最高速度482km/hを誇るスーパーカー、ケーニグセグ ジェスコ

ケーニグセグ ジェスコを知る10のキーワード。1600psのスーパースポーツを解き明かす!

ケーニグセグ ジェスコの正面ビュー
ケーニグセグ ジェスコの正面ビュー。
ケーニグセグ ジェスコは、スウェーデンを拠点とする孤高のスーパーカーメーカーが生んだ125台限定のモデル。1994年に誕生して以来、数々のギネス記録や驚愕のラップレコードを打ち立ててきた“レコードブレーカー”が、創業25周年という記念すべき節目に発表したマイルストーン的マシンである。

ケーニグセグ ジェスコとは

ケーニグセグ ジェスコのフロントビュー
スウェーデンを拠点にする孤高のスーパーカーメーカー、ケーニグセグ。創業25周年を記念した2019年3月のジュネーヴショーで発表したのがジェスコだった。

ケーニグセグ ジェスコ(Koenigsegg Jesko)は、2019年3月のジュネーヴショーで発表された125台限定の2シーター・ミッドシップマシン。名前の“Jesko”は、ケーニグセグ社の代表であるクリスチャン・フォン・ケーニグセグの尊父、ジェスコ・フォン・ケーニグセグに由来する。創業25周年を迎えた同社の経営を長きにわたってサポートしてくれた父親への感謝の気持ちがネーミングには込められている。ちなみに生産分の125台は発表時点で「完売」。デリバリー開始は2022年春を予定している。

ケーニグセグ ジェスコ、最高速度は482km/h!

ケーニグセグ ジェスコのリヤビュー。ドア開
ケーニグセグ ジェスコは5.0リッターV8ツインターボをミッドシップする。エタノール混合のE85燃料を使用した場合、その最高出力は1600hpに達する。

搭載するパワーユニットは自社製の5.0リッターV型8気筒DOHCツインターボエンジン。通常のハイオクガソリンを使用した場合の最高出力は1280hpで、E85バイオエタノール燃料なら最高出力を1600hpまで強化することができる。現時点(2021年8月)で公表しているのはあくまで暫定のスペックだが、空力性能に特化した仕様「ジェスコ アブソリュート」について、日本国内の販売を手掛けるケーニグセグ・ビンゴスポーツは「480km/hを計上する」と謳っている。

日本国内では前澤友作氏がオーダー済み

ジェスコ・フォン・ケーニグセグ
ケーニグセグ創始者、クリスチャン・フォン・ケーニグセグの父、ジェスコ・フォン・ケーニグセグ。自らの名をつけたクルマを2019年のジュネーヴショーで息子が発表する姿を、妻のブリタとともに見守ったという。

限られたオーナーのみが手にすることのできるケーニグセグだが、衣料品通販サイト運営会社ZOZOの創業者、前澤友作氏もすでにジェスコをオーダー済み。前澤氏は、ブガッティやロールス・ロイスといった錚々たるブランドの特別モデルを収集する名うてのカーコレクターとしても知られる。

ケーニグセグ ジェスコをオーダーした前澤友作氏。

自身のYouTubeチャンネルでは、ジェスコの特別内覧の様子を公開。ジェスコの正式な車両価格は公表されていないが(この類のスーパーカーは開発段階で価格が変動したり仕様によってばらつきがあるため、あくまで参考価格であることが多い)、そのプライスについて動画内では「3.8億円」と言及している。

ケーニグセグ ジェスコの2モデル【ジェスコ/アブソリュート】

ケーニグセグ ジェスコ アブソリュートのリヤビュー
写真は最高速度を重視した仕様のケーニグセグ ジェスコ アブソリュート。大型リヤウイングの替わりにスマートなフィンを装着している。

ケーニグセグ ジェスコには、ベースとなる「ジェスコ(Jesko)」と、最高速度性能を重視した「ジェスコ アブソリュート(Jesko Absolut)」が存在する。サーキットでの走りを強く意識して開発されたジェスコに対し、アブソリュートは主にエアロダイナミクス面の徹底的な見直しを図っている。

とくに高速域でのドラッグ(抵抗)をさらに低減させるべく、スムーズな曲面でまとめるとともに、通常のリヤスポイラーに代わってリヤカウル上に一対のフィンを装着。これはF15戦闘機に着想を得たエアロパーツだという。さらにリヤホイールにはカバーを装備するなど様々な施策を組み合わせた結果、Cd値0.278を実現。最高速度走行時にネックとなるダウンフォースについては、ベースのジェスコが最大1400kgを発生するのに対し、アブソリュートでは150kgまで絞りこんでいる。

