熟成の極みとなった「アヴェンタドールLP780-4ウルティマエ」の味わい深さ

既定路線を覆して生まれた「アヴェンタドールLP780-4ウルティマエ」の存在意義を考察する

アヴェンタドールの魅力がすべて詰まっているウルティマエ。過激なエアロパーツを備えない点が却って好ましい。
アヴェンタドールの魅力がすべて詰まっているウルティマエ。過激なエアロパーツを備えない点が却って好ましい。
2011年に登場したランボルギーニのフラッグシップ「アヴェンタドール」。Sへの進化やいくつかの限定モデルをリリースし、最近では電動化を果たしたスペシャルバージョンも生み出している。その限定モデルと派生電動モデルに改めて試乗し、間も無くその歴史を閉じるアヴェンタドールというクルマの魅力と楽しさ、そして意義を検証する。今回は究極の意も込めたウルティマエ。(本記事は『GENROQ』2022年12月号より抜粋、再編集したものです)

Lamborghini Aventador LP780-4 Ultimae

スーパーカーとしてあるべき姿を求めて

アヴェンタドールの最後を飾るモデルとして2021年に登場したウルティマエ。SVJを10PS上回る780PSはアヴェンタドール史上最強の数字であり、最高速度は355km/hを謳う。しかしSVJのような派手なエアロパーツは装着されず、アヴェンタドール本来のボディシルエットを楽しむことができる。クーペ350台、ロードスター250台が生産された。
アヴェンタドールの最後を飾るモデルとして2021年に登場したウルティマエ。クーペ350台、ロードスター250台が生産された。

ランボルギーニのフラッグシップはどうあるべきか。最も真実に近い回答をしてみれば、それは「フェルッチオ・ランボルギーニの創業時の想いをカウンタックのようなスーパーカーに詰め込んだマシン」ではないだろうか。そして、その答えはとりもなおさず「スーパーカーはどうあるべきか」の回答にもなっていると思う。なぜなら現代の典型的なスーパーカー像の起点となったモデルこそ、カウンタックであったからだ。

要するに、高性能ではあるけれどもグランドツーリングカーとしてまずは成立するクルマのことをいう。レーシングカーとはある意味対極をなす。それがスーパーカーにとって最も大切なこと。GTとして完全に成立したうえで、サーキットを真剣に攻めても(数周くらいなら)楽しいモデルやロードスターモデルといった派生があって然るべし。それが最新スーパーカーのビジネスパターンである。

そう考えるとアヴェンタドールという史上最も成功したスーパーカーにとって、その締めくくりとなるモデルが限定車でサーキット性能に優れた(というよりサーキットでしか本領を発揮しない)SVJだというのは、少々筋違いにも思えてくる。もちろんSVJもグランドツーリングカーとして優秀であることは筆者も500kmほどの連続ドライブで経験済みだ。それでもなお、長距離ドライブに使うアヴェンタドールを歴代モデルの中から好きに選んでいいと言われたなら、SVやSVJを選ぶことはない。トラックユースを念頭においたコンセプトがドライバーに余計な緊張感を強いるからだ。やはりそこは後期型のアヴェンタドールSを選ぶべき。もしマサカの(文字どおり)最終モデル、“ウルティマエ”さえ登場しなかったなら・・・。

想定外の登場の裏を読む

アヴェンタドールの最後を飾るモデルとして2021年に登場したウルティマエ。SVJを10PS上回る780PSはアヴェンタドール史上最強の数字であり、最高速度は355km/hを謳う。しかしSVJのような派手なエアロパーツは装着されず、アヴェンタドール本来のボディシルエットを楽しむことができる。クーペ350台、ロードスター250台が生産された。
SVJを10PS上回る780PSはアヴェンタドール史上最強の数字であり、最高速度は355km/hを謳う。

ウルティマエの登場は寝耳に水だった。派生限定モデルのシアンは次世代への高価なセットアッパーとして最適なモデルだと思えたし、SVJという異色の限定車とのコンビネーションでアヴェンタドールの10年を締めくくると誰もが思っていたと思う。それが以前のパターンでもあった。ところが。

