「ポルシェ 718 ケイマン GT4 RS」サーキットで実力チェック

ポルシェの新武闘派「718ケイマンGT4 RS」を雨の富士スピードウェイでテスト

911GT3に匹敵する最高出力500PSの4.0リッター水平対向6気筒ユニットを搭載する718の武闘派モデル、ケイマンGT4 RSを本籍地たるサーキットで試す。あいにくの雨模様となったが、その実力は如何ほどか?

PORSCHE 718 Cayman GT4 RS

500PSの軽量ミッドシップ

この日の富士スピードウェイは、霧がかかった富士ウェザーというべきコンディション。雨の量は少なく、コース上に大きな川はなさそうだが、気温が低いウエットコンディションなので、タイヤのウォームアップが重要だ。
この日の富士スピードウェイは、霧がかかった富士ウェザーというべきコンディション。雨の量は少なく、コース上に大きな川はなさそうだが、気温が低いウエットコンディションなので、タイヤのウォームアップが重要だ。

ポルシェファンだけでなくクルマ好きなら誰もが乗ってみたいと思うのが718ケイマンGT4 RSではなかろうか? 私の「乗ってみたいクルマリスト」でも上位に位置する、ポルシェのモータースポーツのイメージに直結する武闘派モデルである。

ケイマンGT4のPDKモデルより35kg軽量な、その車重は1410kg。最高出力500PSの4.0リッター水平対向6気筒を搭載して、パワーウエイトレシオは2.83kg/PSを誇る。車重はスーパーGT300クラスの決勝レース時に近い。それを500PSで走らせるのだから、その速さはイメージできる。このGT4 RSには、レーシングカーそのものというべき空力パーツが多数採用される。まずレーシングカーのようなフロントフェンダーだ。上部にルーバーが取り付けられ、タイヤハウス後部がえぐられた形状は、これによってタイヤハウス内の空気を外へ吸い出して高いダウンフォースを稼ぎだす効果がある。

フロントスポイラー&バンパーも、エンジンの冷却とダウンフォースを良く考えた効率的な形状で、特にバンパーサイド部の空力パーツによって、フロントタイヤの乱気流を低減させ、ダウンフォースと同時にドラッグ軽減も狙っていると想像できる。高い位置にマウントされたリヤウイングは、レースでも流行りのスワンネック式だ。大型リヤディフューザーとの組み合わせで、しっかりダウンフォースが稼ぎ出されている印象だ。このエアロパーツと車高でケイマンGT4に対して25%ダウンフォースが増えたという。そんな軽量でハイダウンフォース、500PSのミッドシップの乗り味を富士スピードウェイでチェックしてみよう。

あまりにも過酷な富士ウェザーでも

まずコクピットに座ってドライビングポジションを合わせる。ヴァイザッハロゴの入ったカーボンバケットシートは、シートの高さを電動調整できるのが嬉しい。ポルシェのドライビングポジションは比較的上体の起きたポジションなので、座面を高めに設定するとステアリングやペダル類、ミラーなどのポジションがピタッとくる。シートの前後方向の位置を合わせている時に気づいたが、左足でブレーキペダルを操作した時にコントロールしやすい形状になっている。

この日の富士スピードウェイは、霧がかかった富士ウェザーというべきコンディションだった。雨の量は少なく、コース上に大きな川はなさそうだが、気温が低いウエットコンディションなので、タイヤのウォームアップが重要だ。トラクションコントロールを含めてPSMはオンにする。PDKスポーツもオンにして、シフトはDレンジのクルマ任せでドライバーはステアリングとアクセル、ブレーキに集中する作戦だ。

ピットロード出口から加速してコースインする。1コーナーに向けてブレーキングを開始するとグリップが低い。1コーナーを曲がったところで、作戦変更してシフトをマニュアルモードにした。高回転を維持し、ショートシフトで過剰なパワーを出さないようにしたり、ウエットコンディションのレーステクニックをフルに使って走る方がよさそうだ。

周回数をこなしていくとタイヤ空気圧が少しずつ上がり、それに合わせてグリップ感も向上していく。ラップタイムも秒単位で上がっていく。コースインから5周したところで、1ラップだけ限界までプッシュしてみる。貴重なクルマなので、ブレーキングは無理をしない。今回の試乗車はヴァイザッハパッケージ、20インチ鍛造マグネシウムホイール、PCCBセラミックコンポジットブレーキ、ロールケージなどなど合計843万円のオプションが装着されているのだ。

