ベントレーの最新ショーファードリブンカー「ベンテイガEWB」に試乗

ベントレーの新たなるフラグシップ「ベンテイガ EWB」に試乗して改めて実感する「走るファーストクラス」

「ウェルネス」と言う言葉がコンセプトに多く書かれていたベンテイガEWB。物理的にも精神的にもリヤの居住空間には余裕があり、心地がいい。
「ウェルネス」と言う言葉がコンセプトに多く書かれていたベンテイガEWB。物理的にも精神的にもリヤの居住空間には余裕があり、心地がいい。
ラグジュアリーSUVのパイオニアであるベンテイガに、ロングホイールベースが加わった。180mmの延長分は、すべて後席のスペース拡大に充てられており、クラス最上級の快適さを実現しているという。堂々たるその姿は、新しいフラッグシップの威厳に満ちている。

Bentley Bentayga EWB

ドライバーズシートではなくリヤシートへ

低速時には逆位相、高速時には同位相で動くリヤタイヤの恩恵で、直進安定性、コーナーでの追従性はスタンダードを上回ると思うほどだ。

スポーツカーでSWB(ショートホイールベース)は、軽やかな運動性能を予感させる売りとなるが、かたやラグジュアリーカーの世界では、真逆を意味するEWB(エクステンデット・ホイールベース)が、豊かさや贅沢さを象徴するキラーワードとなる。

かつてベントレーにもアルナージやミュルザンヌといったフラッグシップサルーンにEWBが用意されていたが、昨年新たに加わったのが、ベンテイガV8をベースにホイールベースを180mm延長したベンテイガEWBである。以前本誌でもカナダ・バンクーバーで行われた国際試乗会の模様をお届けしたが、あれから約半年、ついに日本に上陸を果たし、公道で乗ることができた。

通常、自動車のインプレッションはドライバーズ・シートで行うものだが、このベンテイガEWBに限ってはリヤシートから行うのが流儀というものだろう。まず「おっ」と思ったのは、記憶にあるベンテイガのリヤシートよりも乗り込みやすいと感じたことだ。それもEWB化によってリヤドアが大きく、開口部も広くなったことの恩恵と言える。ベンテイガEWBの発表時に、そのコンセプトとして「ウェルネス」と言う言葉が多く書かれていたが、物理的にも精神的にもリヤの居住空間には余裕があり、心地がいい。

もちろんフライングスパーやミュルザンヌのようなフルサイズ・サルーンならではのプレステージ性は否定しないが、ハイルーフの2ボックス・スタイルゆえのヘッドクリアランスの高さや後方空間の奥行きが、リヤシートに180mmという車体の延長分以上のゆとりをもたらしてくれるということなのだろう。

ウェルビーイングな室内

取材車にはベンテイガEWBのハイライトのひとつでもある、オプションのエアライン・スペシフィケーションが装備されていたが、これが相変わらず絶品だった。

キルティングの施されたレザーシートは、通常時は他のグレードと特に変わりはないのだが、センターに備えられた取り外し可能なタッチスクリーンリモート、もしくは左ドアのスイッチでリラックスモードをセレクトすると、助手席が前方に最大限に移動しフットレストが出現するとともに、リヤシートが40度までリクライニングする。さすがにフルフラットにはならないものの、その角度が絶妙で、足を伸ばしてリラックスした姿勢をとることができるのだ。

さらに座っている人の温度と湿度を測定して、最適な温度に自動で調節するシートオートクライメート、身体に接する部分のシート形状を少しずつ変化させることで血行や疲労を改善するポスチュラルアジャスト、様々なモードを備えるマッサージ機能も相まって、長時間の移動も苦にならなかった。

しかも試乗したベンテイガEWBは、22ウェイまで調整できるフロントシートコンフォートや、ヘッドアップディスプレイ、ナイトビジョン、ACCといったドライブアシスト機能を完備したツーリングスペシフィケーションなどを標準で装備する「アズール」であるうえに、20個のスピーカーと1720Wのアンプを備えた高級プレミアムオーディオ「Naim for Bentley」を標準装備する「ファーストエディション」だったため、リヤシートのみならず、フロントシートもベントレーの提唱する「ウェルビーイング」にあふれた空間となっていた。

圧倒的ラグジュアリー

しかしベンテイガEWBがリヤシート主体のショーファー・ドリブンカーだと言い切ってしまうのは正しくない。フロントシートに移動し、走り出してみて思うのは、その大きさも重さも意識しないことだ。特に顕著なのは道路上でUターンをする場合。全長5305mm、ホイールベース3175mmというスペックからは一発でUターンできそうもない場面でも、軽々と向きを変えることができる。その秘訣はベンテイガEWBに標準装備されているエレクトリックオールホイールステアリングなのだが、その回転半径は通常のベンテイガの6.2mに対し、5.9mと逆に小さくなっているのだ。

また低速時には逆位相、高速時には同位相で動くリヤタイヤの恩恵で、直進安定性、コーナーでの追従性はスタンダードを上回ると思うほど。その点においてもドライバーズカーとしての本懐は失われていない。

カナダで乗った時に「大きさ的に日本の路上では持て余すかも」と抱いた心配は杞憂に終わった。日本においてもベンテイガEWBは、極上の移動空間を求めるすべての人々にベストな選択だと断言できる。そしてオーナーになる幸せな方には、少々値は張るもののエアライン・スペシフィケーションをセレクトすることを強くお薦めしておきたい。

REPORT/藤原よしお(Yoshio FUJIWARA)
PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)
MAGAZINE/GENROQ 2023年6月号

SPECIFICATIONS

ベントレー・ベンテイガEWB

ボディサイズ:全長5305 全幅1995 全高1739mm
ホイールベース:3175mm
車両重量:2514kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3996cc
最高出力:404kW(550PS)/5750-6000rpm
最大トルク:770Nm(78.5kgm)/2000-4500rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後285/45ZR22
最高速度:290km/h
0-100km/h加速:4.6秒
車両本体価格:2802万8000円

【問い合わせ】
ベントレーコール
TEL 0120-97-7797
https://www.bentleymotors.jp/

リヤドアは180mm長くなっているが、巧みなデザインにより間伸び感はない。

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藤原よしお 近影

藤原よしお

クルマに関しては、ヒストリックカー、海外プレミアム・ブランド、そしてモータースポーツ(特に戦後から1…