ケーニグセグ ジェスコのメカニズム

ケーニグセグ ジェスコの正面ビュー
写真は2021年7月15日に公開された量産前試作のケーニグセグ ジェスコ。CCRをオマージュしたオレンジパールカラーをまとっている。

25年にわたり革新的なメガカー(1メガワット=英馬力1341.02hpであることから、1メガワット超の性能をもつエンジンを搭載するモデルをこう呼ぶ)を送りだしてきたケーニグセグ。ジェスコもその例に漏れず、先進テクノロジーを積極的に採用している。

レーシングモデルにも通じるエアロデバイス

ケーニグセグ ジェスコ アブソリュートのサイドビュー
写真はケーニグセグ ジェスコ アブソリュート。ケーニグセグらしい塊感をキープしつつ、細部ではエアロダイナミクスを徹底的に追求している。

ジェスコのスタイリングには、水中生物のシルエットにヒントを得たデザインコンセプトを採用している。この考え方は前作のアゲーラから継承するもので、優れたエアロダイナミクスに繋がっている。大きく湾曲したフロントウインドウ、そしてウェッジジェイプの小さなサイドウインドウとで構成するラップアラウンド・ウインドウスクリーンも、いかにもケーニグセグらしい。

大型のリヤウイングをはじめ、ボディの随所には最新のレーシングモデルに通じる様々なエアロデバイスを採用。また、ドアやエンジンフードなど、あらゆるパネルはスマートフォンや専用のリモコンを使って遠隔操作することが可能となっている。

エンジンは5.0リッターV型8気筒DOHCツインターボ

ケーニグセグ ジェスコのGメーター
ケーニグセグ ジェスコはレスポンスに優れたV8ツインターボエンジンを搭載する。ダッシュボード上には、そのユニットが生み出す強烈なGを視覚的にとらえることのできるアナログ式Gメーターを用意。

搭載するエンジンは、ケーニグセグ製の5.0リッターV型8気筒DOHCツインターボ。通常のハイオクガソリンの場合は最高出力1280hp、E85バイオエタノール燃料の場合は最高出力1600hpに達する性能を誇る。エタノール85%、ガソリン15%で構成するE85は代替燃料のいち選択肢として注目され、高オクタン価でノッキングが起こりにくいという特性ももつ。

また、ケーニグセグは20個のカーボン製エアタンクを装備し、エア駆動する小型電動コンプレッサーを用いることでターボラグの解消、及び大幅なブーストアップも実現している。ちなみに9.0でのレヴリミットは8500rpm。

独自開発したトランスミッション「LST」

ケーニグセグ ジェスコのセレクターレバー
ケーニグセグ ジェスコのトランスミッションは、独自開発のマルチクラッチ式「LST」。電光石火の変速を実現する自慢のトランスミッションだ。

ジェスコには、LST(ライト スピード トランスミッション)と呼ぶ独自開発の9速マルチクラッチ・トランスミッションを組み合わせる。湿式多板クラッチを7個組み込んだLSTはコンパクトな設計と、加減速時のシームレスな繋がりが特徴。隣り合ったギヤ以外でも、狙ったギヤにそのままシフトできるというのもメリットだ。また、従来搭載していたCIMA製7速シーケンシャルトランスミッションに比べて全長は半分以下に抑え込んでおり、単体重量もわずか90kgと非常に軽い。

後輪操舵機構も採用した最新シャシー

ケーニグセグ ジェスコ およびジェスコ アブソリュートのフロントビュー
ケーニグセグ ジェスコ(写真右)及びジェスコ アブソリュート。“第3のダンパー”Triplexは、ジェスコは前後両方のサスペンションに、ジェスコ アブソリュートはリヤのみに装備する。

ジェスコは「究極のロードフレンドリーなトラックカー」として開発された。カーボンファイバー製モノコックタブは、従来よりも長さを40mm、深さを22m拡大することで余裕のあるスペースを構築。高いねじり剛性をもつボディは、安全性能はもとより、シャシー性能を十分に引き上げるためにも重要となる。

また、ジェスコは2010年のアゲーラがリヤに採用した“第3のダンパー”、Triplex(トリプル エックス)をフロントとリヤ両方のサスペンションに搭載。アンチスクワット(急激な加速時に車体のリヤが下がる傾向を抑える)性能を高めるとともに、高いドラッグのかかる高速走行時にはフロント部分を水平に保つことで常に最適な車高をキープする。さらに、高速域でのレスポンスと低速域の取り回し性を考慮して、アクティブリヤステアリングシステム(後輪操舵)も採用している。

