バイク版BMW Mの見逃せない魅力とは?

「二輪でも究極のドライビングプレジャーを」“M”の称号が与えられたバイク「BMW M1000RR」

2021年モデルのM1000RR。ベースモデルのS1000RR(207PS/13500rpm)からプラス5PSの212PS/14500rpmへと出力を向上。最高回転数も14600rpmから15100rpmへとアップした。車両重量は200kgから192kgとされ8kgもの軽量化を果たしている。
2021年モデルのM1000RR。ベースモデルのS1000RR(207PS/13500rpm)からプラス5PSの212PS/14500rpmへと出力を向上。最高回転数も14600rpmから15100rpmへとアップした。車両重量は200kgから192kgとされ8kgもの軽量化を果たしている。
「究極のドライビングプレジャー」を提供するBMW M。それはクルマ好きにとって4輪を意味していたが、2021年からは2輪も含まれているのをご存知だろうか? ゲンロクWebの二輪担当、元一彰氏が解説する。

ベースとは異次元のパフォーマンスを持つMモデル

M3(右)とM4と並ぶ「M1000RR」。初めて“M”の称号を冠するBMWバイクだ。

BMW M社は、BMWモータースポーツ社として1972年に設立された。その目的はモータースポーツ用のエンジンやパーツ、高性能コンプリートカーの開発、製造、販売である。ツーリングカーレースのホモロゲーションモデルである3.0CSL(E9型)の開発を手始めに、M1(E26型=BMW初のミッドシップスポーツカー)、M5(E28型=レーシングエンジンが搭載されたセダン)、M3(E30型=グループA規定のレースで大活躍)など多くのモデルを作り上げた。

1993年にBMW M社となってしばらくすると、Mシリーズの市販車については開発のみに専念してラインナップを拡充。2023年5月現在では2ドアクーペからSUVまで様々な車種に高性能でスポーティな「Mモデル」を戴いている。

BMW M社の哲学は、創業以来変わらず「究極のドライビングプレジャーのために、革新的なテクノロジーを開発し続ける」こと。その実現のためモータースポーツで培った技術が市販のMモデルに惜しみなく注がれた。圧倒的パワーの高回転エンジンとそのパワーを受け止めるシャシーやサスペンション、ブレーキ、空力パーツなどを進化させてきた。その結果として、Mモデルはベースモデルとは次元の異なるパフォーマンスを持つに至る。青、紺、赤のストライプと白文字の「M」で構成されるロゴは、クルマ好きから尊敬と憧れをもって迎えられている。

日本メーカーのスーパースポーツを凌駕する性能

M1000RRは、ウインカー内蔵のバックミラーとテールランプユニットなどを取り外すことで簡単にレース仕様へと変身する。
M1000RRは、ウインカー内蔵のバックミラーとテールランプユニットなどを取り外すことで簡単にレース仕様へと変身する。

このように4輪のモータースポーツでは確固たる地位を確立していたBMWだが、2輪ではロードレースから長らく離れていた。BMWが日本やイタリアのメーカーのように、市販車をベースとするロードレースに参戦可能なホモロゲーションモデル、排気量1000ccの「S1000RR」を発売したのは2009年のこと。当時BMWは「快適な長距離ツアラー」のバイクメーカーとして認識されていたため、その発表に世界中のライダーが驚いた。そのS1000RRが190PSのパワーを持つエンジンにトラクションコントロールや高性能ABSなどの先進電子制御システムを備え、日本メーカーのスーパースポーツを凌駕する性能を備えていたことも、その驚きを倍増させた。

初代S1000Rの発売から約10年を経た2020年9月。様々な改良とモデルチェンジを経て、S1000RRは207PSを発揮するエンジンを搭載し車両重量が200kgにまで軽量化されるまでに進化していた。パワーウェイトレシオにして約0.97kg/PSという化け物マシンとなったこのS1000Rをベースに、サーキットで最高のパフォーマンスを発揮するためのレーシングテクノロジーを注入。BMWバイクで初めて“M”の称号を冠する「M1000RR」が2021年モデルとして発表されたのだ。

