干高くなったかもしれない。一方で運転席越しにみるボンネット両隅の掴みやすさは相変わらずだ。このおかげで全幅2mの車体の取り回しは楽だ。

加えて新型レンジローバーはリヤステアを採用し、小回り性能を劇的に高めている。試乗したのは全長5265mmのロングボディだったが、おかげで狭い街中や駐車場でも躊躇なく動かすことが出来た。

悪路走行ができなかった今回の試乗を前提にいえば、新型レンジローバーの最も変わったと思わせるところは乗り心地の素晴らしさだ。サス形式の変更も含めたその伸びしろは顕著で、日常的に用いる低中速域の路面アタリの丸さや入力による音・振動の小ささは、冗談でなくロールス・ロイス・カリナンにも比肩する。すなわち、世界最良クラスといっても過言ではない。

一方で、ハンドリング領域においても気持ちよく飛ばす程度のペースであればこのロングボディを持て余すことはない。言わずもがな効いているのはリヤステアだが、アシの動きがよく旋回姿勢も自然に作り込まれており、操縦実感はしっかり伝わってくる。ただしロングボディともなれば車重は2.7tに達する、そのマス感は常に意識しておくべきだ。

他国のクルマ造りとは異なるという英国のプライド

試乗したレンジローバーのロングボディ・オートバイオグラフィに搭載されるのは、4.4リッターV8ツインターボ。滑らかな回転質感と共に530psの伸びやかなパワーでしっとりと上質な加速感を実現している。
試乗したレンジローバーのロングボディ・オートバイオグラフィに搭載されるのは、4.4リッターV8ツインターボ。滑らかな回転質感と共に530psの伸びやかなパワーでしっとりと上質な加速感を実現している。

試乗車のロングボディ・オートバイオグラフィに組み合わせられたエンジンはガソリンの4.4リッターV8ツインターボだったが、滑らかな回転質感と共に530psの伸びやかなパワーでしっとりと上質な加速感を実現している。が、一方で低回転域には過給ラグによりトルクの立ち上がりが緩いところが気になった。この点、ごく低回転域からトルクバンドが厚く、音・振動も洗練されている滑らかなディーゼル3.0リッター直6ターボの側が、レンジローバーのキャラクターには合っているように伺えた。

多くの銘柄を抱えるようになったランドローバーにおいても、レンジローバーはそれ以外とは肌触りからして別物……という、個人的な想いは今回も変わることはなかった。走破性云々もさておき、代々のレンジローバーが示してきたのは、アメリカともドイツとも異なるイギリスのクルマ造りのプライドであり、カスタマーはその代わりのない価値観を支持している。一部グレードは注文を停止するほど世界的にオーダーが殺到していると聞くが、SUV数多あれど代替の選択肢は思い浮かばない。そのくらいレンジローバーは特別な存在である。

REPORT/渡辺敏史(Toshifumi WATANABE)
PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)
MAGAZINE/GENROQ 2022年 9月号

【SPECIFICATIONS】

ランドローバー・レンジローバー オートバイオグラフィーP530(LWB)

ボディサイズ:全長5265 全幅2005 全高1870mm
ホイールベース:3195mm
車両重量:2710kg※
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:4394cc
最高出力:390kW(530ps)/5500-6000rpm
最大トルク:750Nm(76.5kgm)/1850-4600rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
車両本体価格:2261万円
※リヤエグゼクティブシート&パノラマルーフ装着車

ポルシェ・カイエンターボGT

ボディサイズ:全長4940 全幅1995 全高1635mm
ホイールベース:2895mm
車両重量:2220kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3996cc
最高出力:471kW(640ps)/6000rpm
最大トルク:850Nm(86.7kgm)/2300-4500rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
車両本体価格:2851万円

ジープ・グランドチェロキーL サミットリザーブ

ボディサイズ:全長5200 全幅1980 全高1795mm
ホイールベース:3090mm
車両重量:2250kg
エンジンタイプ:V型6気筒DOHC
総排気量:3604cc
最高出力:210kW(286ps)/6400rpm
最大トルク:344Nm(35.1kgm)/4000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
車両本体価格:1031万円

【問い合わせ】

ランドローバーコール
TEL 0120-18-5568
https://www.landrover.co.jp/

ポルシェ コンタクト
TEL 0120-846-911
https://www.porsche.com/japan/

ジープ・フリーコール
TEL 0120-712-812
https://jeep-japan.com/

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著者プロフィール

渡辺敏史 近影

渡辺敏史