これはナンバープレート付きのレーシングカーだ。

パナソニックゲートから優しくブレーキングを開始する。この時の最高速はメーターで261km/hだ。このブレーキングポイントからでもABSが介入し、路面は滑りやすい状況だとわかる。だが、ステアリングを真っ直ぐに維持しておけば、クルマが左右に振られ、挙動が乱れるようなことはない。1回のブレーキングでこのGT4 RSを信頼できた。

コーナーはすべてウエットラインを走らせる。電子デバイスは、スライドアングルを大きくしないスムーズな走らせ方だと過剰に介入してくるようなことはない。電子デバイスはオンのまま走らせる。滑りやすく、とても難しいコンディションで、同じ時間に走行しているマシンが次々にスピン、コースアウトしていく。

気がつくと私も無意識のうちに左足ブレーキを使って走行していた。私は一般道もレースも右足ブレーキで走るが、車両のバランスが悪い時や難しいコンディションの中で、年に数回左足でブレーキをコントロールすることがある。なかなか緊張感のある走行になってしまったが、軽量かつ高いダウンフォースによって、挙動が乱れてもコース内でコントロールできる感覚があり、やはりレーシングカーのような特性になっていると感じた。レースで使用するレインタイヤを装着したら無敵の速さだろう。

期待どおりの出来

コーナーはすべてウエットラインを走らせる。電子デバイスは、スライドアングルを大きくしないスムーズな走らせ方だと過剰に介入してくるようなことはない。電子デバイスはオンのまま走らせる。
コーナーはすべてウエットラインを走らせる。電子デバイスは、スライドアングルを大きくしないスムーズな走らせ方だと過剰に介入してくるようなことはない。電子デバイスはオンのまま走らせる。

このコンディションの中でも最高に気持ち良いのが500PSを発生するエンジンだ。扱いやすく、サウンドもパワー感も本当に気持ちいい。6000rpmを超えたところからパワーが一気に立ち上がってくるのが感じられる。最高回転数9000rpmの高回転型エンジンは、高回転域だけでなくショートシフトで中間の回転域を使い分けて走れる。8700rpmでシフトしてみたが、実際には8500rpmぐらいでシフトするのがパワー感があって好きだった。そして回転を上げると、クォーターガラスの位置にあるエアインテークのエンジン吸気音が車内に鳴り響く。だが、スピーカーから聞こえる人工的に作られたサウンドではなく、純粋なレーシングエンジンのサウンドは心地よい。アクセル操作に対してのレスポンス、回転数にリンクして感じるエンジンパワー、これはナンバープレート付きのレーシングカーだ。

ギヤのつながりも良く、ウエットコンディションでもギヤが合わずに走りにくいところがなかった。シフトパドルを使ったマニュアル操作を楽しむ。このシフトスピードの速さとこの気持ち良いサウンドは、単にトランスミッションの性能という次元を超えた、このエンジンでなければ実現しない神の領域だ。

レースの予選の感覚で走ったので、アタック1ラップのみのプッシュで終わらせた。近いうちにドライコンディションで、さらに楽しくて気持ちいい世界を体験してみたい。軽量なボディに911GT3に匹敵するエンジン。パワーだけでなく、サウンドや軽快な乗り味。このクルマでしか味わえないスペシャルな体験だった。

REPORT/荒 聖治(Seiji ARA)
PHOTO/平野 陽(Akio HIRANO)
MAGAZINE/GENROQ 2023年4月号

SPECIFICATIONS

ポルシェ718ケイマンGT4 RS

ボディサイズ:全長4456 全幅1801 全高1267mm
ホイールベース:2484mm
車両重量(DIN):1415kg
エンジン:水平対向6気筒DOHC
総排気量:3996cc
最高出力:368kW(500PS)/8400rpm
最大トルク:450Nm(45.9kgm)/6750rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後マクファーソンストラット
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):前245/35ZR20(8.5J) 後295/30ZR20(11J)
最高速度:315km/h
0-100km/h加速:3.4秒
CO2排出量:281g/km
車両本体価格:1878万円

【問い合わせ】
ポルシェ カスタマーケアセンター
TEL 0120-846-911
https://www.porsche.com/japan/

ポルシェと他車の差を感じるのがブレーキだ。ブレーキペダルを踏んだ時のしっかり感と、短い距離で止まる制動感。これがポルシェに乗っていると実感させてくれる。

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