4輪の“M”の手法そのままに、まずはエンジンを研ぎ上げる。1個あたり12g軽い2リングの鍛造ピストンと、長くなっても85g軽いチタン製コネクティングロッドを採用。燃焼室の形状も変更され、カムシャフトやロッカーアーム、チタン製バルブ、インテークポートなど、徹底的に手を入れられた。結果として圧縮比が13.3から13.5に上昇し、パワーが212PSへと5PSアップ。最高回転数も500rpm上がり15100rpmとなった。エキゾーストシステムはアクラポビッチ製のフルチタニウムとされ、パワーアップに貢献しながら3.6kgの軽量化を果たしている。

パワーを受け止めるシャシーはスイングアームの長さを変更するなど、サーキット向けにジオメトリーを変更。その上でスイングアームピボットの調整幅を広げるなどセッティングの幅も増した。フロントフォークやリヤショックユニットは状況に応じて減衰力が自動調整されるセミアクティブではなく、サーキットによってライダー好みに調整できる機械式を採用。超軽量なカーボン製ホイールとともに、レーシングバイクそのものの軽快な足周りとなった。ブレーキキャリパーももちろん専用品。ニッシンとの共同開発による、軽量かつ高性能でコントロール性にも優れたMブレーキキャリパーを装備する。

ベースモデルの進化とともに2輪Mモデルも進化

これら高性能化された言わば「中身」をS1000RRと同じくバイワイヤのスロットルで電子制御。「Rain」や「Race」など7つのライディングモードを選べ、トラクションコントロールなどの効き具合も調整可能だ。発進以外はクラッチを握らずにシフトアップ&ダウンが可能なギアシフト・アシスタントを装備。またレースに参戦する際に役立つローンチコントロールやピットレーン・リミッター、GPSデータロガーなども搭載する。

BMWバイクとして初めてウイングレットを装備。BMWの風洞施設で徹底的にテストされたこのウイングは、300km/h走行時にフロント13.4kg、リヤ2.9kg、前後合計16.3kgのダウンフォースを発生させながら最高速度は犠牲にしない。ウィリーを防止しながらトラクションコントロールの介入も抑え、加速性能も向上させた。コーナリング中の安定感も増したという。

レーシングバイクそのものの性能を持ちながら、公道仕様だからアダプティブクルーズコントロールやUSB充電ソケット、グリップヒーター、ETC2.0といったユーティリティも充実しているから面白い。上級グレードのMコンペティション・パッケージでは前後フェンダー、サイドフェアリングの上部など外装パーツがカーボン製とされた上、アルミ削り出しのレバーやステップ、エンジンプロテクターに加え220g軽い銀色のスイングアーム、DLCコーティングされた高耐久チェーンなど更に上質なパーツが装着される。

ベースモデルのS1000RRの価格が231万3000円〜だったのに対し、M1000RRは378万3000円、M1000RR Mコンペティションパッケージが428万円というプライス。だが、ベースモデル+約150万〜200万円で“M”モデルが手に入るなら、かなりのバーゲンプライスだったと言える。

2023年1月、S1000RRのモデルチェンジと兄弟車のネイキッドモデルS1000Rの“M”モデル「M1000R」を同時に発表。3月には2代目となるM1000RRが発表された。4輪のMシリーズ同様に、ベースモデルの進化とともにMモデルも進化していくのかもしれない。

2007年、ドゥカティは初タイトルを獲得。デスモセディチRRはタイトル記念モデルというわけではないが、この世界初のMotoGPレプリカマシンにドゥカティファンは驚喜した。

ドゥカティによる世界初のMotoGPレプリカ「デスモセディチRR」誕生の意外な背景

スポーツカーメーカーとスポーツバイクメーカーは近いようで遠い存在だ。しかし、フェラーリとドゥカティは同じイタリア製ということで、非常に近い関係を持っていたという。シンパシーはどこから生まれたのか? そして、ドゥカティが作ったレプリカモデルとフェラーリのスペチアーレの意外な関係も考察する。

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元 一彰