目次
Ferrari 488 Challenge EVO
かなりレーシングカー寄りになった
現行のフェラーリチャレンジ参戦車両は、2019年10月に発表された488チャレンジEVO(以下、EVO)である。レーシングカーとはいえ市販の488の延長と感じさせた488チャレンジよりも、グッとレーシングカー寄りになる改良が施された。
EVO最大のトピックはエアロダイナミクスの大幅改良だ。装着されるエアロパーツが増え、特にフロントのダウンフォースが効いている印象がある。ステアリングがその分ずしりと重くなった。
3.9リッターV8ツインターボエンジンの圧倒的なパワーは従来同様だ。最近のGT3カテゴリーは、リストリクターなどで出力が下げられることが多い中、EVOは市販車同様の670psを誇る。トランスミッションやブレーキはノーマルに近いが、サーキットをガンガン走っても持ちこたえてしまうあたり、さすがフェラーリと言わざるを得ない。
運転に集中できる秀逸なコクピット
ビギナーに乗らせてみたところ……
このようにさらにレーシーになったEVOに、富士スピードウェイのライセンスを持っている担当編集の副編Yを乗らせてみた。アマチュアが走らせるとどのような印象を持つのか興味があった。
哲也 走ってみてどうでした?
副編Y ロールケージが張り巡らされた室内は、シートもステアリングもいかにもレーシングマシンです。でもピットを出て、ピットロードを走らせたら意外と素の488的な雰囲気もあって、そのギャップに面くらいました。
哲也 サスペンションがレース用になっているとはいえ、ブッシュはゴム製だし、そういう印象を受けるかもしれないね。
副編Y あとブレーキのタッチがノーマル風で、不安になって1コーナーではかなり手前から踏んでしまいましたが、実際はかなり効くんですね。なにしろエンジンがパワフルで、最高速も伸びるので・・・。
哲也 ここは280km/h以上出るからね。ブレーキペダルはたしかにノーマル的なタッチだけど、奥まで踏めばレーシングカーらしくかなり止まれるよ。エンジンはターボラグもないし、トルクが下からあるから扱いやすいでしょ?
副編Y そうなんです。下からトルクがあるのに8000rpmまできちんと回るし、アクセルペダルを戻せば、すっと回転が落ちるので本当に一体感が生まれます。安全のためにトラクションコントロールを強めに利かせて走りましたけど十分刺激的でした。
完全に別物のエアロダイナミクス
哲也 トラクションコントロールは利きとタイミングを細かく調整できるから、技量に従って徐々に制御を弱めればいいだろうね。今のフェラーリは電子制御が本当に緻密だから。
副編Y Aコーナーや100Rのコーナリングではグリップの限界が高くて、これまでの経験だとフロントが逃げていかないか不安になるほどでしたが、曲がって行けたのはタイヤと空力のお陰でしょうか。
哲也 空力は利いているだろうな。
副編Y 運転感覚は市販車の延長線上なのですが猛烈に速い──でも思ったよりもユーザーフレンドリーな印象です。もっともっと走りたい!と思わせるマシンでした。
新しい488チャレンジEVOは、アマチュアでも安心して走らせることができる取っつきやすさを持つ一方で、高出力のV8ツインターボエンジンの迫力や、高いダウンフォースでレーシングマシンの醍醐味を体験できるのである。
連続走行に耐えるタイヤとブレーキ
トラクションコントロールは制御が利く量と、利くタイミングをそれぞれコントロールできる。調整はステアリングに備わる2つのダイヤルを回して行う。今回はトラクションコントロールをそれぞれ4段階中3段目にして、かなり利かせて走らせたが、アマチュアならば特に物足りなさは感じなかったようだ。走らせ方によってはそれぞれ3段目まで利かせても十分タイムが出るし、いざという時はきちんと制御してくれる。その点でEVOはプロとアマチュアのタイム差が付きにくいマシンともいえるかもしれない。ちなみにABSの利き方も調整できるので、セッティングの楽しみの幅は大いに拡がるだろう。
夏場に重要なエアコンも備わっているし、レースではホスピタリティも充実しているから、これなら思う存分モータースポーツを楽しめるだろう。
REPORT/田中哲也(Tetsuya TANAKA)
PHOTO/平野 陽(Akio HIRANO)
【オフィシャルサイト】
フェラーリ・ジャパン
http://www.ferrari.com/ja_jp/