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Ferrari Purosangue
プロサングエは「トゥルースポーツカー」である
かねてから噂のあったプロサングエがついにデビューした。フェラーリ初の4ドア、フェラーリ初のSUVである。しかしフェラーリ自身はこのクルマをSUVとは謳っていない。
プレゼンを行った同社のチーフテクニカル&マーケティングオフィサーであるエンリコ・ガリエラ氏の言葉によるとプロサングエは「トゥルー・スポーツカー」であり、フェラーリの妥協なきテクノロジカル・イノベーションを実現したクルマだという。
シャープでエッジの効いたボディはフェラーリらしさに溢れており、素直にカッコいいと思える。全長は4973mm、全幅は2028mmとかなりの大きさなのだが、全高が1589mmと低く抑えられているせいか、実物はそれほど巨大なクルマという印象ではない。
どこから見ても最新のフェラーリ
デザインで注目すべきはドアが観音開きであることだろう。リヤドアはパワー式で、サイドウインドウの前方下にある小さなレバーを軽く引くと、静かにドアが開く。閉める時もこのレバーを軽く押すだけでスムーズにドアが閉まる。もちろん室内側にもボタンがあるので後席の乗員は身を乗り出すことなくドアを閉めることが可能だ。
室内は4人乗りで、5人乗り仕様はない。実際に後席に座ってみるとそのスペースは程よくタイトで、まさにスポーツカーだ。4人乗りだけとした理由について、チーフ・プロダクト・デベロップメントオフィサーのジャンマリア・フルジェンツィ氏はフェラーリは後席も前席と同じであり、すべての席でスポーツカーの走りを感じるためだ、と説明した。
ラゲッジスペースは473リットルで、ボディサイズを考えれば決して大きくはないが、フェラーリの歴史上で最も広い荷室を持つことは間違いないだろう。リヤ席は独立しているため、背後にはラゲッジスペースを仕切るボードが設けられる。ちなみにこのボードとトノボードはラゲッジ下に収納可能で、リヤ席を倒して荷室を拡大することも可能だ。
すべての席でスポーツカーを感じられる室内
エンジンは自然吸気のV12気筒F140IA型。モーターを搭載してくるのではないか、という予想は裏切られたが、それを喜んでいる人も多いのではないだろうか。ベースとなっているのはお馴染みのF140だが、ピストンからコンロッド、バルブトレイン系やエキゾースト周りなどをすべて新設計とし、フルジェンツィ氏は「完全なニューエンジン」だと語る。最高出力725ps、最大トルク716Nmで、最大トルクの80%を2100rpmで発揮して、2033kgのボディを310km/h、0→100km/h加速3.3秒で引っ張る。
エンジンの力はドライブシャフトでトランスアクスルレイアウトの8速DCTに送られるが、さらにエンジン前部に設置されたPTU(パワー・トランスミッション・ユニット)も駆動する。この方式自体はGTC4ルッソと同じだが、プロサングエのPTUは内部にクラッチを内蔵してフロント左右輪のトルクベクタリングも行う。これによって優れた旋回性能を実現、また4WSも備わることでまさにフェラーリにふさわしいハンドリングを実現しているという。
最新の電子制御ダンパーを装備
もうひとつの注目はサスペンションだ。48Vシステムにより、ダンパー下部のモーター(MCM=モーターモジュールコントロール)でダンパー内のリサキュレーティングボールスクリューを動かし、ダンパーの油圧をコントロールする。これによってロールとピッチングを従来より30%減し、別次元のフラットライドを実現したという。ガリエラ氏が「このサスペンションが完成したから、プロサングエの開発を決断した」というほどだから、その効果は絶大なのだろう。
プロサングエは2023年の第2四半期からデリバリーが開始されるという。その価格は税別39万ユーロ(約5700万円)。ランボルギーニ・ウルスやアストンマーティンDBX707、ロールス・ロイス・カリナンをも上回る。まさに史上最強SUVの誕生だ。