ランボルギーニ ウラカンの最新モデル「ウラカン テクニカ」に試乗

ランボルギーニ ウラカン テクニカの真骨頂はサーキット? ワインディング? タイヤまで替えてしっかり検証した

ウラカンの掉尾を飾るに相応しい、速さと快適性の両立を目指した意欲作がウラカン テクニカだ。
ウラカンの掉尾を飾るに相応しい、速さと快適性の両立を目指した意欲作がウラカン テクニカだ。
V10自然吸気のエンジンをミッドに搭載するベビーランボルギーニは、ガヤルド時代も含めると約20年に渡って同社の主力モデルとして君臨してきた。現行型ウラカンの最終章と目されるモデルがテクニカである。ひとつの時代を作った歴史的なクルマの最終到達点を解説する。

Lamborghini Huracan Tecnica

究極マシンが到達したレベルとは

全長はウラカンEVOから61mm延長。全高と全幅は変わないものの「エッセンサSCV12をイメージしたシルエットが採用され、より低くワイドな印象だ。
全長はウラカンEVOから61mm延長。全高と全幅は変わないものの「エッセンサSCV12をイメージしたシルエットが採用され、より低くワイドな印象だ。

最初の高速コーナーに向けてスロットルを軽く抜くと、フロントが明確にインを向くと同時に、テールがアウト側に回り込もうとする。この段階ではまだタイヤはスライドしていなかったものの、自分がいま操っているファイティングブルが牙をむく直前の表情が、これでわかった。あとは、真剣勝負のときがやってくるのを待つだけだ。

そのチャンスは、サーキット走行の2周目で早くもやってきた。先ほどと同じ高速コーナーに進入する際、猛牛のテールが先ほどよりはっきりとアウトに流れる兆候を示した。そこでコーナーの出口に向けてスロットルペダルを強めに踏み込むと、今度はリヤタイヤのグリップが穏やかに抜けてオーバーステアの態勢をとり始める。しかし、そんな状態でもサーキット走行用のブリヂストン・ポテンザレースは粘り強く路面を捉えているから、テールの流れだし方は決して唐突ではない。その動きに自分の呼吸を合わせるようにしてカウンターステアを当てれば、猛牛はしばらくファイティングポーズを保ったのち、穏やかにリヤのグリップを回復。その後は力強いトラクションを発揮し、次のコーナーに向けて再び加速を開始したのである。

走り始め直後からむき出しの闘争心

乾燥重量は1379kgで、パワーウェイトレシオ2.15kg/psを実現した。
乾燥重量は1379kgで、パワーウェイトレシオ2.15kg/psを実現した。

ウラカンがこれほど自由自在にオーバーステアの姿勢を取れるようになったのは、2019年にデビューしたウラカンEVO以降のこと。4WDに加えて4WSやブレーキトルクベクタリングを得たウラカンEVOは、ドライバーの操作をあらかじめ読み取るフィードフォワード技術を駆使することで、いとも簡単にオーバーステアを生み出すキャラクターを獲得していた。ただし、これはスポルトモードを選んだ場合で、ストラーダモードではリヤタイヤがしっかりとグリップし続ける優れたスタビリティを発揮。一方のコルサ・モードでは、リヤグリップが抜けるギリギリの状態を維持する“ラップタイム優先”の走りを実現することで、三者三様のステアリング特性を選択できる能力を身につけたのである。

しかし、この日、私が操っていた「生まれたての猛牛」ことウラカン テクニカは純然たる後輪駆動。にもかかわらず、4WDに引けを取らないスタビリティと侮りがたいトラクションを生み出したのだ。いったい、ランボルギーニになにが起きたのか? マウリツィオ・レッジャーニが勇退した同社技術陣で車両開発全般を統括するヴィクター・ウンダーベルグに訊ねてみた。

「2014年にウラカンを発表して以来、これまで私たちは様々な開発を行ってきました。そこで得たノウハウを活かし、ウラカン テクニカではダウンフォースを(ウラカンEVO RWD比で)35%増やしたほか、スタビリティコントロールにも最新の技術を投入しています。さらには4WSやタイヤ開発などの効果もあって、ウラカン テクニカでは後輪駆動でありながら4WDに迫るスタビリティを実現できました」

ちなみにウラカン テクニカをRWDとした理由について、ウンダーベルグは「ウラカンSTOのパフォーマンスを極力保ちながら、日常的な快適性を実現するのがテーマだったから」と説明した。実際、ポテンザスポーツに履き替えたウラカン テクニカで公道を走ると、サーキットでのシャープな走りが信じられないほどハーシュネスの遮断が良好な一方、高速域でのフラット感も優れており、「ウラカン史上、ベストな乗り心地」と評したくなる快適性を示した。ウンダーベルグらが掲げた目標は、見事に達成されたというべきだろう。

サーキットの懐の深さと一般道の快適性

640psを発生する自然吸気V10エンジンの官能性は相変わらずだった。その絶対的なパワー自体は、このクラスのスーパースポーツカーとしては標準的か、もしくはやや下回るレベルに過ぎないが、どんな回転域からでも素直に、そしてスムーズにパワーを積み重ねていくキャラクターは自然吸気ならではのもの。その一方で7000rpmオーバーの超高回転域ではまさに泣き叫ぶようなエキゾーストノートを奏で、背筋がゾクゾクとするような快感をドライバーに授けてくれる。やはり自然吸気マルチシリンダーエンジンは唯一無二の存在だ。

サーキット走行ではハンドリング特性を自在に変化できる懐の深さを示す一方、一般道での快適性も高いウラカン テクニカは、ウラカンシリーズの集大成といって差し支えのない完成度を備えていた。しかし、そんなウラカンも、今年12月に発表されるモデル(車高の高いオフロード版との噂が根強い)を最後に、プラグインハイブリッドモデルへと生まれ変わることが予告されている。そのデビューは2024年となる見通し。つまり、“純”エンジンモデルのウラカンは、あと2年で消え去る運命なのである。

まさにウラカンシリーズの集大成

その後のパワートレインがどうなるのか、公式な発表はまだなにもない(アヴェンタドールの後継モデルが自然吸気V12+PHVであることは確認済み)。私はV8+PHVが有力と予想しているのだが、果たしてどうだろう? また、ウラカンの主力モデルが4WDからRWDに移ってきたことを考えれば、次期型ウラカンはRWDベースとなっても不思議ではないような気がする。

いずれにせよ、最終モデル間近のウラカンはSTOもテクニカも予約が殺到している模様。ご興味をお持ちの向きは、早めに正規ディーラーを訪れたほうがいいだろう。

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)
PHOTO/LAMBORGHINI S.p.A
MAGAZINE/GENROQ 2022年 9月号

SPECIFICATIONS

ランボルギーニ ウラカン テクニカ

ボディサイズ:全長4567 全幅1933 全高1165mm
ホイールベース:2620mm
車両重量:1379kg
エンジン:V型10気筒DOHC
排気量:5204cc
最高出力:470kW(640PS)/8000rpm
最大トルク:565Nm(57.6kgm)/6500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ(リム幅):前245/30ZR20(8.5J) 後305/30ZR20(11J)
最高速度:325km/h
0-100km/h加速:3.2秒
車両本体価格:2999万2917円

【問い合わせ】
ランボルギーニ カスタマーセンター
TEL 0120-988-889

【関連ウェブサイト】
https://www.lamborghini.com/jp

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著者プロフィール

大谷達也 近影

大谷達也

大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌「CAR GRAPHIC」の編集部員…