スーパースポーツ専用サーキット向けタイヤも設定

ケーニグセグ ジェスコのサイドビュー
ケーニグセグ ジェスコの標準装着タイヤはミシュラン・パイロット スポーツ カップ 2。オプションでドライ専用のパイロット スポーツ カップ 2 Rを用意する。

ジェスコが標準装備するタイヤは、ミシュラン・パイロット スポーツ カップ 2。また、ドライ専用としてパイロット スポーツ カップ 2 Rもオプションで選択できる。後者は、世界の名だたるスポーツカーメーカーと共同開発された“カップ2”のドライグリップ性能をさらに向上させたスーパースポーツ専用サーキット向けタイヤだ。

ホイールは鍛造アルミ製、もしくはカーボンファイバー製の2種類をラインナップ。とくに軽さを追求したカーボンモデルの単体重量は、フロントの20×9.5インチで5.9kg、リヤの21×12インチで7.4kgを実現し、ばね下重量の削減に大きく寄与している。

ケーニグセグ ジェスコのインテリアとエクステリア

ケーニグセグ ジェスコのサイドビュー
ケーニグセグ ジェスコはアゲーラよりもキャビン空間に余裕を持たせている。

ジェスコはアゲーラに比べて車高を30mm、全長を40mmそれぞれ拡大。乗降性を高めるとともに、キャビンにも余裕のある空間を作り出している。

ケーニグセグ ジェスコの俯瞰目ビュー
ジェスコはケーニグセグ特有のウインドウグラフィックをもつ。

ジェスコのエクステリアデザインには“シュリンクラップ”と呼ぶアプローチを採り入れたという。デザインに無駄な隙間を与えないことで、一体感と凝縮感のある独特のムードを実現している。

ケーニグセグ ジェスコの正面ビュー
ケーニグセグ ジェスコのドアやボンネットはリモコンやスマートフォンで遠隔操作できる。

レゲーラで初採用したボディオープニングシステム“Autoskin”をジェスコも搭載。小型の油圧装置とリモコンにより、ドアやボンネットを離れた場所から開閉することができる。また、障害物を検知した際にはドアが自動で開くのを防止するセンサーも搭載している。

ケーニグセグ ジェスコのフェイシア
ケーニグセグ ジェスコのキャビン。

ジェスコのスポーティなバケットシートは、カーボンファイバー製のシェルを採用。ポジション調整やヒーターのオン/オフはタッチスクリーン上で行う。

ケーニグセグ ジェスコのコクピット
ケーニグセグ ジェスコは、センターのタッチスクリーンとステアリングホイール上の触覚フィードバック式タッチスイッチで様々な操作を行う。

操作系は、“SmartCenter”と呼ぶタッチスクリーン、及び触覚フィードバック搭載タッチスイッチを採用したステアリングホイール“SmartWheel”が司る。

ケーニグセグ ジェスコのコクピット
ケーニグセグ ジェスコは5インチの液晶を用いたデジタルメーターを採用する。

ステアリングホイールの奥には、メータークラスター機能をコンパクトなスクリーンに集約したSmartClusterを設置。5インチの高精細画面に、ドライバーが必要とするすべての情報を機能的なレイアウトで表示する。

ケーニグセグ ジェスコの価格とスペック

ケーニグセグ ジェスコ およびジェスコ アブソリュートのリヤビュー
ケーニグセグ ジェスコ及びジェスコ アブソリュートは、2022年春のデリバリー開始を予定している。

ケーニグセグは基本的に1台ずつビスポーク(オーダーメイド)で注文を受け付けるスペシャルモデルとなるため、車両価格はあくまで“参考”となる。先述の通り、すでにジェスコをオーダーした前澤友作氏は自身のYouTube内で「3.8億円」と言及。英国の自動車メディア『evo』では「およそ230万ポンド(約3億4800万円)からとなる模様」と報じている。

ボディサイズ全長4760mm×全幅2030mm×全高1210mm
※アブソリュート:全長4845mm×全幅2030mm×全高1210mm
ホイールベース2700mm
乾燥重量1320kg
※アブソリュート:1290kg
車両重量1420kg
※アブソリュート:1390kg
エンジンV型8気筒DOHCツインターボ
総排気量5.0リッター
ボア×ストローク92mm×95.25mm
圧縮比9.0
最高出力955kW(1280hp)/7800rpm
※E85:1195kW(1600hp)
最大トルク1500Nm/5100rpm
トランスミッション9速LST
サスペンション前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅)前265/35-20(9.5J) 後325/30-21(12J)
最高速度482km/h
ケーニグセグ ジェスコのスペック表。

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三代やよい

東京生まれ。青山学院女子短期大学英米文学科卒業後、自動車メーカー広報部勤務。編集プロダクション…