ひょっとすると次世代モデルの開発が新型コロナの影響などもあって予定より遅れてしまったのではなかったか。さらにカウンタック50周年で新たな限定車を生産するというプロジェクトも生まれた。そのためにももう1年、アヴェンタドールの寿命を延ばしたい。そうして生まれたのがウルティマエであったように思えてならない(完全に筆者の推測である)。

それゆえウルティマエにはアヴェンタドールの魅力がすべて詰まっている。SVJと同じ単体で最高のパフォーマンススペックを誇るV12エンジンとエアロデバイスなどで遮られないオリジナルの美しいライン、そして熟成の極みとなったボディ&シャシー&電子制御。それらすべてが渾然一体となったアヴェンタドール。まさに大尾というにふさわしい。

第一級のグランドツーリング

アヴェンタドールの最後を飾るモデルとして2021年に登場したウルティマエ。SVJを10PS上回る780PSはアヴェンタドール史上最強の数字であり、最高速度は355km/hを謳う。しかしSVJのような派手なエアロパーツは装着されず、アヴェンタドール本来のボディシルエットを楽しむことができる。クーペ350台、ロードスター250台が生産された。
SVJのような派手なエアロパーツは装着されず、アヴェンタドール本来のボディシルエットを楽しむことができる。

実際にアヴェンタドール・ウルティマエに乗ってみれば、その完成度の高さに驚くほかない。特に筆者のように最初期のモデルを比較的長く堪能した者にとって、その乗り味は“よくぞここまで”と拍手を贈りたいほど円熟味を増している。これなら毎日乗リたくなってしまう。そう思わせるだけの懐の深さがあった。

控えめなスタイリングが、そういう気分にさせると書いた。ド派手なエアロデバイスを持つSVやSVJでは走り出す前からどうしても、リキんでしまう。構えてしまう。速く走らせなければと気分が急く。ウルティマエには、アヴェンタドール最高スペックが備わるというのにそこまでの緊張感がない。むしろ、フレンドリーにさえ思えてくる。アヴェンタドール、アヴェンタドールSの流れから決して逸脱していない。グランドツーリングカーとして間違いなく第一級のモデルだと断言する。

ウラカン・テクニカとアヴェンタドール・ウルティマエ。この2台はひょっとするとコロナがなければ日の目を見なかったかも知れない。そういう意味でも歴史に残るランボルギーニだ。

REPORT/西川 淳(Jun NISHIKAWA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2022年12月号

SPECIFICATIONS

ランボルギーニ・アヴェンタドールLP780-4ウルティマエ

ボディサイズ:全長4868 全幅2098 全高1136mm
ホイールベース:2700mm
車両乾燥重量:1550kg
エンジン:V型12気筒DOHC
排気量:6498cc
最高出力:574kW(780PS)/8500rpm
最大トルク:720Nm(73.4kgm)/6750rpm
トランスミッション:7速SCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ(リム幅):前255/30ZR20(9J) 後355/25ZR21(13J)
最高速度:355km/h
0-100km/h:加速2.8秒
車両本体価格:5454万3088円
※数値は2021年当時のもの

いかにもランボルギーニのフラッグシップのそのまた棟梁らしい華々しさを持つアヴェンタドールSVJ。

空力でV12ランボルギーニに革命をもたらした「アヴェンタドールSVJ」にあらためて試乗し再考する

ムルシエラゴからフラッグシップの座を受け継いで2011年に登場したアヴェンタドール。Sへの進化やいくつかの限定モデルをリリースし、最近では電動化を果たしたスペシャルバージョンも生み出している。その限定モデルと派生電動モデルに改めて試乗し、間も無くその歴史を閉じるアヴェンタドールというクルマの魅力と楽しさ、そして意義を検証してみよう。(本記事は『GENROQ』2022年12月号より抜粋、再編集したものです)

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